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推しと菓子折りと会計ソフト

誕生月なのに、盛り上がらないのは、確定申告があるからだ。
毎年この時期、会計ソフトと睨めっこになる。
なんで青色申告って言うんだろ、気分は確かにBlueだけどさ。

MBTIがENTPと納得してしまうのが、まあ、私の性格にはかなりアレコレあるという自覚があったのもある。
上司に恵まれない、というより、部下として使えないので、会社員生活が大変だったのだ。
結局色々あって、独立した。
それが、2013年の夏のこと。
独立する夢があったわけでもない見切り発車で、めちゃくちゃだった。
来年にはもう10年になる。

2013年という年に

ENHYPENからBTSのチェックをするようになって、思わず、鳩尾にパンチ喰らってしばらく動けなくなったのが先月末のこと。
防弾少年団のデビューが2013年ということを知ったのと、
差し入れのフルーツの話を動画で見てしまったから。

仕事を独りで始めるにあたって、借金を背負った。
貸してもらえる信用があったのは幸いだったが、如何せん、借金だ。
無収入の月でも返済しなくちゃならない。
当然、遊ぶ気持ちにならないし、切り詰められる生活費は全て切り詰めた。

一番最初に切り詰めるのは食費。お米と塩でどうにかしようとしたこともある。
スーパーの閉店間際に赤札のついたお惣菜を買うのですら贅沢だった。

そんな中で、ありがたいことに、かつての取引先やら友人諸氏から、独立お祝いの菓子折りが届く。酒好きも知られていたから、お酒を贈ってくださる方もあった。

よそゆきの包装に包まれたチョコレートにビスケットにプリンにゼリー、ワイン。
会社員の頃は業務の一環で送っていたそれらが、全く違ったものに思えた。

「どうしよう、このままダメだったら、どうしよう。」

コンビニにバイト行ったり、本業の時間以外もなんとかお金にしようとしていた。
お菓子や缶ビールを買うなら、ハガキ10枚でも買って宣伝しなくちゃ。

「どうしよう。」
夜になればのしかかってくる空腹と不安を、いただいたお菓子で紛らわせた。
賞味期限の短いものから順番に、一個一個数えて食べた。
「あと何回、食べれるかな。」
空になった箱をぼんやり眺めて、こんな道を選んだ自分に毒づきながら箱を畳む。


同じだとは思わない。
育ち盛りでもなかったし、チームでもないし。
チームだったら、もっとキツいと思うのだ。
自分だけなら、逃げようもあるから。

ただ、選んだ道がこれでよかったのかと自問自答する時に、空腹がどれだけ絶望的な気分にさせるか、を、私は知っていたのだ。
どんな気持ちで贈ってくれたにせよ、菓子折りは私を癒してくれた。
そういうことを思い出した。

私はARMYでは無いが、動画を見たせいもあって、彼等の中にあの夜のお菓子が持っていた何かを含んでいるような気がして、キュゥっと胸が掴まれた。

あれは2013年だったのだと、私に鮮やかに思い出させてくれたことに。

簡易簿記から会計ソフト

最初と翌年の確定申告は、当然ながら、赤字だったので、0。
最初の年は会社員時代の源泉徴収分が戻ってくるありがたさだったが、翌年は全くの0。
取引も少ないから、手書きの帳簿でやっていた。それこそ、簿記の勉強片手間でやれていたのだ。
その翌年は、やっと納税できた。会計ソフトを買った。自動計算はありがたいし楽になった。確定申告の申告書類まで作ってくれる。

借金がなくなったら、心置きなく楽しい時間が過ごせるようになるだろうと思っていた。仕事も充実感が出るだろうと。

日々のお金の流れを会計ソフトに打ち込んで、年末と2月になれば残高推移表を眺めて、変な数字がないか入力誤りがないか伝票類を確認する。
どんなふうに働いたかが、数字の流れで思い出せるから、今年は同じやり方はやめようとか、色々考える。

借入金がどんどん小さな数字になっていくのを眺めてほっとしていたのが、0になった時に、終わった、と思って、力が抜けた。

「どうしよう。」

本来だったら、お祝い気分でこれからもっと稼ぐぞ!となるはずだと思う。
それが、本当に、どうしよう、だった。
借金を返すことが目的になっていて、それ以外何も感じてなかった事に気づいた。
この仕事が自分に合っている事は、本当に幸いしていると思うし、好きな仕事なのだとも思う。

でも、仕事のために生きてるわけではない。
仕事は生きるための手段、
食べる物を土から育てて収穫してっていう能力がない代わりに、
お金でそれを買うために、自分に出来ることをやってる。

何もしないで余生が過ごせるほどの貯金が貯まったわけでもない。
マイナスがプラスに転じたそれだけなのに。
まして、世界は一変してしまったというのに。

笑ったら顔が筋肉痛になってしまった

実はライブには2013年から全くいけてない。それこそ、ELLEGARDENのメンバーの別活動を追っていたのも2013年まで。

取引先で趣味や余暇の話をするのに、過去話をしていた。このご時世じゃ、イベントにも行けませんし。と。
会社員だった頃のつながりもあるから、そのままの話題だったのだ。
好きだったCDを繰り返し聴いていたように。
こんなに年月が経っていたことを意識していていなかった。

会計ソフトの数字を眺めながら、不意に笑ってしまった。
I-land見ながら流した涙は、動いてなかった心が溶けたせいかと、そう大袈裟に考えた自分に。

その時まで悔しくても涙がでてくることはなかった事にも気づいた。
画面越しのことを悔しがって泣いたくせに、仕事で悔しくても泣けてはなかった。
できない事に思いを馳せる余裕もなかった。

ENHYPENという名前の前に7人が円陣を組む姿に、ここからが正念場なんだと感じた時に、私の憑物は涙と一緒に落ちたらしい。

まだ、知らない事があるし、やってない事もあるじゃない。

今年は、世情がどうであれ、去年より休みを多く取ろう。
せっかく上司もいない自由裁量の仕事なんだし。
やってない事を少しづつやっていこう。

私より歳若い彼等のコンサートに行く時に、溌剌としたお姉さん、でありたいな。
ENGENEの若さに圧倒されない清々しさ持っていたいな。

あ、若さに負けたくないのか、私は!
それは笑えちゃうでしょ、いやあねぇ。

何年かぶりのバカ笑いをしたせいで、顔が筋肉痛になるなんて、今までがどうかしていたのだ。

納税額がどうなるか、気分はBlueだけれども、
残高推移を眺めて深く感謝した。

こんなご時世でも仕事をくださる方々がおられること。
菓子折りを贈ることができるようになったこと。

そういったことが、ずしんと鳩尾にきた。

私、頑張ってきたよ。
ありがとう。
これからもどうぞよろしくお願いします。

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