ウシガエルの白ワイン煮込み
私は毎年何度か友人を連れて近所の夜の田んぼへ繰り出してはザリガニを捕まえては調理するというプロジェクトを勝手にやっている。
不思議なことに毎度やるたびに「自分達もやってみたい」と次から次へと人が集まってくる。我ながら自分のことを変なことしてる変な奴だと思っているのだが、類は友を呼ぶというものだ。しかし皆自然への触れ合いや未知なる食への遭遇に飢えている、いわゆる"現代っ子"なのだなと感じる節がある。
私はもとより生き物が好きで、外来種が環境へ与える影響を知ってから保全活動に感化されるようになって、勝手に慈善活動を始めた(あと単純に食への探究心が強い)。友人らの動機はともかく、現在の環境の実態や食と命の尊さを知り、体感してもらうことで、今後生命への関わり方等を意識してもらえるようにとプロジェクトを続けている。
そして今日は今年に入って3度目のザリガニプロジェクトでの出来事。7月中頃の梅雨明けの夜、友人を連れてザリガニ捕りへと駆り出していた最中のこと。
「ぎゃーーーーーーーッッッデカイ!!!」
少し離れた場所から、静寂に等しい田んぼの中心にて叫ぶ声が聞こえた。街灯もない場所にスマホやら懐中電灯やらの光が一点に集まりだし、土臭さを運ぶヌルッと生温い風が私たちの襟元を通り過ぎ、あからさまに一帯は緊張に包まれた。とんでもなくデカイザリガニでも捕れたんじゃないだろうか、と身震いにも似た高揚感を覚えたがそこにいたのは……
⚠️カエルが出ます🐸🐸
大きなウシガエルだ。手始めにこいつのステータスを話そう。
アメリカ原産の大型のカエルで、食用として輸入された経歴があるがさほどカエル食は浸透せずにいつのまにか日本に帰化してしまった生き物。その並外れた巨大、食性、繁殖力、環境適応力の高さから日本在来の生態系は脅かされ、今は特定外来生物に指定されていて生きたままの「移動及び飼育」が禁じられている。
なんと…ここらではウシガエルを見ることがなかったためかなり驚いた。ザリガニがいてドジョウやイナゴ、在来の小さなカエルなど餌になる生き物がたくさんいるとなればそりゃあいるのだろうなと思っていたが予想外の出会いだった。
本来はザリガニ捕りに来ていたんだが、私のプロジェクトでは自然の愛護、保全というモットーがある。
僥倖だ、私もかねがね君がどんな味をしているのか気になっていたのだよ。
しかし、前述した通りウシガエルは特定外来生物。生きたままの移動ができないためその場で〆る必要がある。ザリガニと比べ命を奪うのは少し抵抗があったが、覚悟を決める。
まずは足を持って硬い地面へ一撃叩きつけて気絶させる。そしてすぐさま鋭利な物を使って脳天を突くことで絶命させる。命を頂くからには苦痛は最小限、時間は最短で終わらせるのが礼儀だ。
こうして自分の手で命を奪うことで、普段スーパーに並べられてある食肉も誰かが殺めたものなんだと実感し、より食への感謝と敬意が身近なものとなる。骸の上に人は生きていることを忘れちゃいけない、悪戯に命を奪ってはならない、そんな当たり前で大切なことを自分事化して教えてくれるのが食事なのだよと再認識した。
〆たウシガエルと一緒に入れられるカニの図。とても気まずそう。
思わぬ獲物の遭遇にウキながらもザリガニ捕りは続く……自然に触れ、泥に汚れ水で濡れての楽しい時間が過ぎていく。
こいつには指一本触れさせねぇ!の図
バケツも沢山、みんなの疲れも見え始めてきたので終了。ほとんどの人が初めての参加だったけど楽しそうで何よりだった。一仕事終えた後に繰り出したコンビニの電灯や街灯は一際眩しく、夜中の仕事をしなくなった信号機の淡さがいつもより特別な気持ちにさせてくれる。
ちなみに…
ザリガニはこのくらい捕れた。プロジェクトを重ねていくごとに確実に数が減ってる。大変喜ばしいことだ、今度はポイントを変えてみることも視野に入れている。
しかし、今回のnoteの主役はザリガニではない。そう、ウシガエルだ。
ウシガエル実食
⚠️捌く過程はカットしているため食肉の状態ですが、苦手な方はご注意ください。
できた。初めてにしてはよく捌けたかと思う。皮を剥いて内臓を除去して胴体部分と足を切り分けた。過食部位は足のみだと思っていたのだが、胴体部分も結構身があるカンジするので少し怖いが調理してみようと思う。
材料はこちら!バンッッッ💥💥💥ってたくさんの調味料とかを材料を並べて撮影したら本当は映えるしお料理記事感出ていいんだが、時間はもう夜中の1時。日付超えて眠い通り越してぱおん!なのでそんなところまでに頭が回らないのがもこにクオリティである。字だけでなんとかして……
材料
ウシガエル1匹
塩コショウ(下味で強めに)
イタリアンソルト(まぶすように)
白ワイン(身が浸るほど)
水(ワインの1/2程度)
オリーブオイル(水に対して2/3)
ニンニク(一片)
ガーリックパウダー(お好み)
ローレル(一枚)
具体的な量は記載していないが、許して。超感覚料理人なので…(逆に具体的な量を提示されても食材の量や調理器具によって変わるのでわかんないのよ私は)
では、調理…
1.下味をつける
先ほど上に貼った写真がもう塩コショウを振って20分程度冷蔵庫で寝かしたものである。あらかじめ水気は拭き取っていたのだが、白身魚のように浸透圧でたくさんの水分が滲み出てキッチンペーパーがグチョってる。塩コショウを強く振っといたので下味をつけるのと同時に臭み抜きや身を引き締められたのではないだろうか?
2.下焼き
ここの写真を撮ってないの本当にnoteとしては酷いなぁっと思う。だから読者の想像力を頼る。まずオリーブオイルをフライパンに引いて、熱くなったら刻んだニンニクを入れて香りを出していく。程よく火が通ったら身の厚い足の部分から入れていく。急に熱を通されたからか生きてるかのように足がキュッと縮まり、持て余していたつま先もちょうどよくフライパンに収まった。片面が焦げない程度に焼けたらひっくり返し、同時に身の薄い胴体部分も焼き始める。今のところはニンニクの香りでとても美味しそう。焼けたらウシガエルは他の皿に移して…
ちょっとだけザリガニも調理してみる。
※写真は別個体で代用しております
見てもらえるとわかるのだが、胴体と尾の間に少し隙間が生まれている。これは脱皮の予兆だ。うちでは捕まえてきたザリガニを大きめの桶を3つ使ってキープしておくのだが、入る量にもそれは限界があって、どうしても過密気味になってしまう。そうすると共食いや争いが起きてしまう。この時決まって先にやられてしまうのが小さめの個体や脱皮した個体だ。死んで捨ててしまうのも勿体ないので。
また別の写真で代用。まるで広告のような写真だが、私の友人が撮ってくれたもの。ザリガニは熱すると赤くなる。甲殻類(エビやカニ)が熱を加えられて赤くなるのは、殻に含まれるアスタキサンチンとタンパク質の結合が分解されて、アスタキサンチンの素の色である赤い色が発現するから。一生使わない無駄知識、勉強になったね。そして真っ赤になって香ばしさをプラスできたらウシガエル同様一度お皿に移す。
3.煮込む
さて、これからが本題。ウシガエルたちを煮込んでいこう。粗熱を取ったフライパンに再びウシガエルとザリガニを投入。そしたらウシガエルが半分以上浸るくらいの白ワインと1/2の水、オリーブオイルを注ぎ入れて強めに火にかけてアルコールを飛ばしていく。この時ワイン特有の香りとアルコールが立ち込めて目に来るので換気扇はガンガンに回した方がいい。同時に臭い消しのためにローレル一枚ガーリックパウダーを少々入れ、ベースの味付けに再びイタリアンソルトを使う。野生のものを口に入れるというのは何度経験してもやはり怖い。念には念をかけるのだ。ここで一つ…
料理は素材の味を味わわなければ意味がない!とか言う奴がこの世界にはいて、しょーもない味付けで「うわ〜まずい」とか「臭い気になるな」とか言うのがめちゃめちゃ気に入らない。素材の味を知るのは大切だが、その味に合わせた調理をしなければ料理として成立しないのではないか?鶏には鶏の料理、牛には牛の料理があって、食材の良さを探究して生み出されたレシピというものが出来上がる。合わない調理法で料理したら不味いのは歴然だし、食材に対して失礼である。人間が長い歴史の中で培った生物として唯一無二のもの、料理という文化を否定せず、料理をしたり味わったりすることの喜びを忘れないでほしい。それが食材となった命に対して出来る唯一の餞なのだから。
と、だいぶズレた話をして申し訳ない。食材への贖罪と言わなかっただけ許して欲しい。(とはいえ私もレシピを見てやってる訳じゃないし家にあったもの使って作ってるのでさっきの言葉はなんなのよさ!と言われても仕方ない)
煮沸してきたら火を弱火から中火の間に落として蓋を被せて蒸す。この時だいぶアクが出てくるので掬い取ってあげた方が良い。今回はこの汁は使わないので自分は取ってないけど。
そしてようやく………
完成!!!!
所要時間は20分程度。煮込むのが時間かかるのでその間は並行して別の作業ができるいい調理法だ。
実食
肉の多い足にかぶりつく。警戒は何処へやら、とても美味しい。大きな筋肉で大地を蹴り上げるその足は硬そうに見えるが、煮込みの作業を入れることで鱈の身の様にほぐれ、ハーブの香りと塩がよく合う繊細な味わい。鶏の肉と喩えられるように似たような味わいではあるが、骨の近くになれば豚足のような、白身魚の皮目の脂のようなきめ細かくくどくない油分があって、食材として違った魅力がある。言うほど淡白じゃない。
胴体部分は反対に肉感が強くやや歯応えもあって、食べ応えがある。旨味は足ほど強くないが、鶏のせせりのような特有の食感があるので食べてて飽きない。当然臭いは感じない。
最後にザリガニを食す。これは何度も食べ慣れた味だ。エビのような甘味が突出しているわけではなく、一本の筋繊維が太く旨みがまとわりつく感じはたまらない。ミソも時々当たり外れあるが濃厚なので濃すぎないウシガエルの合間に食べるのにかなり相性がいい。
全部おいしかった。ご馳走様でした。
最後に
野生動物を食すのは全て自己責任です。現地で何を食べ、どんな土地を踏みしめてきたのかは個体差があります。くれぐれも中途半端な下処理や調理をしたり、ましてや生食をしたりするのはやめて下さい。あらかじめ毒性の有無などを調べることも大切です。
また、今回のウシガエルのように"特定外来生物"である場合は「生きたままの移動及び飼育」ができないということを捕まえる前に理解しておきましょう。その他の生物も同様で、多少なりか絶滅危惧種だったり外来生物だったりの予備知識を持った上で自然と触れ合っていくよう心掛けましょう。
あとがき
初noteでした。長文だし見づらいし誤字脱字あるかもしれません。今後も料理のことや作品制作のことについた書いていこうと思います。
駄文閲覧ありがとうございました。
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