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とあるホテルの日常⑪

数ヶ月後…

いい時を維持するのは大変な労力であり、
逆に落ちるのは一瞬である・・・このホテルが典型的である。

陽光ホテルで、「元・支配人」、仮に高橋と言う名前にしておこう。
その高橋支配人が、日勤のスタッフに聞いた。

「今日の予約の状況は!」

「8割といった感じです。」

「何?少ないじゃないか!お前等が仕事をサボっているからだろう!」

「今はシーズンオフで、予約数が少ないんですよ。」

「だったら、営業電話の1本でもかけろ!全く使えない奴らだ!」

そう言い残すと、高橋は事務所を出ていった。

「佐藤支配人の時は、こんな事なかったのに…」

…そう、前支配人から高橋に代わってから、予約数が減ってきていて、毎日のように、高橋に罵声を浴びせられているのだ。

高橋のやり方は、とにかく「利益重視」。悪い事ではないのだか、シーズンオフとなれば、客も馬鹿ではない。より「安い宿」を探すのが心理。
そんな時期でも強気の定価販売をしている。

佐藤支配人の時と大違いだ。

高橋支配人は、いわゆる「ドル箱」と言われる施設のトップ。稼働率・利益が上がらなければ、無能の烙印を押される。
ましてや、エリアマネージャーに「上納金」を渡せないし、自分自身の至福を肥やす事もできないのだ。

高橋は何かを思いついたのか、事務所に戻って

「価格をさげろ!今の1/3だ!」と指示をする。
稼働率を上げることに舵を切った。

「そんな事をすれば、赤字になってしまいます!」

「うるさい!言う事を聞け!聞けないのなら、お前は、おはらい箱だ!」脅しをかける。

仕方なしに価格を下げた途端に、予約が入り、満室になった。

「ほら、俺の言う通りにしたから、即「満室」だ!」

しかし、お気づきであろうか、極端に価格を下げると言う事は、客の質も低下する現象が起こると言う事。
このホテルに泊りたいけど、値段が…と言う純粋な客もいれば、相応しくない客も来ると言う事を。

案の定、相応しくない客が下品な振る舞い、予約客以外の客室への入室。風俗の女の子を呼ぶ客も増えたが、高橋は、稼働率を上げるために黙認している。
スタッフが注意しようもんなら、逆にスタッフが怒られる始末・・・。

悪い振る舞いをする客を見て、他の客が次の予約をしない。長期滞在用予定の客も、キャンセルして、他ホテルへと移って行った。

極めつけが無許可で撮影をしたのだろう、AVに流れていた部屋が、このホテルとネットにさらされ、さらに予約数が減っていった。

それでも高橋は稼働率を上げるために、近隣の一番安いホテルよりも価格を下げ、稼働率を確保しつつ、利益を上げる為と言い、少しでも使えないと判断したスタッフを解雇していった。

稼働率は、相変わらずの上位ではあるが、利益率は
どんどんと下がっていった。

「何故なんだ、何故利益が出せない!」

…高橋は気づいていない。いわゆる、「無能」の支配人である。

そこに、常連の「女優さん」が宿泊に来た。


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