ボツになった原案006
こんにちは!
タイトルが006なのに、本文が0005なのは間違えではありません。
この話もあえなくボツ。実際に投稿した小説にもサードヴィレッジは登場しませんが、似たようなニュアンスの存在はあります。
う~ん、困ったこまった…。
***ここから本文***
JIPANG 0005 サード・ヴィレッジ
「おめでとうございます!斬撃さん、最速クリアです!」
パチパチパチと手をたたく俺。
「何だか、悟さんが先にいるってのはね。喜んでいいのやら・・・。複雑な気持ちですよ。」
斬撃さんは、何だか悔しそうだ。そうそう、こういう顔が見たかったのだよね。
「トップクリアされた斬撃さんには、プレゼントがあります!」
俺は、1枚のメダルを渡した。
「これは、最初にクリアした人だけが貰えるメダルか?」
「ええ、そうですよ!その為に私がここに来たのですから!」
斬撃さんは、震えたかと思うと、両手の拳を高々にあげ、ウオオオー!と雄叫びをあげた。
「こんなに嬉しい事はないですよ!私しか持っていないレアアイテム!」
斬撃さんはとても嬉しそうにしている。のだが
俺がここにいる目的は別にあるのだよ。
まだ奇声をあげている斬撃さんに、俺は近寄り、そして耳打ちをした。
「実は、私がここにいるのにはもう一つ、理由があるんですよ。」
斬撃さんは、急に真顔になって、ほほうと頷いた。
「見てください。このサード・ヴィレッジを。」
何もないのである。
「何もないですね。何でですか?」
「そこで、新たなクエスト発生です!」と俺は人差し指を立てた。
「新たなクエスト?何をするんですか?」斬撃さんはワクワクしている。
「セカンド・ヴィレッジに牧師・商人・料理人・鍛冶師の4人がいます。もちろん、NPCではありますが。」
「この4人の護衛をしながら、無事にここまで連れてくるのが新しいクエストになります!」
このタイプのクエストは、本来ならばパーティーで攻略するのが正当な手段。ソロプレーヤーの斬撃には不利なクエストである。
「もし、護衛対象の人物が死んだ場合は?」
「もちろん、セカンド・ヴィレッジに戻りますが、斬撃さんにはもう一つ、ペナルティがあります。」
「ペナルティ?」
「今、渡したメダルのはく奪です。」
「え!」斬撃は声を漏らした。せっかく掴んだレアアイテムが失われる可能性があるからだ。
「とは言っても、これだけじゃ、斬撃さんには何のメリットもないでしょう?」
「それは・・・そうですね。」
「実はこのクエストには、別のクエスト発生もあるんです。」
「何⁉本当ですか?」
「ええ、しかもそのクエストを〈ソロ〉でこなせば、更に手に入らないメダルの用意があります。」
・・・。斬撃さんの心は(メダルが欲しい欲望・メダルを失いたくない保身)から葛藤の時間になっている。
散々考えた挙句に出た答えは「やるぜ!」だった。
「チャレンジャーですね!ヒントになればいいのですが・・・。」
「なんでしょうか?」
「そのクエストは柔らかい頭を使いますからね。頑張ってください!」
「ああ、頑張るよ!でも、なんで牧師までいるんだ?」
「ええ、サード・ヴィレッジでも『ジョブチェンジするには牧師が必要』ですから。」
「ああ、分かったよ。じゃあ、行ってくる。」
斬撃さんはセカンド・ヴィレッジに戻って行った。
数日後、次のクリアした人達がやって来た。
彼らは、「パーティー」で剣・盾・弓・魔法使いとバランスが取れている。
俺は、斬撃さんとは違う「パーティーで最速クリア」の証として、メダルを代表者に渡した。
次にやって来たのは、30名位の大がかりなパーティーと言うか、もう「軍」だよね?
彼らには何もあげない。
クリアする冒険者の皆が「水~!」って、いうものの、この村には、何もない。井戸も掘るところから始めなくてはいけない状態。なので水はない。
「何とかしろ!」と突っかかってくる冒険者もいたが、水の管理もクエストの内ですよと、俺は目の前で、水を飲んだ。
クエストクリアしてくる冒険者にそれぞれ新しいクエストを伝えていたのだが、段々と面倒になり、クエスト内容を書いた立て看板を置いて俺は冒険者ギルドに戻って行った。
実はこのセカンド・ヴィレッジからサード・ヴィレッジにたどり着くクエストは斬撃さんが有利なクエストだったのだ。
モンスターの類は数が多いパーティーが有利ではあるが、このクエストはモンスターを討伐しても意味がない。逃げてもいいのだ。なので、一番身軽なソロプレイヤーの斬撃さんが有利。
さらに、道中には様々なトラップも仕掛けてあり、これも少人数であればあるほど有利になる仕掛けになっていたと言う話。
だから、斬撃さんがトップでクエストクリアしたのは、至極当然の結果だった。
さて、その斬撃さんはセカンド・ヴィレッジに帰る途中で考え込んでいた。
途中、すれ違う冒険者達から、もう攻略したんですか?ええ、そうなんです。と他愛もない挨拶をしながらの道中だった。
本来のゲームなら、ショートカットで好きな所にいけるのになぁ〜と言いながら。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?