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大工、桐生一馬に出会う

 自分が活きる場所、勝てる場所を求めて就職した産廃屋でしたが、大きな誤算があったんです。それは営業部にいた二人の先輩。


 一人は元ヤクザで、一人は元鬼ヤンキー、みーんな仲良く歌いましょ♪ じゃないんだよ!


 先ずはYさんです。Yさんのイメージは小沢仁志成分3・的場浩司成分3・仲村トオル成分3・毘沙門天成分1 で仕上がった人物で、一番近いのは桐生一馬です(知らない人はごめんね)。


 Yさんは地元で有名な不良高校の最も荒れていた時代の卒業生。Yさんの高校生時代のエピソードに、担任を教室に監禁した話、嫌いな先生の後頭部をラジカセで背後から殴った話などがあります。いやいやいやいや・・・。


 営業部に配属になって数日間。このYさんと行動を共にして、飛び込み営業のノウハウを学べ、という会社のお達し。あな恐ろしや。


 Yさんと二人営業車に乗って、横浜市内の様々な建設会社や建築業関連の作業場や置き場を巡ることになったんです。


 正直なところ、僕は営業部でとっとと成果をあげて下克上するつもりだったので、Yさんも含めた産廃屋の事務所の人達を思いっきり軽視していました。いや、本当にすいません。


 ところが・・・それが甘かった。結果から言うと、Yさんという人物の大きさに僕は太刀打ちできなかったんです。


 Yさんは手始めに、なぜこの会社に僕が入ってきたのか、探りを入れてきました。なので僕は実家が工務店であること、幼い頃から大工になることを強いられたこと、大工になったらなったで兄と父にクビにされたことなどを話しました。ええ、そこは正直に。


 産廃屋なら下克上できると思って選んだことはもちろん伏せたけどね。


 そんな僕のエピソードトークを聞いたYさんは・・・


 「面白い! 面白いな○○くん。俺は君がもっと普通のやつだと思っていた」


 と、僕に興味を持ってくれたご様子。Yさん、この時めちゃくちゃ何か言いたそうにうなずいてたな~。


 「うんうん。うんうん。おもしれえ」


 って時々打つ相槌だけで僕の声をかき消す轟音なのがY式。こうして、僕とYさんとの、事件ばかり起こる産廃営業部生活の幕が上がりました。


 しかし、職人以外にはまともに仕事の経験がない工務店の末っ子が似合わないスーツを着て産廃屋の営業ですから、さぞかしYさんには世間知らずに見えたんだろうなあ。

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