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【読書感想】「死刑絶対肯定論 無期懲役囚の主張」 美達大和

読了日:2014/2/14

計画的に2件の殺人を犯し、自ら死刑を求めるも無期懲役に。
そこから刑務所生活20年以上(仮釈放を自ら放棄し現在も服役中)となる著者が、刑務所の実際と死刑の必要性について語っている本。

作者について

別に私は死刑が絶対必要だ考えてるわけではありません。っていうか死刑について真面目に考えたことなんかこれまでありません(笑)
ただただこの著者に対する興味です。
だって、気になるでしょ?!
2件の殺人を犯した現役の無期懲役囚が獄から本を出版してて、頭も良くて、しかも死刑肯定してるんですよ。
何者だ、こいつは?
ということでKindleでポチッとしてしまいました。

この人、相当の読書好きで、社会にいたころは月に100冊以上の書籍と、数十冊の雑誌などなどを読んでいたそうです。
刑務所のなかでももちろんたくさん読んでて、お勧め本を紹介するブログまであります。
で、頭も天才的みたいです。(と、どっかのサイトで書かれてました。)
ホントに天才なのかはわかりませんが、この本読むだけでも語彙力は半端ないということはわかります。

頭だけよくて社会性のないコミュ障なのかというとそういうわけでもないようで、社会にいたころは金融系の会社をやってたり、優秀な営業マンだったり、かなり羽振りよかったみたいです。
結婚も経験済み。
(まぁだからといって本当にコミュニケーション上手かはわかりませんが。)

刑務所の囚人たち

この人の書いたものを見てない時は、
「人殺して服役中のくせに、本をたくさん読んだり、本を出したり、なにこいつ?!殺された側の親族がみたらムカつくだろうに。」
と、嫌悪感もありました。
ところが、読み進めていくうちに、そういう嫌悪感はなくなっておりました。

なんでかというと、この人が語る刑務所の他の人たちが本当におぞましくて・・。
それと比べると、罪は償えないものの、自分のやったことのひどさに気付いて、生涯、獄の中で反省することを決めた著者が、まだまともにみえたからです。

死刑とか真剣に考えたことないけど、この人の言う通りなら死刑はなくしちゃダメだよねー、と私は思っちゃいました。
以下、刑務所のなかの人たちのことを語った描写です。

彼ら殺人犯には、罪の意識や悔恨の情は乏しく、尊い他者の生命を奪った重荷を背負った者、心に闇やどろどろしたものを抱えて生きている、という小説やドラマに出てくるようなことは全くありません。
どろどろどころか、カラッと乾燥した砂のようにサラサラし、風に流されるがままというのが相応しい気がします。
パラドキシカルですが、己の利得・エゴの為に他者の生命を奪ったことに対し、何ら痛痒も覚えず、時に被害者を恨み、未来にヴィジョンをもたず、怠惰に暮らす者達だからこそ、本人も自覚し得ない心の闇を抱いているのかもしれません。

しかし、自分が他者を殺めた事実については、事情が変わります。殺すことは悪である、だが、自分の犯行には理由があり、加えて被害者に非があると平然と言う者が半数以上です。
強盗に入った者は口を揃えて、その場に居合わせた被害者に運がなく、素直に金品を渡すことなく、大声で叫んだり、抵抗したり、命令口調で制止したことが悪いと非難します。これが平均的な弁解です。

殺人という行為に対しては人は心理的抵抗を持つ筈ですが、二回目の時は、初めての時に比べ、その抵抗が著しく低くなっていることが、自分でもよくわかりました。
また、ここにいる同囚達は、既に殺人を経験していることもあり、次にその時がきたらこうしよう、ああしようと、こうすれば発覚しないだろうと、まるでスポーツか何かのように明るい表情で話しています。
「反省がない」ということは、こういうことを含んでいるのです。人目を忍んでこっそり話すのではなく、明るい表情で話すということに、おぞましさを感じませんか?

一度殺人を犯し、無反省な者には、人を殺すという行為に抵抗はありません。彼らの中には、既に出所後の犯行計画を企図し仲間を募っている者、メディア等を利用して次のターゲットを物色しているものもいます。

「同じ人殺しが何いってんの?」という突っ込みはおいといて、本当に恐ろしくないです?
この中にいる人たち。

まぁこの人が入っている刑務所はLB級といって刑期の長い(要は罪の重い)人たちのところなので、も少し普通の刑務所なら反省している人もいるのかもしれません。
でも、ほとんどの人は反省なんてしてないし、反省していても周囲の感覚に流されて反省しなくなると著者は述べています。

確かに、一般社会でも、何かの物事に対して反省する人は反省するし、反省しない人は何やっても反省しないものね。
そのラインが殺人の上にあるか下にあるかの話なだけで殺人犯も一般人も、実はたいしてかわらないのかも。
殺人はおかしてないけど殺人犯と同じような(というと大げさだけど)その場しのぎの嘘とか自分だけにしか通用しない論理での言い訳する人は世の中にたくさんいますし。

伊坂幸太郎作品にたまに出てくる真性悪!みたいな人は残念ながらやっぱり本当にいるわけで、それが本当に怖いし悲しいなぁと思いました。

ホリエモンも刑務所にいるときに、「社交性もあって、気配りもできて、普通に社会でやっていけそうな人が、遊びにいくみたいな感覚で強姦をしてて捕まって、で勿論反省していないという人がいた」と言ってますしね。
なんだかね・・・。 暗澹たる気持ちになりましたわ。。

刑務所に入るということ

刑務所ってところは、衣食住が確保されていて、不自由はあるもののなれてしまえばそれなりに楽しくやれてしまう所なようです。
食べるものや寝るところに困って、また犯罪に手を染めるしかないシャバの世界と刑務所。
どっちがマシなんでしょう。

容疑者Xの献身を読んだときも思ったけど、自分だけの知的世界を持てる人にとっては刑務所はむしろ居心地いいのかもしれません。
この人の話を読んでるとなんだかそう思えます。

塀のなかに興味がある方、
この作者に興味のある方、
裁判員になった方、
などは読んでみてください。
なかなか刺激的。

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