【読書感想】「ホルモー六景」 万城目学
読了日:2012/8/22
前作「鴨川ホルモー」の続編。
いろんな人たちのあれこれが描かれた短編集。
しっかり楽しむために前作も時々読み返しながら読んだ。
やっぱり万城目さん、大好き。
すごく面白かった。
なにが素敵って、前作「鴨川ホルモー」と、今回の短編6つが、全部ちゃんと繋がってること。
その繋がり具合がいい。
短編に散りばめられた伏線も、別の短編で回収されてたり、読んでて「おっ!」と嬉しく思うポイントがたくさんあった。
個人的には「もっちゃん」、「丸の内サミット」、「長持ちの恋」がお気に入り。
「もっちゃん」は結構感動した。
余韻がすごくいい。全体の空気感がワタシ的に純文学。
「丸の内サミット」も良かった。
万城目作品の舞台はだいたい西日本なんですが、これはタイトル通り丸の内が舞台。
「関東にも同じようなサークルがあったのか!」と、フィクションだけど嬉しくなった。
「長持ちの恋」は、立命館大白虎隊の女子の話。
これ、舞台(バイト先)は「鹿男あをによし」とも繋がっている気がする。
ちょっと切ない愉快な恋のお話。
「鴨川ホルモー」は映画になってるけど、私はこれ、ドラマでもやってほしい。
そして、是非「ホルモー六景」もドラマに盛り込んでほしい。
ちょっと自分のなかで盛り上がっちゃったので、ワタクシ的ホルモーキャストを考えてみた。
阿倍・・・山田孝之
映画でも彼が主役だったらしい。それっぽいしアリ。
高村・・・森山未来
途中からチョンマゲだけど(笑)、白くてひょろっとしてるイメージがよい。
楠木ふみ・・・多部未華子
万城目作品の変わった女の役となるとなんだか多部ちゃんがハマる気がする。メガネに大木凡人ヘアを見てみたい。
芦屋・・・背の高くてガタイのいい若手イケメン俳優
これっていうのがわからなかったけど、イケメンで自信家で器が小さく見えるヤツがよい。
相良京子・・・北川景子
美人で小悪魔っつうかズルい感じが似合う。
スガさん・・・雰囲気は佐々木蔵之介
とても大学生には見えないので実際佐々木蔵之介がでたら変なんだけど、ひょうひょうとした雰囲気は佐々木蔵之介。
べろべろばぁ店長・・・市村正規
ミステリアスなじいさんって感じで。
楽しい。
でも華がない。そもそも主役たちにあんまり華がない。全体的にもっさりした雰囲気。
ワタクシ的名文
明らかに過剰な自意識であったにもかかわらず、彰子はその心理を「自分の不器用さ」という妙にあたたかい言葉でカテゴライズした。守るべき「誇り」として擁護した。天衣無縫な振る舞いとともに、男どもを魅了する少女たちを視界の隅に捉えながら、彰子はどこまでも仏頂面のおっさんスタイルを貫き通した。
表現が秀逸!
そして尖り具合が大学生の頃の自分のよう(笑)
「物理や数学の世界では、誰も証明したことがない、そもそも実在するかどうかも定かでないことについて、研究している人がたくさんいる。まわりの人が、そんなこと不可能だ、はなから存在しないのだからやっても無駄だ、と口を揃えて言ってもね。そういう人たちがしようとしていることって、ひょっとしたら閻魔大王に会うのと同じことなのかもしれない。だって、他の人は誰もその存在を信じてないんだから。でも、なかには必ず、本当に見つけてしまう人がいる。あるはずのないところから、新しいものを見つけてしまう人が。たぶん、そういう人って、閻魔大王を頭ごなしに否定したりはしないと思う。きっと、そういう目に見えないものを、大切に考えているような気がする。」
楠木ふみのセリフ。彼女数学科なのね。
ともさん(夫)が「数学をやる人間はロマンチストだ」
といっていたことがあって、それと似たようなことを言っていたので「おっ!」と思った。
「強い?俺が?どこが?」
「阿倍は決して顔の造作もよくない。恋人もいない。金もない。頭もあまり良くない。どれも俺と同じないない尽くしなのに、いつも能天気にやっている。俺はそこに非常な敬意を感じる」
能天気ってステキ。
能天気はバカにされがちだけど、本当は凄いことなんだと私は思う。
賢くみえない賢さや、強さをみせない強さをもつ人間は、真実かっこよいと私は思っている。
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