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ボツになった原案003

こんにちは!
タイトルが003なのに、本文では0004になっているのは、事故ではありません。
事故と言えば、内容が昨日の話と前後してしまっているところですね。

***ここから本文***

0004 OFFT オフトーThe Old Friend Farm a TOKYO

 金田悟。年齢にして15歳だった少年。

「だった」と言うのは、アンドロイドになった時の年齢で、今となっては何歳になったのかも数えていない。
 年齢が若い=元・オフトの住民だ。

 彼は、ある部隊の副総長をしていた。
 戦争の際に不意打ちをされ、やむなく降参をしたという経緯がある。

 総長の名前は山本司。悟よりひとつ年上の16歳だった。
 総長は要注意人物とされ、記憶を消されID(戸籍)も変えられ、違う人物として生きているのだろうと思う。だから、今会ったとしても、お互いに誰かわからないだろう。

 オフトには、様々な人間がいた。全部で1500人位。

 中には小学生の兵士もいたし、元々は大企業の社長令嬢もいた。
 その中の大半が、記憶を消されてしまった。

 元・オフトの面々は何をやっているのかと言えば、刑務所に入らない代わりに、現実社会でブレイン・メーカー達の栄養剤の補充やバッテリーの点検などの仕事を半ば強制的にさせられている。

no brain 能(脳)無しの扱いを受けているが、その作業もすぐに終わるので、こうやって自由の国JIPANGにログインしている訳だ。

 金田少年は今、何故か東京のど真ん中にある奈良の大仏の目の前にある、東京タワーの前にいる。
 

***

「よお、キンタ!」
「久しぶり!キンタ副総長!」
「みんな、元気にしてた⁉キンタ君も!」

・・・俺の名前は、カネダであって、キンタではない。
 みんなが、親しみを持って、俺の事を「キンタ」と呼ぶ。

 ちなみに、他の人間が理想の美男・美女のアバターを選んでいるが、オフトにいたメンバーは全員人間だった頃と同じアバターにしている。それぞれの中に『人間であること』にこだわりがあるのだ。

 皆は時間通りにやって来た。現在は300名位の「生存者」である。
 実社会ではそれぞれが、スケルトンの外観の為、誰かわからない。こうしてJIPANGの中でしか会う事が出来ないのだ。

 さらに、ゲーム内でも『元・オフト』と言うだけで、最低賃金のしごとにしかありつけず、差別を受けた結果、着ている服まで貧相な者ばかりである。

「こうやって、皆を集めたって事は、何かやるつもりだな?」
 俺と同じく副総長をしていた河野慎太郎が興味津々に聞いてきた。

「ああ、ここにオフトを作ろうと思う。」
 皆にどよめきの声が走る。
 進んで賛成と言う者もいれば、もう、怖い思いはしたくないと言う者もいる。

「オフトと言っても、真っ当な組織・運営をするつもりだよ。10億円って、払えないからね。」
 全員に笑い声が聞こえた。皆は戦争の続きをするんだろうと思っていたんだと思う。

「俺は、納得いかないな!」
 一人の少年が口走った。名前は町田康太。

「真っ当と言っても、仕返しはする。この街にいる大人達から金と名誉を奪ってやるのさ!」
 俺がそう告げると康太は、そういう事ならと賛成をしてくれた。

「で?何から始めるんだ?」
 慎太郎が早く頂戴と俺の考えを聞きたがってる。

「簡単な事さ。通報だよ。一件につき一万円もらえるからな。」
「はぁ?通報?なんだそれ?もっと派手に行こうぜ!」

「まぁまぁ、俺の考えを聞けっての?俺達は金がないだろう?まずは金を稼がなくてはならない。そのためには、まず信用してもらう事から始めるんだ。50万があれば運営に掛け合って新しい事業が出来るらしいからそれを目標にする。」

 慎太郎は不満そうな顔をしているが、俺の話は筋が通っているので、反論が出来ないようだ。

「それだけか?」
 康太は勘がいい奴だ。俺の考えを見抜いているかもしれないな。

「事業もやるつもりだ。あらゆる商い!それらを売って、金にする!」

「待てよ!農業・工業は経験あるから出来るけど、商業はやったことがないぞ!」
 慎太郎始め多くのメンバーの顔に不安な表情が出ているのがわかる。

「農業・工業は腕っぷしに自信がある奴だけで構わない。事故で死んで強制ログアウトも嫌だしな。それに専門分野なら知識をインストールすれば済む話だろ?」
「それなら、俺は工業をやるぜ!」
 そう言って来たのは寺岡三澄。人間だった頃から腕力自慢の奴だった。

「はいはーい!私はウェイトレスをやります!」
 どんな時でも明るく振る舞う女の子は下城優香。この笑顔に皆、救われたんだよな。

「そんな感じで、仕事をして金を稼いで、近くに土地を買う。経費は運営からの借金になるけど。この街よりも魅力があれば必ず、俺らの街にに流れてくるはずだ!」

「通報の役は小学生チームに任せるよ。どんな小さな事でも、しっかりと通報するんだよ。」
「わかった!お兄ちゃん!」

 小学生隊は下は小学1年生、上は小学5年生。この子達もこのまま、大きくならないんだよな・・・。

 俺は、じんわりと込み上げる物を我慢する。
「それじゃ、頼んだよ。必ず、3人一組で見回る事。約束してくれよな。」
 そう言った。
「他にはすることはないのか?」
 慎太郎が確認をしてくる。コイツもかなり乗り気になって来たようだ。

「工業も・・と言っても、材料自体を作らないといけないし、最初は木彫りのアクセサリーなどを作っての販売かな?必要なものはどこかで調達してもらってからになるけどな~。」

「おいおい、俺達は便利屋じゃねーぞ!」
 三澄はお怒りモード?いや、顔は笑ってるな。

「おっと?違ったっけ?」
 俺はわざとおどけて見せた。

「よし!オフト、再建だ!」

俺達はオフト再建を祈って皆で握りこぶしを高らかに上げた。


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