見出し画像

大工、仕分けの虎

 そんなわけで、内装解体班が設立されることになり説明会が開催されたのですが、そこに意外な人物が呼ばれていたんです。


 僕の勤めていた産廃会社は、横浜市と川崎市にいくつかの事業所を構えており、業界内でもそこそこの規模を持った会社でした。各事業所には事業所長と副所長がおかれ、彼らの給料には当然手当てがついてるわけです。その所長連の中からとある人物が呼ばれてたのよ。


 京都出身、”仕分けの虎”の異名を持つ男、ハコちゃん副所長。この人が工場にいる限り仕分け損ねたゴミの山ができることはない、という超重要人物。超楽屋ネタ。


 いや、本当にハコちゃんはすごい人物なのよ。えっとねぇ・・・産廃屋のゴミの受け入れ工場は『積み替え保管場』っていって、お客がトラックで持ってきたゴミを、別のトラックに積み替えて『処分場』に運びますよ。っていう場所なんです。


 だから、とっととゴミを積み替えて運び出さなきゃいけないわけで、ゴミを長いこと保管し続けると、行政から「ゴミためたらダメ! 業務停止」って言われちゃうんです。


 ところが、建設現場や建築現場の産廃は溜めてから捨てるのがセオリー。どこだって年末やお盆などの連休前には現場のゴミを片づけるから、この時期の産廃工場はてんやわんや。


 次から次へとお客のトラックが工場にゴミを持って来るから、作業員の仕分けが間に合わず『積み替え保管場』なのにゴミがどんどん溜まっちゃうんです。


 そこで仕分けの虎、ハコちゃんの出番です。彼がホイールローダーに乗り込んで、仕分け作業員たちに指示を出し、的確に仕分けを行っていくとアラ不思議。


 ストックされていたゴミの山がどんどん片付いていくじゃあ~りませんか!


 そんなすごい男ハコちゃんが、内装解体班の説明会に来てるじゃあ~りませんか!


 え? いいの? 


 「ハコほどの人間なら、新しいことでも大丈夫だろ」


 と、専務。


 ハコちゃん当の本人は「なんで呼ばれたのかわからん。なにすんのかもわからん」


 ・・・ですよね。


 というわけで、内装解体班は営業担当の僕、施工担当はハコちゃんと、設備に詳しいセリさんの三人態勢でスタートしたのでした。


 あれ? 内装解体班は四人じゃなかったんですか?


 「ハコが抜けるのに、四人も解体班に入れたら工場のストックが増えるだろ!」


 そ、そうね・・・。


 ちなみに、ハコちゃんは長身でダルビッシュとAMEMIYAを足して2で割ったような顔立ちです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?