鈴蘭の祖母へ

今年、おばあちゃんが好きだった鈴蘭を植えました。

私は小さな鈴蘭の花を見るたびに、神戸の山奥、長い坂を登りきった先に建つ団地の庭と、そこに立つおばあちゃんの丸い背中を思い出します。

植えて間もなく芽をのぞかせた素掘り苗は、ちょうどおばあちゃんの命日のころ、花が見られる予定です。

鈴蘭て、株を密集させた方がよく育つそうですね。そういえば私が幼い頃、一株だけ貰ってきたおばあちゃんの鈴蘭は枯らしてしまいました。
複数を詰めて植えてやらなければ育たない鈴蘭の特性は、憎みきれないあの人のことも思い出させます。

誰にでも優しくて、読経をあげるお坊様まで涙声にしてしまうおばあちゃんのことだから、一人ではいられなかったあの人のことも思い出してあげてと言っているのでしょうか。

鈴蘭の別名は「君影草」
おばあちゃんがそう言うのなら、私はきっと両祖母を思い偲ぶでしょう。
この鈴蘭が咲くころに。

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