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第Ⅱ部 勇者パーティ編 第13章 Sクラスパーティー編 2.ギルド長の依頼

 私は、ギルド長の依頼を引き受けて、盗賊に身代金を渡す役を引き受けた。指定された場所に行くと、盗賊が5人いたが、令嬢は、見当たらなかった。

 「身代金を持って来たわ」

 「よし、そこに置いて、帰れ!」

 「令嬢は、どこ? 連れて帰るわ」

 私は、スキル鑑定で、盗賊を一人ずつ、調べて行った。すると、一人の首に神具がぶら下っているのが分かった。どうも、この神具で、ここの様子を見ているようだ。

 「ここにはいない。身代金が指定された額入っているか、調べる。それから、帰す」

 「わかったわ。それなら、ここで、袋を開けるね」

 私は、その場に、袋から、身代金を出して、地面にばら撒いた。

 「おい、何をするんだ!」

 「調べなさいよ」

 5人の盗賊は渋々、お金を調べ始めた。そして、指定額が入っていたことを確認した。

 「どう? 入っていたでしょ」

 「あぁ、確かに、入っていた」

 「それなら、令嬢を帰してよ」

 「分かった。だが、此処にはいない」

 「約束と違うわ」

 「必ず帰す」

 私は、素早く、身代金の入った袋を取り上げて、5人の盗賊から、離れた。

 「おい、何をする」

 「この身代金は、令嬢と引き換えよ」

 「おい、どうしよう」

 「この娘を取り押さえろ」

 5人の盗賊が一斉に襲ってきた。私は、土魔法で、盗賊の足を固めて、拘束した。そして、次に、隠れている一人の盗賊を同じように土魔法で、拘束し、更に、声を出せないように口も、土魔法で、覆った。

 「首から下げている物を見せてね」

 私は、一人の盗賊に近づいて、首から下げている神具を調べた。確かに、音声を伝えるための魔法陣が描かれていた。そこで、私は、その魔方陣に細工して、相手の映像が見える様にした。

 「ふーん、そこに令嬢を捕らえているのね。でも、そこって、お城のようね」

 次に、私は、先ほどの魔法陣を更に加工して、転移用の魔法陣を接続した。これで、相手の所に行くことが出来る。そして、こちらの音声が聞こえないようにしてから、フヨウ達に声を掛けた。

 「こっちに来て、盗賊を拘束しておいてね。それから、身代金も保管しておいて」

 「キリは、どうするの?」

 「令嬢がいる所に、飛んでいくよ。パープルは、一緒に行く?」

 「うん、行くよ」

 私は、パープルに腰を抱いて貰い、隠密魔法を掛けて、二人の姿を消した。それから、転移魔法で、こちらをのぞき見していた人達がいる城の中に移動した。

 私は、思念伝達で、パープルに連絡を取った。

 「この部屋の出入口に立って、誰も入れないようにしてね」

 「うん。分かった」

 私は、スキル探索で、部屋の中を調べた。すると、部屋の隅に目的の令嬢らしき少女がいた。それと、兵士達が10人いて、主人らしき貴族を取り囲んでいた。

 主人らしき者は、神具から聞こえるはずの音を聞こうとしていた。しかし、何の音も聞こえてこなかった。

 「おい、誰か、この神具を調べてくれ。音が聞こえなくなった」

 私は、主人らしき貴族の周りに集まった兵士を除き、部屋の中の兵士を倒して行った。そして、素早く、土魔法で、拘束した。

 残りは貴族と兵士3名のみだ。部屋の中が薄暗かったので、光魔法で、照らして、隅々まではっきり見えるようにした。

 そして、隅に拘束されている少女の傍に行き、名前を尋ねた。確かに、探していた令嬢だ。このまま、連れて帰るだけでいいのだが、首謀者の貴族も連れて帰ることにした。

 私は、残っている兵士を倒してから、貴族の前で、隠密魔法を切って、姿を現した。

 「お前は、何処から現れた」

 「どこからでもいいよ。お前が首謀者か?」

 「それなら、どうする」

 「一緒に、来て貰うよ」

 私は、貴族の身体を闇魔法で創った結界で覆い、外界から遮断した。そして、少女にも同じように、闇魔法で創った結界で覆い、外界から遮断した。

 「パープル、帰るよ」

 「うん」

 パープルは、素早く、少女と貴族を抱えて、私の傍に遣って来た。私は、パープルを抱いて、転移魔法で、冒険者ギルドの近くに移動した。

 私は、パープルに2人を抱えて貰いながら、冒険者ギルドの中に入って行った。

 「すみません。ギルド長に用事があるのですが」

 「あぁ、先ほどのキリさんね。こっちに来てください」

 私は、受付の女性に案内されて、ギルド長と依頼主がいる部屋に入って行った。

 続いて、パープルが2人を抱えて、部屋に入った。私は、2人の結界を取り除いた。

 「この少女で、良かったですか?」

 依頼主は、私が声を掛ける前に、少女の所に走って行った。

 「はい、この子です。間違いありませ。ありがとうございました」

 ギルド長が、私に尋ねた。

 「この貴族は、誰だ?」

 「この人が首謀者です。盗賊は、フヨウ達が捕らえています」

 「捕らえた盗賊を連れて来て貰えるか?」

 「いいですよ」

 私は、思念伝達でミユに連絡をした。

 「冒険者ギルドに6人の盗賊を連れて来てくれる」

 「はい」

 「ところで、ミユは、転移魔法用の神具は持っているの」

 「はい、持っています」

 「それじゃ、それを使ってね」

 「はい、直ぐに行きます」

 暫くして、フヨウ達と盗賊が冒険者ギルドに入って来た。盗賊は、冒険者ギルドの従業員に牢屋に放り込まれた。

 「キリ、お待たせ」

 ギルド長がいる部屋に、フヨウ達が入って来た。そして、身代金を依頼主に返した。

 「今回は、ご苦労様。後は、私の方で処理しておくよ」

 後になって分かったことだが、例の首謀者の貴族は、令嬢に結婚を申し込んで、断られた腹いせに誘拐したようだ。
 
 まあ、無事に解決して良かった。でも、男女の仲って、複雑だわ。ちょっとしたことで、拗れてしまう。私も、気をつけないとね。

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