グッドパッチのMSワラントをちょっと考えてみる
【追記2022/7/20】果たしてグッドパッチのMSワラントは成功だったのか!? 一番下に追記しました。
※追記3/11:野村証券の大量報告から行使動向を考察しています
みなさんこんにちは。MSワラント銘柄突撃大好きの「もこもこ」です。普段はTwitterで情報発信させて頂いています。
Twitter ⇒ mokorpho3653
まず、このnoteの表題画像にはグッドパッチ土屋社長のツイッター背景を使わせていただきました。無断でスイマセン。
「前進」の文字、多分グットパッチのデザイナーさんが作ったものと思われるのですが、シンプルながら躍動感(前にすすむぞ!って意気込みを感じます)があり、表題はこれだ!と思いました。似顔絵もいいですよね。似顔絵もデザイナーさんが作成したのかな?(許可は頂いてませんので不都合であれば一報頂きたく)
21/1/22にグッドパッチ(M・7351)がMSワラントの発行をリリース、MSワラントそのものは珍しいものではありませんが、IPOから1年以内のMSワラント、IPO時の資金調達が少なかったのが実施理由の一因、割当先が主幹事(大和)ではなく副幹事でもない野村としていることから、ちょっと物議をかもしました。
初めてMSワラントに掛かったグッドパッチホルダーも結構いらっしゃった様子で、結局はMSワラントの常套文句【悪魔の増資】がいたる所で叫ばれました。
はて、悪魔の増資って言ってる方は会社側から丁寧に説明されているリリース内容を見て、ちゃんと考えてみたのでしょうか?
①MSワラントについては拙稿noteを
②今回発行されたMSワラントの内容
潜在株数727千株(⑥509千株、⑦218千株)希薄化率9.99%
当初行使価格(発表前終値)3420円で24.8億円の調達額※株価が下がれば減額
修正額は終値の91%(▲9%)で野村證券が引受(11.29円)
下限行使価格は発表前終値3420円の70%である2394円
・行使指定あり、行使停止指定あり
・⑦は1億円以上のM&Aトリガー付き
・ブロックトレードを円滑にするための貸し株あり
③増資の性質と背景を考える
増資をするってことは「お金」が必要なんだ!という会社側のアナウンスです。財務面を見てみますと21年1Qの現預金848百万円、純資産1036百万円(自己資本比率68.8%)です。直近は借入返済、ファンドGpDFに出資のため現預金は減少しています。
今回のMSワラントの用途は
①デザイン人材確保に5億円
②M&Aに16.4億円
③新規事業・SaaSサービスの拡充に3.4億円
ここで今回の資金調達が「前向きな資金調達」なのか「後ろ向きな資金調達」なのか考えてみましょう。前向きとは、事業を拡大するための投資用途の資金調達であり、後ろ向きとは、基本的には借入の返済用途の資金調達です。とすると
今回の資金調達は
人材確保、新規事業投資、M&Aということで前向きな資金調達ということが分かります。キャッシュに苦しいから資金調達するという目的ではないのがはっきりしています。
④資金調達の選択肢を考える
資金調達の選択肢として
・増資 か ・借入の2択
増資を選んだ場合は・新株公募 か・MSワラント (CB等の方法もありますが、現在の時流に沿う増資はこの2つです)
現預金848百万円 純資産1036百万円、総資産1505百万円(自己資本比率68.8%)で必要金額が2480百万円。
もし、全額借入した場合、
純資産1036百万円で総資産は3985百万円、自己資本比率は26%まで一気に下がることになります。
借入は当然返済義務があり、借入金がお金を生む物に代わるものであれば良いですが、用途は人件費、新規事業投資、M&Aということで、投下してもすぐに回収できそうなものでありません。とすると、現在の収益状況(営業利益3億円)で25億円弱の借入はかなりの負担になることがわかります。
今回の用途は「事業拡大投資」であり、結果の不確実性を伴います。
M&Aとサービスに20億円を投じるわけですが、M&Aは「のれん減損」、サービスに資産性があるなら「減損」リスクが出てきます。
純資産が10億円しかないのに、16億円のM&Aであれば、のれんは数億円程度となるでしょうが、借入を元に進め、もし減損を行った場合、純資産があっさり吹き飛ぶ可能性はゼロではありません。
まっとうな経営者(およびガバナンスが効いた会社)であれば、過大な借入を行いM&A他投資を行うという選択は選ばないでしょう。※土屋社長が筆頭株主かつ代表ですので、社長が暴走すればばできないこともないでしょうけども
⑤新株公募かMSワラントか考える
今回の必要調達額は25億円弱、希薄化10%程度です。時価総額は200億円超でPBRは20倍超。マーケットに評価されているおかげで純資産の2.5倍におよぶ資金調達を行える環境です。
増資は基本的に主幹事である大和証券と相談して進めるはずですが、マザーズ上場の公募増資のケースは非常に少なく、想像ですが25億円程度では大和証券は引受けてくれなかったと思われます。(直近大和証券が受けたマザーズ企業の公募引受はJIAで100億円超の調達額)
公募が出来ない以上、残された手段はMSワラントしかありません。土屋社長もMSワラントを行ったらどうなるか、多分判っているはずです。
コロナ禍においてもグッドパッチのビジネス環境は順風ですが、将来どのタイミングであっても今の株価を維持できるという保証はありません。今ここで25億円の調達は、利益の年成長率30%とすると、向こう5年分の利益額、5年の時間を買うことになります。
良いM&A対象先を見つけても資金がなければ指をくわえるしか術はありません(M&Aは株式交換で行うことも可能ですが、全量株式交換というケースは少なく、相応の現金は用意せざるを得ません)
勝負だ!
MSワラントなんて止めましょうと止めた方もいらっしゃったかもしれない。MSワラントにより既存株主を失望させ、炎上するかもしれない。
けれどここで増資を成功させ一気に財務規模を拡大できれば、増資コスト(増資がきっかけで減少した時価総額)の数倍のリターンが取れるチャンスが生まれるからこそMSワラントを決断したのではないでしょうか。
⑥今後を考える
攻めるためのMSワラントを発行した以上、求められるミッションは
「如何に高値で権利行使するか」(注:全量行使するではない)
21年1Qは四半期ベースの売上・営業利益の記録更新、営業利益の進捗率は4割に迫る勢い。コロナの影響はあろうが、このまま順調に行けば期待以上の結果は出てきそうです。
大企業のみならず、デジタル化が遅れている行政、そして今年秋に創設されるデジタル庁。行政向けの仕事をどれくらい獲得できるかが飛躍のポイントになっているかもしれません。
MSワラントを発行していても時流に合った人気企業は買われている。(例:ワクチン冷蔵庫のツインバード工業、半導体需要を追い風にした日本電子材料)
どのようにワラントの権利行使を進めていくのか、そして行使促進のためにどのようなニュースリリースを出していくのか、今後の動向に注目していきたいところです。
(補足)筆者は現在、グッドパッチのホルダーではありませんが、IPO当初からUI/UXデザインでDXビジネスを進めていく会社ということで気にはしておりました(ただ株価的には高っかいなーとは思ってましたけど)。筆者はエクイティファイナンス、特にMSワラントを研究しており今回のMSワラント発表を機に改めて注目、土屋社長のツイッターとnoteを見かけ、ちょっと深堀してみたいと考えまして、今回このような文章を作った次第です。
↓土屋社長のnote
もちろん、今回のMSワラントが成功裏に終わり、会社も株主も土屋社長も、みんなハッピーになるよう期待しております。
⑦いきなりの大量権利行使(追記2/11)
2/10引け後に2/9に割り当てされたワラントが2/10に大量行使されたとのニュースリリースがありました。
・⑥509000株のうち90000株(17.68%)
・行使価格は2450円(2/9終値2686円の91.2%)
・2/10はマザーズは+25.5P(2%)の大幅高、グッドパッチは9日終値同値で寄り付き、2730円高値、引け2703円+17円(0.6%)出来高143000株
う~ん。正直な(勝手な)感想を言うと
下限のわずか50円上の安値圏にも関わらず行使してくる野村は容赦ないですね・・・・
中にはワラントの行使が早く進むぞ!やった~と思う人がおられるかもしれませんが、それって、会社の為にはなりません。
現時点の行使価格は当初予定の1000円下。この水準の行使を会社側が容認すれば、⑥の増資額は当初水準であれば17億円、この水準なら12億円となり5億円違ってきます。額が足りない場合はM&A向けを削るため、9億円見込んでいたM&A資金は4億円ほどになってしまいます。
今回のMSワラントで株価を上げる一番のポイントは「M&A」だと私は思っておりますので、きちんと野村をコントロールしてそこそこの価格でワラント消化を進めないと、M&A戦略に問題が出てこないのか、ちょっと不安になってきますね・・・。
今回1回目、しかも大量消化ですので、株価が上がる何等かの材料・情報を野村側が掴んでいるとはちょっと考えにくいです。掴んでいるのであれば、割当翌日、地合いは良かったものの、出来高が多くもない2/10にわざわざ大量行使する意味もないのでは?と思います。(野村が行使&バイホールドしている可能性はありますが、真相はわかりません)
⑧会社側は安くても行使を進める判断を下したとみる(追記2/19)
2/10⇒9万行使のあと、2/16⇒8万行使、2/18⇒10万行使と当初の51万の約半分の行使が完了しました。
正直言って、このハイペースかつ安値の権利行使は”異例”です。
行使期間は割当から3年(2024年まで)あります。にも関わらず、当初行使価格より約1000円ディスカウントされている水準で行使を進めるということは、何かウラがあるように思えます。
(1)早急な人材確保を進めている(or確保資金が必要となっている)
運転資金的には問題ないけど、仕事が多くて人材確保を早急にすすめなきゃいけない状況になっている。人材増=売上増なので、先行きの業績にはプラスになるでしょう、人員の推移をチェックしておきたいものです
(2)水面下で資本業務提携?
行使しても市場で売却しない(もしく野村が買付している)でまとまった株数を集めているケース。可能性は低いと思われますが、業務資本提携話が水面下で動いていれば、なくはない話だと思います⇒(追記3/4)行使動向を調べたところ、市場外・市場内でおおよそ捌いており、野村の保有数も少ないことから、この可能性はほとんどゼロと思われます。
(3)M&A資金が足りない、急ぐ
極力手持ち資金からM&A資金を捻出したくはないので行ったMSワラント。ひょっとすると具体的なM&A話が出ているのかもしれません。ただ優先すべきは人員なので、慌てて安売りする必要があったの?と疑問は残りますが
(4)会社側が行使に無頓着 or B/Sを良く見せたい
あまり考えたくはありませんが、ディスカウント行使が進んでいる以上、行使については野村さん自由にどうぞのスタンスかもしれません。また2月はグッドパッチの中間決算期ですので、ファイナンスによりB/Sを良くみせたいと思っているのかもしれません。
今回のMSワラントはトリガー設定により2回に分かれています。初回のMSワラントが行使終了後に株価が上がっても、トリガーを満たさなければ行使はできません。発表後2600円前後で買った方は喜ぶかもしれませんが、会社を長く応援したいと思っている人にとっては
「なんで、こんな安値でN村に権利行使させとんねん!!社長説明せえや!」と思っていただいてもよろしいかと。
会社側は下限近辺で大量行使がなされた件を良く考えていただきたいものです。このような価格で権利行使がなされると、それこそMSワラントのイメージ低下、そして今回の増資ニュースで投げた人たちが報われません。
⑨大量報告を読み解くと結局・・(追記3/4.8.11)
3/4と8と10日リリースの野村證券の大量報告を見ると
現物214000株(ほとんどが借株)、ワラント253000株分の報告が出ています。3/4時点で⑥は全行使されましたので、残りのワラントはトリガー付きの⑦218000株です。
2月行使は294000株 3月行使は215000株(未報告35000株)
市場外処分327200株(68.5%)=ブロックトレード
市場内処分151000株(31.5%)になりました。
野村アセットマネジメントが発表翌日の1/23-3/3までに取得した株数
⇒232500株(2/9割当前市場内124400株、割当後3/3まで市場内85600株、市場外22500株)、処分はゼロ
野村インターナショナルのトレード状況
市場内 買145.27万 売143.25万 差引2.02万買い越し
市場外 買12.14万 売15.32万 差引3.18万売り越し
整理すると、ワラント発表以降、野村AMは市場内で淡々と買い続けました。市場内処分は15.1万株ですが、野村AMはその処分の半数以上の8.5万株を買っています。また野村は市場外に32万株売却したのですが、野村AM以外に30万株売却していることになります。
野村インターナショナルは、ほぼ毎日トレーディングを行っていたようですが、市場内では2万株程度の買い越し、市場外は3万株ほど売り越していることが分かりました。特に2月22日以降、市場外への売却が増えていることもわかりました。
特筆すべきは3/3で10万株権利行使し、市場外へ101600売却しています。⑥のワラントの終了が近いため、需要者がまとまった数量を注文したのかどうかはわかりませんが、3/3の権利行使は1株も市場内には流れていません。
ワラント行使の割に株価が意外としっかり&権利行使がかなり速いペースで消化されたのは、貸借取引を利用して野村證券が株価をコントロールししながら、行使株の7割が市場外で処理(=機関投資家か誰かが買っている)されたこと、さらには市場内で売却されたうちの半分は野村のファンドが買っていたというオチでした。
野村のファンドがガッツリ買う前提であれば、そりゃ、野村本体の利益を度外視にして安く行使して、その分ファンドが安く買うわけですよ。ファンド側としては本来3000円以上で買うところ、今回のMSワラントがきっかけで10%以上も安く買えると言う仕込みとしては大成功のケースで、野村證券グループに上手い具合に操作されてしまったな~というのがわかりました。
おそらく次回の大量報告で、先発分(⑥)のMSワラントが全て終了、状況がはっきりしてくるかと思います。
【追記2022/7/20】グッドパッチのMSワラントは果たして成功だったのか?先行きはどうなのか?
こちらのnoteをご覧のみなさま、久しぶりの追記更新となります。
現在2022年期3Qの決算発表がされ、赤字ではないものの低水準な業績数値が嫌気され、決算発表翌日は寄らずのS安。ただでさえ、2022年に入りグロース株が叩き売られ、昨年末からほぼ半値水準の株価となっていた状況に追い打ちをかける格好となりました。
さて、グッドパッチ(GP)が行ったMSワラントですが
最終的には約18億円(前半12.6億円、後半5.3億円)の資金調達となりました。前半の資金を元に昨年12月末には㈱スタジオディテイルズ(SD)のM&Aを発表しました。
SD社は直近売上5.6億円、経常利益31百万円、純資産61百万円。2022年2Qで、のれん619百万円が出てますから、合算すると7億円弱のお買い物という事になります。これ、GPとしてはかなり勝負しています。
GPとSDは得意領域が別でシナジーがあるという事ですので、売上利益ともに先行きは強く見ているのでしょう。10年程度で回収できればと思っているのかな?少なくとも、すぐ減損になっちゃうな~という印象のM&Aではなさそうです。
さて、GPが行ったMSワラント
これ、大まではいかないけれど、十分成功じゃないですか?
下限行使価格2394円は時価総額換算で約200億円、で今年の2月1日までで全て行使完了。今の時価総額は悪地合いや悪材料込みで叩き売られ85億円。今の時価総額で18億円の調達となったら、かなり無理をしなきゃ出来ないレベル、というか多分無理です。
18億円のファイナンス済み、SD社というパートナーをM&A済みという事を考えると、今のGPの時価総額85億円は、私個人の感想になりますが非常に魅力的な水準に感じています。
PBRは約2.5倍。未だに2桁PBRがゴロゴロしているグロースマーケットの中でいえば割安(=不人気)な部類に入ってきました。(293位/469社)
もちろんマーケットが付けている評価は正しいですし、米利上げやリセッションリスクがまだ終わっていない事を考えると、ここから更に半値以下になる可能性も十分に考えられます。下方修正リスクも内包してしまいましたし。
でもグッドパッチが行った今回のファイナンスは
時間軸がちょっとでもズレていたら少なくとも後半の5億円は調達できませんでした。
結果論ですが、これスーパープレイです。持ってます。ラッキーです。
ならば乗ってみましょう。
叩き売られたこのタイミングでそのラッキーに。
※半年後さらに半値になってる可能性もありますので、投資判断は自己責任でお願いいたします。
【終】
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