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ボツになった原案009

こんにちは!
やっと続きです!
忘れてしまった方は「ボツになった原案007」を読んでいただければ話が繋がります。

***ここから本文***

0007 サブクエスト「竜の涙」①

 この風景にはそぐわないピンク色のドレスを着た少女が倒れていた。

 おかしい。その場所はさっき、熊が出てきた所だぞ。その時はこの子はいなかった。NPCか。それにしてもこのタイミングで現れるNPCとは?これが悟さんが言ってた別のクエストなのか?

 とりあえず、この子を起こして話を聞かなければ、何も出来ない。

「おい!大丈夫か!しっかりしろ!」俺は大声で声を掛けながら身体を揺さぶった。
 少女は気が付いたのか、うっすらと目を開けると
「キャー!来ないで!」と騒ぎ出した。
「大丈夫だ!もう、怖くない怖くない!」
 少女は落ち着きを取り戻したようだ。

「どうして、こんな所にいるんだい?」
 そう尋ねると

『クエスト 竜の涙 受諾しますか? YES NO』と表示された。

 やはり、クエストだったか。もちろん、『YES』だ。
 その少女が言うには、母親が不治の病になり、どんな病気にも効く水が沸く泉に水を取りに洞窟に行こうとしたのだが、魔物だらけの為に近づく事すら出来ないのだと言う。

「ふん。定番のクエストだな。」俺は笑いを堪えられなかった。

「騎士様、どうか力をかしてくれませんか?」少女は神に祈るかの如く俺にすがる。
「お嬢ちゃん、もう安心しても構わない!私がお母さんを助けてあげよう!そして、メダルゲットだ!」

『これより、保護対象者と別行動が可能になります。』アナウンスが聞こえる。
 ありがたい。これで自由に動ける!

「皆、少しここで待っていてくれ。」
「私も一緒に参ります!」
 一緒に行くと言ってきたのは、牧師のNPCだ。魔物退治には不利な職業、正直に言えば足手まといなので、残るようにと指示を出した。

 少女に連れられてやって来た洞窟は、うっそうとした森の中にあり、大きな口を開けて待っているようだった。

「あの中に泉があるんです!騎士様、お願い!お母さんを助けて!」
「ああ!任せろ!」俺は双剣を手にした。

 洞窟の中は外よりもひんやりとして、暗い闇の中のようだった。

 足元に何かが落ちている。

 よく見ると『松明』と表示されている。

『アイテム松明が使用可能となりました。』

 この松明はものすごく明るい。洞窟の中が昼間のように見える。運営ももう少し細かい所まで作りこんでもらいたい物だな。今度、悟さんに言っておこう。

 松明の炎で小さな魔物は避けて行く。
 俺達は洞窟の中を静かに、そしてゆっくりと歩いて行った。

 途中で休息を取り、何故か少女が出してきたサンドを食べることになった。

「お嬢ちゃんはこの近くに住んでるの?」
「・・・・。」
 やっぱりNPCだな。AIが発達しても、必要以上の事は何もしゃべらない。

「お母さんは、どんな病気なの?」答えるはずないか・・・。
「お母さんは呪いにかけられているのです。」
 しゃ、しゃべった!他は何もしゃべらないかな?
「お嬢ちゃんの名前は?」
「・・・・。」これは、話さないか。
「どんな呪いなの?」
「とても、恐ろしい、誰にもとけない呪いなのだそうです。」

 ちょっと、楽しくなってきたな。
「お母さんの名前は?」
「お母さんの名前はヘレンと言います。」
「お嬢ちゃんの名前は?」
「私はアリス。」お!質問のパターンで答えたり答えなかったりするのか!

「アリスはいくつなの?」
「・・・・。」これは無理かー!

「そろそろ、行こうか。アリス!」俺は手を差し伸べた。
「うん。」とNPCのアリスが俺の手を握ってくれた事に俺は感動せずにいられない。

 休憩している時から、気にはなっていた。
 松明の炎が小さくなっているのだ。
『持続可能時間30分』と表示されている。これは急がねばまずい事になる。

 途中で、大きなムカデの化け物に出くわした。
「ダブルスラッシュ!」俺の技の一つ。離れた所からでも、風の刃を飛ばすことが出来る。
 当然、ムカデは真っ二つになり、ドロップアイテムが落ちていた。
「何々『百足の甲羅』?武器素材だな?いや、防具か?」

 次に出てきたのは「大きなコウモリ」だった。
 発する音で耳がキンキン響くけど、耐えられない範囲ではない!
「フライヤー!」今度は双剣を平行に縦に振り落す。
 すると、空気の刃は音速を超え、コウモリ目掛けて走って行く。
「今度のドロップアイテムは、と『蝙蝠の羽』多分、防具素材だな。」

「騎士様、もうすぐで泉です!」とアリスが走り出していく!
「馬鹿!止まれ!」俺はアリスの腕を引っ張った。
「騎士様、何をされるのですか!」
「黙っていろ。」俺は、ゆっくりと双剣を抜く。

 そこにいたのはクエスト名にもなっている「竜」の姿だった。

 洞窟内にいる竜は動きが鈍い!ブレスを吐くこと以外に何もできないはずだ!
 俺は、まずはどれくらい硬いものかと鱗に剣を立てた。
 ギャァー!竜の悲鳴と共に剣はすんなりと入る。
「これなら、少しずつ、削って行けば勝てる!」

 俺は、右、左、上下と翻弄しながら剣を刺し、肉を切って行く。
 この竜、ブレスを吐かない?何故だ?肉も柔らかすぎる!

 竜はその場に沈み、ドロップアイテムが・・・ない!

「アリス、ドロップアイテムがないんだけど?」
 俺は振り向いた時に目を見開いた。

 さっきまでの少女が竜になったのだから・・・。


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