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小説 本好きゆめの冒険譚 第六十二頁

「次は私の番ね、ね!ゆめちゃん!」

 お母さんが、何か言って欲しそうにモジモジしている…

 これは、聞いてあげないと、拗ねるパターンなので…

「お母さんも何かくれるの?」

 お母さんは、嬉しそうに「バンザイ」しながら、ゆめに駆け寄り

「私の能力、全てあげるわ!私のは凄いのよ!」

 そう言うと、お母さんの身体が、光り始めた!

 余りにも強い光りは、眼を焼きそうなのだが、温かい感触がして…目を離せずにいると、光がゆめの身体を包み込む。光りは眩く、少しづつ身体の中に入り、そしてゆっくりと消えいった…。

 先ず変わった事と言えば、「見た目」。
 小さかった身体は180センチ位の大きさになり、スラッとした容姿。髪と目は赤く染まり、そして!母親(ヘーラー)譲り!慈愛の象徴である念願の「大きな胸」!幼な顔は絶世の美女と言っても、過言ではない位の女性に生まれ変わった。

「私の能力は、美しさ、愛、結婚とか言われてるけど、それだけじゃないのよ!私は最高位の女神!私に使役する女神は、全てゆめに従うでしょう!」

「それに、私の眷属、多数の獣達の召喚も可能になるの!」

「それって、私がお母さんと同じ立場になるって事なの?」

「そう!この瞬間から、あなたは「女神」として、生きて行くのです!」

 大きく手を広げ、「慈愛のポーズ」をキメる!

(き、キマッタ〜!これで、ゆめちゃんも、「はい!お母様!」って言って、私にとび付き悦ぶこと間違いなし!)緩みそうな顔を必死で堪えている為、顔をヒクヒクとさせながらもそのポーズを崩さないヘーラー…。

・・・そのはずだったのだが・・・

「嫌。」

「え?…。 ゆめちゃん…今何と…?」

ヘーラーが、豆鉄砲を食らったかのように、キョトンとした。

「お母さんの力は、ありがたいよ。でも…。」

「で、でも…?」

「私はパパとママの子供だし、人間でいたいの。」

 ヘーラーは、崩れ落ちるように床に手をつき

「かっ、神様になれるのよ…それも最高位の…他の人間なら、何を置いてもなりたがる存在よ…何が不満なの…。」

 その光景を見てられなかったゼウスは、ヘーラーの肩を抱きながら、

「これは、ゆめの選択じゃ。ゆめは神と言う特別な存在にはなりたくないんじゃろうて…諦めよ。」

「それとじゃ。」

「お前、全部の能力、権力、力を与えてどうする!とりあえず儂に謝れ!今すぐ儂に謝るんじゃ!」

「な、何の事よ…」

 ヘーラーは、涙を拭いながらゼウスの顔を見る。

「泣きたいのは儂の方じゃ!儂の、儂のアイギスを返せ!お前の権力を使える今のゆめじゃったら、お前のドラゴン位、簡単に召喚出来るではないかー!」

 ゼウスの言っている事を理解したヘーラーは

「ごめんね♡」(*ノω・*)テヘ

 頭を、コツンと叩く。

「儂のアイギス・・・。よし、あのドラゴンを始末しよう!ゆめ、召喚するんじゃ!」

 ゼウスはケラウノスをブンブン振り回しながら叫ぶ!

「やめてあげてよ!大人げない!」

 ヘーラーが、間に入って説得する!

「あの防具は、1つしか無いんじゃぞ!ドラゴンの一匹や二匹位、どうにでもなるじゃろう!ゼウスよ!ドラゴンを出せ!」

「私の主は、ゆめ様だけですので、たとえゼウス様でも聞けません、お許しを…。」

 ゼウスはゆめの中に隠れてしまった。

「ゆめや、頼む!儂の一生のお願いじゃあ〜!」

「駄目、アイギスは私のもの。」

「ゆ…め…」

 ゼウスは、ガックリと肩を落とした…。

「それからね、お母さん。」

「この格好、元には戻せないの?」


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