北の伏魔殿 ケースⅠ-⑩

○仕事のポイントがずれていて、自己弁護しかしない職員

 B主査の仕事に対する考え方のポイントがずれていることは、これまでの対応ではっきりとしてきた。私は、採用されて初めて担当した業務は労働関係だった。当時、女性の労働環境は、現在よりも男女差別が激しく、優秀な女性がそれなりにふさわしい処遇がなされておらず、それらを啓蒙することが仕事のひとつだった。また、私の周囲の女性は親切で優秀な女性が多く、個人的にも彼女らが男性と同等に昇進昇格すべきと思ってきたが、B主査始め、この課で関わった3人の女性を見ていると、一律にそういう処遇をすることが危うく、特に能力も見定めずに単に女性役職者を増やすのではなく、それなりの経験を積ませること必要なのではないかと痛感した。
 もっとも、能力という点では、M係長のように男性でも疑問符がつく職員もいることにはいるので、結局、行き着くところは人事制度の根幹なのかもしれない。

 11月と整理した出張について、B主査が急に懇願調で「出張に行ってほしいんですけど」と何回か言うようになった。おそらく、私に気を使って「早く出張にいったほうがいい」と言ってくれた課長や課長補佐から、「どうしてまだ私が出張に行っていないのか」、聞かれたせいだろう。

 しかし、私が行かないのは、いや、行けないのは受け入れ先の現地事務所が忙しいと言うからであって、B主査が「11月にしろ」と言ったからではない。本庁の課長の意思より、自分のほうが上だとでも思っているのだろうか。現地事務所は、私が「出張に不満で不足もしない予算を不足すると言うような人間」だと思っているのに呼ぶはずもない。まして、自分の都合しか考えないM主査のことであれば、「忙しいといったでしょ」と言うに決まっており、私から4回目の出張の話をするつもりはない。

 

 B主査は、私が出張に行くと言わないので、課の私の昔からの知り合いの係長を使って行かせるように仕向けようとしたが、私の意思で行けるものではないことがまだ理解できていない。彼女がやるべきことは、彼女が私に責任転嫁し、その原因が不正を働いていたことにあることを現地事務所に説明してからのことであろう。

 そうするうちに、ラインの政令市から出向してきた課長補佐から「出張に行きたくないのか」と聞かれた。「まだ行かないのか」ではないところで、彼女が「私が早く行けと言っているのに行かないんです」と自己弁護していることが容易に推測できる。

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