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発達障害の特殊な感覚

はじめに

こんにちは。mojoで一緒に活動している産業医の木村です。
そろそろ梅雨が近づいてきておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
毎回、前述が子供のネタで申し訳ないのですが、今回も娘から学んだ事。
私は夜、全ての家事をやり終えて、ほっと一息。
テレビも消し、照明も落とし、パソコンとスマホ、お気に入りのブランケットにくるまりながらお酒を飲みながら動画を見る時間が至福です。

ちょうど、まだ起きていた娘に、
”ねぇ何かおすすめのメイクの動画ない?”
(そう!私、この頃ようやく、メイクや美容に目覚めたのです。このきっかけについてはまた後日、、、)
とYoutubeのアプリを開いてわたしたら、
”ママ、今はほとんどTictokだよ。Youtubeなんて時間がかかってタイパ悪い”と驚きのコメントが。。。

私にとってはYoutube動画ですらついていくの大変なのに、Tictokとは。。。
そして”肝心のTicTok”を開いてみると、出るは出るはメイク動画が。
結果、ポイントを絞れないまま私は酔い潰れてしまい、むくみとともに目覚めたのでした。

しかし、冷静に考えても、
こんな量の情報量に10歳の時点で晒されているかと思うと、彼ら、彼女らの情報処理能力がどうなっているのか改めて興味が湧きます。

さて、前回は人間の3大欲求の一つ!
食欲×発達障害という事で、たくさんの方に記事を読んでいただけたようで嬉しいです!!

バズった後の記事が当たらないのは寒い。。。でも毎週のノルマなので書かねばなぬ。の葛藤の中、今回の記事とさせていただきますので、どうぞ、皆様お手柔らかにお願いいたします。

発達障害と特殊な感覚

今回は”発達障害とフワフワとモコモコ”です

感覚の特異性から生じるストレスや生きづらさを和らげるためか、発達障害者は特定の感覚刺激を好み、強い執着を見せます。

モノや限度にもよりますが、日頃からストレスを抱えて生活する発達障害の子ども・人が安心できる感覚刺激を知っておくことは、問題行動やストレスの軽減にも役立ちます。

ふわふわのもこもこが大好き

自閉スペクトラム症・ASDと診断された方でこのような方を知っています。

子どもの頃から大人になるまで、ウール系のふわふわした肌ざわりの毛布と抱き枕が欠かせません。
幼稚園に通っていた時も、お気に入りのぬいぐるみを肌身離さず持って過ごしました。
秋冬を好む理由は、柔らかくて温かい毛布や衣服に包まれる心地良さを味わえるからです。
夏はさすがに暑いので毛布は使えませんが、代わりにウールの抱き枕を傍におくことで安眠できています。
幼少期から中学校時代までは眠りが浅く、悪夢にうなされることが多かったです。
しかし、毛布をかぶって眠れる冬や、夏でも抱き枕を使うようなって以来、ほぼスッキリ安眠できる夜が増えていました。

自閉スペクトラム症の人は感覚の鈍さが優位ですが、発達障害には触覚過敏のため抱っこや服の素材・タグを嫌がる方が多いです。

どんな感覚を好むのかは人それぞれだと思いますが、多くの発達障害の子ども・人は、ふわふわとした触り心地の良いものをよく好みます。
人と肌で触れ合い、抱き締め合うことが叶わない分、柔らかくて温かく安心できる触覚刺激に執着すると考えます。

触覚過敏に悩まされていた自閉スペクトラム症のドナ・ウィリアムズさんや、テンプル・グランディンさんも、自分の感覚を調整し、安らぎを与えてくれるツールとして、柔らかい毛布やぬいぐるみを好みました。

『光とともに…~自閉症児を抱えて~』では、光が女子生徒の髪を触ってしまうのを防ぐために、彼の好きなふわふわ素材のマスコットを常に持たせます。
マスコットに触っておくことで、気を紛らわすのに成功します。

光とともに~自閉症児を抱えて~

『うちの火星人』のADHDのリスミーは、ゴムボールを握りしめることで、授業に集中できるようになります。何かに集中したり、ストレスを感じたりする際、貧乏ゆすりをする、爪を噛むことで脳に刺激を与えて気を紛らわすのと似ています。
しめつけられるのも好きです
。

うちの火星人

大きな冬布団からカーテンの布、毛布、体育マット等で、自分の体をす巻きのようにぐるぐるとしめつけては楽しみました。その名残なのか大人になった今でも、秋冬には冬布団と毛布で頭から爪先をぎゅっと包まないと落ち着きません。自宅で休憩をとる時も、布団にくるまって抱き枕で自分の体をぎゅっとしめると、心身共に疲れが取れる気がします。

触覚においても過敏であったり、もしくは鈍くなったりする発達障害には、自分の体をしめ付ける=体全体を圧迫感で刺激することでリラックスできる方が少なくありません。

身体を締め付ける実験

自閉スペクトラム症の動物学者・グランディンさんによると、
発達障害にしばしば見られる感覚過敏や不注意、かんしゃくは、むしろ脳に適度な刺激が行き届いていないことも一因だと考えました。

実際にグランディンさんは、強い家畜牛の鎮静効果のある締め付け機で、自分の体をしめ付けて実験しました。
結果、神経過敏やかんしゃくがかなり改善されたので、以来ストレスやパニックを和らげるために、締め付け器を日常的に使うようになりました。
ふわもこ刺激の話と同じですが、人肌や抱っこが与えてくれる安心感を得られない代わりに、発達障害者はモノに触れ、モノに触れられることに安らぎを覚えます。
毛布ごしであれば肌と肌が直接触れ合わずに済むので、発達障害のある相手を抱きしめるために、毛布を使うのはいいと思います。

まとめ

・発達障害で感覚過敏・感覚鈍麻をもつ者は、自分にとって心地よいモノを好み、強い執着を見せます。

・触覚においては、手触りの柔らかい毛布やファー、ぬいぐるみ等に触れることで抱きしめられるような安心感を得る、布団やマット、カーテン等で自分の体を圧迫することで神経を鎮める目的があります。

・視覚においては、キラキラ輝くモノや、美しい色彩に惹かれ、個性豊かなセンスや芸術面で才能を発揮する方もいます。

いかがでしたか。


発達障害のある人は感覚の特異性に悩まされることも多い中、特定の感覚刺激に安らぎを見出します。

発達障害の人に安らぎとやりがいを与えてくれる刺激は、今回紹介したもの以外にもたくさん存在し、好みは一人一人多様です。

発達障害の人が見せる、特定のモノへの執着は、こだわりという問題としてしばしば見なされます。しかし、本人が好む感覚刺激を上手に活用すれば、本人が安心して日常生活を送り、ストレスに対処するツールにもなってくれます。

特定の感覚刺激へのこだわりや豊かな感性は、美しいものを発見し、新たなものを生み出すことに繋がります。

グランディンさんも、牛の締め付け器を自身の神経発作の治療のために開発し、その後自閉スペクトラム症の啓蒙や、肉用の家畜が低ストレスで処理される施設設置にも尽力しました。

Mojoの活動にご興味のある方、いつでもご連絡をお待ちしております。

一緒に社会を会社を変えていきましょう!

セミナーのご依頼など随時お待ちしております。今後もmojoの活動の応援をどうぞよろしくお願いいたします。

参考文献

・岡田尊司(2013)『過敏で傷つきやすい人たち、HSPの真実と克服への道』幻冬舎新書
・平岡禎之(2017)『うちの火星人』光文社
・テンプル・グランディン他(1994)『我、自閉症に生まれて』学研
・ドナ・ウィリアムズ(訳:河野万里子)(2000)『自閉症だったわたしへ』新潮文庫


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