読書日記 この気持ちもいつか忘れる

この気持ちもいつか忘れる
住野よる

この文章はネタバレを含みます。

この本を読み切るのにめちゃくちゃ時間がかかった。分量は大したことないし、書き方も易しく読みやすい文章なのに。私がこの主人公を好きになれないからだ。好きになれないどころではない。嫌いだ。本当に嫌いだ。途中から読もうかなと思っても、でもあの主人公だしなぁと思ってしまうくらいには嫌いだ。こんなに嫌いになれる主人公は初めてかもしれない。嫌われるように描写されているのかもしれない。意図通り大嫌いです。

この主人公の嫌いな点を書き出してみよう。
・周りに対して興味を持とうともしない点
・勝手に周りの人間をランクづけする点
・特別になりたいと言っておきながら自分はなにもしない所
・特別は与えられるものだと思ってる点
・自分は特別じゃないとか言っておきながら周りを見下してる所
・他の人の大切なものをたいしたものじゃないとか言っちゃう所
・自分の嫉妬を認められない所
・結局行動を起こさない所

他にも色々ある気がするが言葉にならない。なんか嫌悪感がある。行動を起こさないと言うのはちょっと語弊があるかもしれない。行動は起こしていたがそれも『特別』のためであり、『特別』以外のことを何も考慮しないものだった。すごく身勝手だと思った。彼は周りの人間を傷つけてもあれは『特別』でないからとほっとけるような人間なんだろう。

彼が使う『突風』も嫌いだった。突風が吹くと言う表現にしているが、『特別』と言う言葉が平凡に思えてそう言ってるのかもしれない。彼はよく突風を思い出すけど、それを新たに探そうとはしない。他人の突風を理解しようともしない。過去の突風が唯一無二で尊いものだと信じ切っている。新たに探そうとしないのに、あるいは自分で突風を手放した癖に過去にしがみついているところがとてもムカつくのだ。自分の嫉妬心を認められずに、自分は清いものだと、自分の思いは過去の突風にのみ向いているものだと認識を歪めている。自分の都合のいいように自論を形成してそれを周りに押し付けている。自分勝手で、歩み寄ろうともしない。主人公は歩み寄る必要がないからだと主張するだろうが。だから、それを強制した『斉藤』のことを尊敬している。

私は『斉藤』のようにはなれない。主人公のことが嫌いだからもあるだろうが、歩み寄るつもりがない人に対して心を開いて見せるのは勇気がいる。彼女も傷つけられた。それでも向き合う決断をした彼女の行動は、尊敬できるし私にはそれはできないだろうと思う。普通一度傷つけられたら、そのままフェードアウトするだろう。この物語はきっと『斉藤』を主人公にすれば王道の展開になっただろう。

私は主人公が大嫌いだが、『斉藤』のことは大好きだ。こう思うのは住野さんの意図どおりなのかもしれないが。ただ一つ疑問なのは、彼女が主人公のどこにそんな魅力を感じていたのかという点だ。長い時間一緒にいた描写はあるが、彼の演じていた『好かれる人物像』はそんなに魅力的だったのか?こんな周りを見下してる人間がそんなに『魅力的な人物像』が演じられるのか甚だ疑問である。

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