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第Ⅱ部 勇者パーティ編 第14章 魔法学院卒業編 8.卒業 

 いよいよ、卒業式だ。3年間だったが、あっという間に過ぎたようだ。最初の目的は、余り達成できていないが、良き仲間ができたので、楽しい学院生活だった。

 卒業後の進路は、それぞれ異なってしまったが、まだ、パーティーとしては、名前を残している。いつか、また、集まって、冒険に出かけることができるようにって、思っている。

 魔法学院の他の生徒は、兵士に成る者や官吏に成る者や色々だ。でも、貴族は、そのまま、家に戻るだけのようだ。もともと、家業があり、それを継ぐのが普通の様だ。一部だが、卒業後に直ぐに、結婚する者もいる。

 卒業式には、国王も出席するようだ。そして、卒業生の代表として、主席が挨拶をする。主席は、どうも、クルドのようだ。私達と一緒に入学してきたので、貴族ではないと思っていたが、どうやら、違うようだ。よく分からないが、何かの事情で、貴族の地位を隠していたようだ。

 壇上から、クルドが、私に手を振っている。私は、少し恥ずかしいので、小さく手を振った。

 クルドの話が終わると、国王が、壇上に上がり、皆を祝福してくれた。

 卒業式が終わって、もう一度、食堂で、集まることにした。これが、キリのパーティーの最後の集会になるかもしれない。

 「キリ、卒業おめでとう」

 「ミユ、おめでとう」

 私は、ミユと握手を交わした。そして、そのまま、食堂に入って行った。

 「キリ、こっちだよ」

 フヨウが、手を振って、私達を呼んでいる。その隣には、エルミアが座っていた。

 「キリ、ミユ、卒業おめでとう」

 フヨウが、声を掛けてきた。

 「フヨウ、エルミア、卒業おめでとう」

 「ありがとう。キリも、ミユも、おめでとう」
 
 エルミアとも、これで、お別れだ。これで、最後になるって、不思議な気分だった。

 「ミユは、卒業後どうするの?」

 エルミアが、ミユに尋ねた。

 「私は、キリと一緒に商売を始めるわ」

 「えっ、商人になるの?」

 「そうよ。キリと一緒よ」

 「キリが、商人をするって、それは、分かって居たけど、どうして、ミユも商人になるの?」

 「だって、キリと一緒に居たいからよ」

 「なんだ。キリと一緒にいるだけ?」

 「そんなことないわ。商売も、やっていくわよ」

 「そうよ。私は、ミユを頼りにしているの」

 私は、エルミアに、ミユの能力をもっと、知って欲しかった。

 「ところで、エルミアは、魔法学院に残れることになったの?」

 「えぇ、残れるようになったわ。でも、最初の1年は、補助教師になるらしいの。それで、能力を認められてから、正式に採用されるということなの」

 「そうか。大変だね。それで、どの先生の補助に入るの?」

 「それが、まだ、決まっていないの。だから、今は、不安なの」

 「そうだ。マルグリット先生に相談してみる?」

 「いいの? キリ」

 「いいよ。話を聞いて貰うだけでも、不安が無くなると思うよ」

 「分かったわ。お願いね」

 私は、エルミアを連れて、マルグリット先生の部屋を尋ねた。

 「コン、コン、コン」

 「はい、どなた?」

 「キリとエルミアです」

 「どうぞ、入って来て」

 「はい、失礼します」

 私達は、部屋に入り、マルグリット先生の机の前に行った。今日は、卒業式だというのに、何か、仕事を忙しそうにしている。

 「先生、忙しそうですが、今、いいですか?」

 「キリ、心配しないで、大丈夫です」

 「それでは、少し、話を聞いて貰っていいですか?」

 「はい」

 私達は、エルミアの抱えている不安について、マルグリット先生に話した。すると、意外な返事が返って来た。

 「エルミアは、誰がいいの?」

 「えっ、希望が言えるのですか?」

 「いいわよ。希望通りに出来るかどうかは、相手の先生に訊かないとだめだけど」
 
 「それなら、私は、マルグリット先生がいいです。どうですか?」

 「いいわよ。私でよかったら、補助に入ってくれる?」

 「はい、喜んで。お願いします」

 何と、希望を言っても、良かったんだ。折角、魔法学院に残って、仕事をして貰うのに、厭な思いをさせたくないということらしい。だから、エルミアの意向を確認するまで、担当の教師が発表されていなかったようだ。

 「キリ、ありがとう。不安で、寝れなかったの」

 「これで、ぐっすりと寝れるね。エルミア、頑張ってね」

 「はい。頑張ります」

 私達は、また、食堂に戻った。食堂には、ミユとフヨウが待って居てくれた。2人に結果を報告した。

 「エルミア、よかったね」

 フヨウが、エルミアに声を掛けた。ミユも嬉しそうに頷いている。

 「フヨウは、冒険者になるって聞いたけど、どこかのパーティーに入るの?」

 「いいや、今は、一人で、やっていくつもりだよ」

 「危険なことは、ないの?」

 「僕は、キリとは違うよ。無理は、しないよ」

 「あら、私も、無理はしないわよ」

 「そうか。はたから見ているとそうは、思えないけどね。まあ、キリが、そういうのなら、いいけど」

 「フヨウは、私の事を信用していないの?」

 「信用は、しているけど、無謀な所があると思っているよ」

 「そうかなぁ?」

 「でも、今は、ミユが一緒に居るから、安心しているよ」

 「ミユのお陰?」

 「そうだよ。ミユを大事にしてあげてね」

 「もちろんよ。ミユと私は、仲良しなの。ねえ、ミユ」

 「私は、キリが大好きです」

 「あら、ミユに告白されたよ」

 フヨウが、嬉しそうに、私とミユの顔を見つめている。

 「私も、ミユが大好き」

 これは、本当だ。ミユの事を知ってから、離れられなくなっている。これからも、仲良くしたい。


 長い間、読んで貰えてうれしかったです。
 魔法学院の卒業を区切りに完結にすることにしました。
 今後とも、よろしくお願いいたします。


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