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ボツになった原案007

こんにちは!
さて、昨日は順序が遡ってしまいましたが、
今日は006の続きとなります。

***ここから本文***

JIPANG 0006 クエストスタート

〈斬撃〉さんがセカンド・ヴィレッジに戻ってくると、牧師・商人・料理人・鍛冶師の4人が準備をして待っていた。

 待っていたのだが・・・。斬撃さんは愕然とする。

 人が移動をする。という事は引っ越しである。
 引っ越しをするという事は、当然、荷物があるという事。
 4人は荷馬車に乗っていたのだ。

 そりゃそうだ、人だけを連れて来ても、何もできない。道具がいるのだ。
 よくあるテレビゲームでは、アイテムボックスという便利なアイテムがあるが、こんな所はリアルである。

「では、私が先導致します。参りましょう。」

 斬撃さんのクエスト・スタートである。

***

「クエストクリア出来ますかね?」
「斬撃さんなら、大丈夫ですよ!何度も失敗はするでしょうけど。」

 俺は今、運営と話している最中だ。
 最初は、全くテレビゲームというものを知らなかった俺ではあったが、ギルド長をやって数か月ともなれば、だんだんと分かってくるものだ。

 そして、今回のクエストは俺がデザインをしたって訳。

 運営サイドから「いやらしいクエストをデザインしたいけど、良い案はない?」と聞かれたので、ちょっとした悪戯を考えた訳ですよ。

 あ~、もっと苦しんでくれないかなぁ〜。あっ、ゲーマーってドMなんだっけ?何度もやられるのが好きみたいだから、ちょうどいいよね。

***

 俺は今、イライラしている。
 俺の名は〈斬撃〉。ソロプレイヤーだ。

 そんな俺が護衛を務めるだと?

 クエストクリア報酬に目がくらんだが、現実をもっとよく見れば良かった。
 さらに、キツイ事も起こっている。
 セカンド・ヴィレッジに戻ってすぐに出立したのだ。休憩を取るべきだった!いや、取らせてくれなかったのだ。

 いくら俺達がアンドロイドだったとしても、この世界の中では「生身の肉体」。疲れが出てくるのだ。これほど、このゲームのリアルさを呪ったことはない。

 ちょこんと、スライムが出てきた。
 こんなものは、軽くさばく。

 また、スライムが出てきた。あれ?1週目にはこんなことはなかったぞ?しかし、スライムはスライムだ。これも簡単に剣で切り落とす。

 荷馬車から悲鳴が聞こえた。スライムである。しかも大量に発生したスライムである!
 こんな数では、さばききれない!俺は逃げよと馬の尻を叩く!

 馬がびっくりして走って行った・・・。助かった・・・。はずだ。
『対象者が離れすぎています。30秒以内に近づいて下さい。』とアラームが聞こえた!

 その時には、既に遅く、荷馬車は遠くへと走って行った。

『10・9・8・7・6・・・・・』

 俺は力の限り走って荷馬車を追いかける!

『5・4・3・・・』

 見えて来た!もう少しだ!もう少し!

『2・1・・・』

 あとちょっと!

『対象者は安全圏内にいます。』

 俺は、荷馬車に近づくと道を外れ、いったん休憩を取ることにした。

「疲れた・・・。あんなシステムがあったのか。やたらと離れられないな。」
 俺は水をごくごくと喉を鳴らし飲んだ。

「騎士様!あれを!」商人が指をさす方向に大型の熊がいた。

 熊は5mはあろう大きさで、この辺りはゲームそのもの・・。感心している場合じゃないな。討伐しなければ!
 俺は、双剣を手にし突っ込んでいく。その瞬間から例の警告が始まる。
 30秒以内に仕留めなければ!俺は奴の顔を目掛けてジャンプした。

 熊は俺を目掛け左手を鋭く出してくるが、俺は空中で身体を翻し、奴の攻撃を躱すと同時にその左腕を切り落とした!

 ギャァー!と咆哮しながら奴は突っ込んでくる!

『10・9・8・・・』

 もう時間がないな・・・。決めてやる!
 俺は、奴の後ろを取るように旋回

『6・5・4・・・』

 後ろから奴の首を刎ねた!慌てて荷車に戻る!

『3・2・1・対象者が安全圏内にいます。』

・・・勝ったー!俺は大の字で横になった。しばらく眠りたい。

「騎士様、あれを!」またもや商人の声が聞こえる。

「次は、なんだ!」

 一人の少女が倒れていた。


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