【読書感想】「傍聞き」 長岡弘樹
読了日:2012/11/1
近所の本屋さんで「おすすめ!」と推薦されていて、本の帯には
「おすすめ文庫王国 2012年の雑誌増刊
国内ミステリー部門ダントツの第一位 この20年で最高の傑作!仕掛けと感動の珠玉短編を堪能せよ」
というメッセージ。
こんなに言われたら気になるな、と思って購入。
薄めの短編集。
それぞれのストーリー概要は以下のとおり。
・迷走
義父(予定)とともに救急隊員として働く主人公は、わけありの患者を乗せる。
義父と面識をもつこの患者とは?
そして義父がとる不可解な行動の意味は?
・傍聞き(かたえぎき)
思春期の娘をもつ女性刑事。
娘の育てかたや事件に悩む。反抗期の娘の行動の真意は?
・899
消防隊員の主人公は、近所のシングルマザーに片思い中。
ある日、彼女の住むアパートで火災が発生。
そこで不可解な出来事が。
・迷い箱
受刑者の更正施設で働く主人公は、一人の受刑者を気にかけている。彼の行動の真意は。
帯、煽りすぎじゃない?
と言うのが率直な感想。
いや、短編のなかできちんとドラマがあるし、それぞれで「なるほど」とは思う。
短編という短い中で、これだけしっかりした中身にするのは多分かなり難しいだろうし、そういう意味で、推理作家協会賞をとるのもうなずける。
でも。
「ミステリー」といわれると、どうしても殺人とか怨恨とか、密室とか、そういう物騒な話を想像してしまうけど、そういう要素はほぼない。
唯一「傍聞き」は主人公が刑事だからちょっとそれっぽいけど、どちらかというと家族小説テイスト。
裏表紙には「まったく予想のつかない展開と、人間ドラマが見事に融合した」とあるけど、予想ついて、予想通りだったし。
個人的な意見でいえば、内容は悪くない。
むしろ私はとても好きだ。
読後感いいし、あったかい気持ちになった。
でも、帯や裏表紙や本屋の宣伝文句にひかれて読んでしまうと、内容と宣伝文句の間に違和感を感じてしまう。
人間ドラマを全面にだしたほうがしっくりくるし、良さがわかりやすく伝わる気がした。
中身はいいのにもったいない。
本の内容そのものだけではなく、帯や表紙、裏表紙、などすべてを含めて書籍というのは構成されるんだな。
今回の宣伝文句で、改めてそれらの重要性に気付けた。
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