第Ⅱ部 勇者パーティ編 第13章 Sクラスパーティー編 1.魔法学院での新たな生活
私は、魔法学院の生活に戻る事にした。魔大陸のマナ濃度はどんどん低下しており、魔物が溢れ出す危険は回避できたと思われるからだ。
それに、キリとしてパーティーをSランクにランクアップしたい。その為に、魔法学院での生活を中心にしていくことにした。
私とパープルは、食堂に向かった。いつものように、パーティーのメンバーと合流するためだ。食堂に入ると、いつも通り、フヨウとエルミアとミユが並んで、座っていた。私達は、その前に座ることにした。少し、お腹もすいていたので、トレーに料理を盛ってから、席に着いた。隣に座ったパープルは、すぐさま、肉に食らいついていた。
「やあ、久しぶり」
「キリも元気そうね」
ミユが、返事をしてくれた。いつもながら、気遣いができる。よく見ると、可愛い顔をしている。それに、何故か、肌が白い。
「ミユも、元気そうね」
最初にミユに会ったときは、余り話ができなくて、人付き合いが嫌いなのかと思っていたけど、最近は、気楽に話が出来る様になった気がする。それに、正式に入学が出来たし、私達と同時に卒業できそうなので、とても明るくなった。
「キリ、また、冒険者ギルドの依頼を受けたいのだけど、いいかな?」
フヨウが、私に尋ねて来た。フヨウには、パーティーが受ける依頼について、任せていた。特に、冒険者ギルドの依頼を調べて貰っていた。
「いいわよ。フヨウが決めたのなら、反対はしないわ」
「よかった。この週末の時に、依頼をこなそうと思っているんだ」
「どんな、依頼?」
私は、フヨウに、詳しい依頼内容を尋ねた。エルミアも、ミユも、詳しい話は聞いていない様だ。
「実は、公には出来ない事なんだ。それをしっかり、理解してね」
「「はい」」
「ある貴族の令嬢が誘拐されたんだ。それで、身代金を要求されている」
「それで、令嬢を助けるのね」
エルミアが、はやる気持ちを抑えられずに、口を挟んだ。
「そうなんだ。ただ、冒険者に頼むな、と言われている。だから、身代金を持っていくのは、一人だけで、しかも、幼い女の子に限られるんだ」
「この中で、一番幼いのは、誰?」
私は、皆に訊いた。しかし、皆は、既に、誰が、一番幼いか、知っているようだ。お互いに顔を見合わせているだけで、何も言わない。
「ねえ、黙っていては、分からないわ」
私一人、気が付いていないようだ。
「「キリ」」
「何?」
「だから、キリだよ」
フヨウが、言い放った。
「えっ、私?」
「そうだよ。他に誰もいないよ」
自分では、エルミアが、一番幼いと思っていた。フヨウは、落ち着いているし、ミユは、気が付くし、だから、自分以外では、エルミアだと思っていた。
「ねえ、エルミア、貴方いくつなの?」
「私は、16才よ。キリは?」
「多分、15才ね。でも、はっきり、覚えていないの」
「そうか、でも、見た目では、14才と言っても大丈夫だよ」
「えー、そんなに?」
「そうだよ。私だけじゃないと思うよ。そう思っているのは」
「ねえ、ミユは、どう思っているの?」
「そうね。私より下だと思っています。私が、15才なので、それより、下かな?」
「えっ、ミユって、まだ、15才なの?」
「そうですよ。何歳だと思っていたの?」
私は、返事が出来なくなってしまった。
「よくわかんない」
「まあ、いいわ」
ミユも、呆れたようだった。フヨウが、話し始めた。
「それで、キリに身代金を持って行って貰いたいんだ。その時に、令嬢を助け出した後に、盗賊を倒すことになっている」
「いいわ。その役、やるわ」
私達は、週末に冒険者ギルドに向かった。魔法学院からは、転移用魔法陣で、移動した。
「ギルド長は、いますか?」
フヨウが、冒険者ギルドの受付に訊いた。
「パーティーキリですか?」
「はい、そうです」
「それでは、私に付いて来て下さい」
私達は、いつものギルド長の部屋ではなく、受付の奥の見たことがない部屋に案内された。どうも、秘密の部屋になっているようだ。
「こちらです」
私達は、指示された部屋に入って行った。その部屋には、ギルド長と依頼者がソファに座っていた。
「失礼します。冒険者パーティーのキリです」
「すまないね。こちらに座ってくれ」
ギルド長がソファに座るように手招きをした。私達は、ギルド長と依頼者の前に並んで座った。
「それでは、打ち合わせを始めるね」
ギルド長は、身代金を持っていく場所と、誘拐された令嬢の名前と似顔絵を見せてくれた。それと、身代金がはいった袋をフヨウに渡した。
「それで、誰が、持っていくのかな」
「私です」
「そうか、君なら、大丈夫だ。でも、危険は承知しているね」
「はい。私、強いので」
「それなら、任せるよ」
ギルド長は、私の事をあまりよく知らないようだ。これでも、結構有名になったと思っていたけど、だめだな。多分、勇者がいるパーティーだったから、私の働きは、目立たなかったのかも。
私達は、冒険者ギルドを出て、指定された場所に急いだ。時間は、まだあるが、事前に場所とその周辺を確認しておきたかった。そのために、少しでも早く指定された場所に着きたかった。
目的地点に到着した。直ぐに私は、スキル探索で、周りの様子を調べた。盗賊らしき者が6人いるのが分かった。だが、肝心の令嬢は、見つからなかった。
遠方から、見ているかもしれないので、範囲を広げて、もう一度、スキル探索を使った。しかし、盗賊らしき者は、他にいなかった。それに、令嬢も見つからなかった。
私は、スキル探索の結果を皆に報告した。フヨウが、私に声を掛けて来た。
「仕方がないね。このまま行ってくれる?」
「いいわ。行って来るね」
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