恋愛迷子な私のこと。【第4話】
深夜23時47分。東京。
今日も私は、”恋愛迷子”─────
第4話
あえて追わないという選択を。
恋愛迷子と称する私。
その所以は、25歳にもなって、自分が何を恋愛に求めているかがわからないから。
付き合ったとしてもすぐに別れて、でもまた別の人をすぐ好きになって別れて、の繰り返しで、未だに自分がどんな人と一緒にいたいのかが明確になっていない。
初めて付き合った人と結婚したなんて人もいる中で、着々と ”過去の恋人” を増やしていく私。
だけど、その中の誰とも復縁はしたことがない。
別に、全元カレのことが復縁したくないほど嫌い、なんてわけではなくて、そもそも恋人と喧嘩別れをしたこともない。
だから、別れた後にばったり出会っても気まずい、なんてことも特にない。
なのに、復縁に対しては、”ありえない” という持論をもってる自分がいる。
『いったん試してみて(付き合ってみて)ダメだったのに、なんでもう一度やり直そうって思えるんだろう。』
そんなことを思っている。
次付き合ったらうまくいくなんて保証があるわけでもないし、仮に復縁しても、1年後とかにやっぱり違った、ってなったりしたら時間の無駄じゃない?とさえ思う。
なのに、ただ一人。
別れてからも心に残っていて、願わくばもう一度一緒にいられたらと思ってしまう人ができてしまった。
社会人になって付き合った2個上の先輩。
同じ部署にいて、厳しくも優しくも接してくれる先輩は、人としても尊敬できるところがたくさんあって大好きだった。
だけど、ちょっとしたすれ違いで1年足らずで別れることに。
すごく悲しくて苦しくて、泣きじゃくった夜を覚えている。
それから程なくして、私と先輩はほぼ同じタイミングで仕事を辞め、2人ともほぼ同じタイミングで上京した。
この仕事を辞めて上京するのは、別れる前から決まっていたから若干の気まずさはあったが、住むところも会社もお互い伝えなかったから、東京にいるのは知ってるけど会わない友達、くらいの距離感だった。
なのに突然、私は彼に連絡をしてしまった。
当時、仕事で押し潰されそうになって、誰かに話を聞いて欲しくて友人たちに連絡しまくっていたが、なんとなく欲しい言葉が違って不完全燃焼になっていたときがあった。
そして、たどり着いた究極の答えが、
『先輩に連絡してみようかな』
だった。
同じタイミングで転職していて、仕事の考え方とか尊敬できる点がたくさんある先輩なら答えをくれるかも、そんなことを考えたら、自然と指がメッセージを打っていた。
すると、その返事は電話で返ってきた。
半年ぶりに聞く先輩の声。
あの頃と変わらず優しい先輩の声にホッとした。
悩みだけじゃなくて、お互いの近況なども話してすごく幸せな時間だった。
そして、会話の端々に出てくる、"2人の思い出" を振り返るような先輩の一言一言に、"昔は付き合ってた" というのを先輩がなかったことにしていないと感じて妙に心が躍った。
半年ぶりの先輩との会話で、気づけば4時間も経っていた。
久しぶりに本音で話せて楽しかった、そんなことを言って通話を終えた先輩に心が疼いた。
久しぶりに本音で話せて楽しかったのは私も同じで、しかもそれが忘れられない相手となれば、”もう一度” を願ってしまうのは自然の流れだと思う。
なんとかしてLINEのやり取り途切れないよう会話を続けること3日。その努力は先輩の既読無視であっけなく散った。
まずい、しつこく連絡しすぎた。
そんな反省と後悔に打ちひしがれる日々を送っていると先輩から連絡が。
「ご飯行かない?」
もちろん行くに決まってる!!
ということで、ひょんなことから半年ぶりに私たちは再会した。
先輩の気持ちはわからないけど、少なくとも私は半年ぶりに先輩に会えることがすごく嬉しくて、2時間の食事だけでは物足りなかった。
2軒目どうですか?なんて言ってみる?そんなことをぐるぐる考える私を知ってか知らぬか、先輩が一言。
「もう少し歩かない?」
こんな幸せあっていいんだと思った。
即座にOKし、そのまま2人で夜の散歩へ。
そういえば付き合ってた時もこうして2人で夜の散歩をしたっけ。
ぼんやりと過去の思い出にふけりながら、生ぬるい夜風とともに2人で日付が変わるまで散歩をした。
上京してきて間違いなく一番幸せな日だった。
だけど、おそらく私たちが2度と会うことはないのかもしれない。
そんな気がした。
半年ぶりの再会。私たちが会話したのは仕事にまつわることがほとんどで。
恋愛に関する話はお互い聞かなかった。
それは2人が元恋人同士だからなのか、単に気にならなかったからなのか。
正直私は気になったけど、変に疑われて今後誘いづらくなるくらいなら聞かないほうがいいと思った。
結局、2度目の食事の約束もないし、いっそのことあの日『彼女出来ましたか』とか玉砕覚悟で聞いてしまえばよかった。
予感通り、その食事から約1週間、お互い何の連絡も取っていない。
少し寂しいが、これが正解なのかもしれない。
これが私たちの適切な距離感なのかもしれない。
距離が近くなるとお互いのことを見失う。
私たちは一緒にいすぎた結果、その距離感を見誤り、それがすれ違いの原因になったのだろう。
だからこそ私は先輩に連絡をしていない。
一瞬、持論を忘れて復縁の可能性なんかも想像したが、きっと私たちにはこの距離感が適切なのかもしれない。
好きな人には会いたいし、好きだと何度でも伝えたい。そんな私の恋愛スタイルも少しは大人になっているみたいだ。
これ以上好きになれる人はいないと感じていた先輩とのまさかの再会を果たすも、思い出として綺麗に残すことを選んだ私は、
大都会東京で、
最後の恋を求めて彷徨っている。
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