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小説 本好きゆめの冒険譚 第六十四頁

 私は、現実世界にも干渉出来る…。

 それは、「本の世界」と同じ事が出来ると言う事。


 確かめる必要があった…

 学校…いつも通りの授業中…。

 ゆめは、パンと手を叩く。

 世界が止まった…。


 ゆめは、「女神バージョン」に変身をして、ゼウスを呼ぶことにした。

「お呼びでしょうか?ゆめ様。」

「ええ、実験をしたいから、付き合ってよ。」

 ゼウスを従え校庭へ向かう…。

「ゼウス、とりあえず、この学校、人を全部記録出来る?」

「お任せ下さい。ゆめ様!」

 ゼウスのページが開くと、文字が記される。


「それじゃ、行くわよ!アイギス!」

 鎧を纏った「黒龍」が召喚され出てきた。

「アイギス!私を乗せて飛ぶ事は出来る?」

 アイギスは、勿論と言わんばかりに首を縦に振る。

「ん〜、アイギスも話せれば良いのにね!」

「ゆめ様、変な想像は止めて下さい!」

 ゼウスの静止を余所に…。

「何でも、お申し付けを!我の偉大な主、ゆめ様!」

 アイギスが話しだした。

 いきなり話しだしたアイギスにびっくりしたゆめは、

「あなたは、話せるの?」

「ハッ!たった今、ゆめさまが我に力を授けて下さいました!」

「え?私は何もしてないけど?」

「今のゆめ様は「想像」を「創造」出来る力を持っています。なので、この黒龍は話す事が出来るようになりました。」

 ゼウスが、ゆめに説明をする。

「ゼウス、あなた物知りね。」

「私に「全知全能の神」と同じ名前を付けて頂いたお陰でございます。」

・・・成る程、だからあの時、お父さんが嫌がった訳だ。

「ところで、アイギス!質問なんだけど?」

「ハッ!何で御座いましょう!ゆめ様!」

「その言葉使い、何とかならないの?固いよ?私はもっと、友達の様に接してもらいたいのだけど?」

「そ、偉大なる我が主に向かって、その様な無礼は出来ませぬ!」

「じゃあ、とりあえず、その古臭い話し方はやめてくれない?せめてゼウス位の話し方をしてくれない?」

「ハッ、し、しかし、突然言われましても…」

 ゆめは、ゼウスをチラッと見て

「出来る?」

「私にお任せ下さい。ゆめ様!ご期待に添えるよう、しっかりと調教・・いえ、教育致します!」

「じゃあ、お願いね。」

「わ、我は何をされるのですか?」

「まっ、いいからいいから!」

「私を乗せて飛ぶことは出来る…炎のブレスなんかも、出来る?」

 アイギスは、困った顔をしながら

「申し訳御座いませぬ…我は「炎」など、吐けませぬ。」

「まぁまぁ、やってみてよ!」

「で、では…」

 アイギスは、思いっきり息を吸い、そして…強大な炎のブレスを吐いた!

「ギャーッ!」

 一番、驚いたのは「アイギス本人」である…今まで一度も炎など、吐いたことがないのだから。

「熱っち!や、火傷する!」

 慌てるアイギスに、

「何、言ってるの?やけどなんかしないわよ。」


「それにしてもよかった〜、ゼウスがいて…。」

 校舎が跡形もなく、消炭になっていた…。

 まもなく、ゼウスに元通りにしてもらったのだけど…。

 アイギスの実験やトレーニングは、「本の世界」でした方が良いようだ。

 それにしても、本当に「現実世界」で私の力が使えるなんて…。


 本当の確認はそこにあった。


 別に力が使えれば、どうのって言うのは無いのだけど、あくまで、好奇心で、やってみただけだ…。

 学校が終わっての帰り道・・・

 もうひとつ、現実世界で確認したい事があった。

 それは、ゼウスが私の中にいた状態で、破壊・再生が出来るかと言う事だ。

 茂みに入り、他の人からは見えない場所に隠れる様に進む。鬱蒼と茂った「ほとんど森」の中を歩き、少し広い場所に出る。

 そこには「大きな岩」が、あった。

 今度は、時間を止めない状況下で出来るかという実験も兼ねている。誰かに見られてはマズイのだけど…。

 周りに人気が居ないことを確認して、手を天に向ける…黒雲が渦巻き、ゆめが腕を振り下ろすと稲妻が走った!

「大きな岩」は跡形も無く砕け散っていた。

 今度は、再生。

 これはイメージするだけで、簡単に出来た。本当にあっけなかったけど…。

 その日の夜、家でいつものようにテレビを見てると、緊急のニュースが流れていた。

 その内容は「突然現れた渦巻く黒雲、神の雷槌!」。

 パパは私を見ていたけど、「知らない」って、誤魔化した。

 まっ、「現実世界」で使う事はないけど、確認できたから、いいよね!ちょっとぐらい。

――――――――――――――――――――――――――――

「何もない空間」。

「な、何をやっとるんじゃ!ゆめは!」

 ゼウスが雄叫びに似た声で叫ぶと

「あら、ゆめちゃん、カッコいい♡」

「バカモン!これを悪戯半分でやっとると、いつか世界を滅ぼしかねんぞ!」

「その為に「正義の加護」を受けさせたんでしょ?大丈夫よゆめは。」

「いや、説教が必要じゃ!」

「あなたに、そんな度胸ある?」

「・・・ないです。ゆめに嫌われたくないもん。」


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