とあるホテルの日常⑬
スタッフ全員が、「視察という名の旅行。」へ出掛けている間、佐藤は忙しい毎日を過ごしていた。
まずは、交通の便だ。
近所のバスは1時間に数本のみ。
これでは、お客様が不便と「送迎バス」を導入した。
送迎バスが、対応が出来ない場合でもと、タクシー会社とも提携をした。
役所の人に教えてもらった、農業・畜産業を営む個人経営の方とも苦労(何度も断られた)したが提携をした。
ホテルが汚いと印象が悪い。
清掃業者は1軒しかなかったので、アルバイトを数名、雇い入れることにし、自らが指導に当たった。
また、地元の人達とも交流を始め、観光案内所にも掲載されていない、いわゆる「穴場」を教えてもらい、実際に行ってみて確かめる。
…毎日、深夜までの仕事となった。
息抜きに、タクシーで30分、繁華街の、あるバーへ行った時。
マスターが店が暇で赤字だから、もう畳もうかと思っているとの話をしていたので、それでは私のホテルで働いてくれないか?と誘いを入れると、快く引き受けてくれた。
数日後、スタッフが視察から帰って来た。
楽しんできただけと言うスタッフもいれば、ひとりだけ、穴場情報や名産品などを「まじめに」調べて来てくれたスタッフがいた。
よくよく考えてみれば、このホテルには「副支配人」がいない。恐らく必要ないとの判断なのだろう、この問題は後回し。当面は私、ひとりで大丈夫だろう。そのうち、いいスタッフの中から推薦をすれば良いことだし。
スタッフには、疲れたろとさらに3日間の休暇を与え、休暇後はマナーの講師を呼んで、みっちりと勉強してもらうとする。
後は…料理をしてくれる人を探さなければ…
良い料理人は既に店を構えているか、良い施設で働いているものだ。
スタッフに色いろな店に食事に行ってもらい、リサーチをしてもらう。私も色々な店に顔を出す。
すると、視察旅行の際に真面目に調査してくれていたスタッフが、日本料理の修行を終え、店を構えようとしている人がいるとの情報を話してくれた!
すぐさま、その店に向かい、料理長に了解を得、その料理人と話をする。
最初はホテルの料理長との話に頭をかしげる料理人に、自分の店が出来るまででいいからと説得をして、数日後に了承の電話も頂いた。
これで、全ての準備が整った。
次にやることは客の反響、いわゆる感想である。
いくらこちらが、「いいでしょ?」と薦めても、客が納得しないのであれば、だめだと言う事。
―これが1番の肝だ。
そこで、「パイロットプラン」としょうし、「無料で宿泊してもらう、その代わりアンケートには必ず答えてもらう」と言う、思い切った行動に出る。
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