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ドローン免許を更新 米国ドローンの運用ルールが大きく変わった!

ドローンの免許(米国連邦航空局 14 CFR Part 107)を更新しました。ドリキンさんの影響でドローンを購入し、仕事で使うため2017年に免許を取得しました。米国では、仕事でドローンを飛ばす場合は免許が必要で、趣味で飛ばす場合は必要ありません。ドローン免許は2年毎に更新するため、今回は2回目の更新となります。今回は、米国のドローン運用における大きな変化の中での更新でした。

変化1:オンライン講習

これまでドローン免許の更新は、近くの試験場(大体は飛行場にあるパイロットスクールが試験場になっている)に行って試験を受けていました。それが、今月から試験場での試験が無くなりオンラインでの講習で期限を延長できるようになりました。また、これまで$160の更新費用がかかっていましたが、何と無料になりました

オンラインでの更新は、近くに試験場が無い人にとって大きなメリットがあります。私の場合、家から車で5分くらいの場所に試験場がありますが、将来、日本に戻っても日本から免許更新が可能です。また、自宅や仕事場で落ち着いて試験を受けられる精神的メリットは大きいです。これまで、試験場でのテストは参考書など持ち込みは厳しく制限されていましたが、自宅なのでその制限も無くなりました。英語が難解な場合、翻訳ソフト(例えばDeepL)の助けも得られます。

一方、オンラインならではのトラブルもありました。講習を受けていたら、途中で何故か勝手にログアウトして最初からやり直しました。講習はチャプターごとにミニテストがあり、全てクリアしなければならないため、そのミニテストもやり直しになります。さらに、最終試験でも同じ事が起きて試験を2回受けました。幸い、やり直しでも問題が同じだったので助かりました。

試験は、90分間で45問全問正解が求められますが、間違った箇所を何度もやり直しが出来るので、ハードルはとても低くなりました。私は1問ミスがありましたが、そこを修正して試験をパスする事が出来ました。

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変化2:リモートIDルール

FAA(米国連邦航空局)は1年前に新しいドローンの運用ルール案を公開し、パブリックコメントを募集しました。その中で、一番大きなニュースはリモートIDです。ドローンに搭載されたブロードキャスト機能を通して、飛行中リアルタイムに様々な情報を発信します。その情報は、以下の内容になっています。

ドローン ID(FAAから与えられた識別番号)
位置と高度
速度
操縦場所の位置と高度
離陸からの飛行時間
緊急事態

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リモートIDから、所有者や電話番号も把握できます。FAA職員は当然として、警察官など法務執行者もリモートIDから情報を引き出せるようになります。ここでドローンパイロットの間で問題になっているのが、一般の人もリモートIDから(名前や電話番号など個人情報を除く)情報を知る事が出来るということです。合法的に運用しているドローンでも、ドローンに対して嫌悪感ある人がリモートIDの情報で操縦者の場所を特定して危害を加える恐れがあります。これに関しては、改善が必要かと思います。例えば、リモートIDをFAAに照合して合法か違法を確認して、違法であれば法務執行者に対処させるなど、一般の人が直接関与しない工夫が求められます。銃犯罪の多い米国においては大変危険な状況と感じています。

趣味でドローンを飛ばしている人(Recreational : 44809)は、十分にルールを把握しておかないと、目の前に突然警察が現れる、という事態も想定されます。

一方、嬉しいニュースもあります。オリジナルの運用ルールでは、ドローン本体にインターネット通信設備を搭載する案も組み込まれていました。FAAは、パブリックコメントからの意見を聞いて、この案はコスト的な問題(電話回線を搭載)と、セキュリティ上の問題(Dos攻撃など)が大きいと認めて削除しました。パブリックコメントを真摯に聞いて柔軟に対応する姿勢に好感を持ちました。

リモートIDの本格運用は、2023年の秋頃になりそうです。DJIの現行モデルも発信器は付いているのでファームウエアのアップデートで対応できるかもしれません。DJIの法務担当バイスプレジデントのBrendan Schulman氏は「一般的に使用されるドローンの多くが、無料のファームウエアアップデートを通じて準拠できることを期待する。ただし、リモートIDの技術標準が確定されておらず、FAAによって承認されていないため、この方法で既存のDJIドローンを正確に更新できるか正確に言うのは時期尚早。技術標準が確定したら、各モデルの無線ハードウェアが基準を満たしているか評価し、満たしているモデルのファームウェアを更新する計画を策定する。」と言っています。

また、仮にファームウエアのアップデートで対応できなくても、外付けのブロードキャストモジュールを搭載することで、これまでのドローンを運用する事が可能とFAAは説明しています。

変化3:夜間飛行が可能になった

これまでドローンは許可なく夜間飛行は出来ませんでした。新しい運用ルールでは、これが可能となります。そのためには、3SM(statute mile)で視認できる衝突防止灯の搭載が求められます。また、夜間飛行が出来るのは、ドローン免許(14 CFR Part 107)保持者に限ります。

また、LANNC(低高度飛行承認及び通知機能:民間Appを経由して管理空域の管制塔に飛行承認を得るシステム)で夜間飛行を申請する場合、以下の夜間飛行証明書をダウンロードして携帯する必要があります。

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FAA LANNC夜間飛行承認書

ちなみに航空法の夜間とは、日の入り30分後から日の出30分前までを指します。

変化4:第三者や移動車両(車や船舶など)の上空を飛行できる

これまでドローンは、第三者や車や船舶など移動車両の上を飛行(通過やホバリング)する事が出来ませんでした。しかし、今後はこれが可能となります。ただし、これを運用するには少し複雑です。まず、現在発売されている多くのドローンは、これまでと同じく第三者や移動車両の上を飛ばせません。近い将来発売されるドローンは、以下の4つのカテゴリーに分類されます。

カテゴリー1:0.55lbs未満のドローン
カテゴリー2:55lbs未満のドローン、11 foot-pounds of kinetic energy未満
カテゴリー3:55lbs未満のドローン、25 foot-pounds of kinetic energy未満
カテゴリー4:FAAのPart 21に準ずる耐空証明書を所有したドローン

全てのカテゴリーはリモートIDブロードキャストが搭載され、ドローン免許(14 CFR Part 107)保持者によって運用されます。また、プロペラなど人を傷つけるパーツの露出はNGなので、プロペラガードの装着が必要になります。重量は、プロペラガードを含めた重さになるので、気を付けなければなりません。例えば、DJI Mini 2は、プロペラガードを装着すると総重量が0.55lbsを超えてしまいカテゴリー2に繰り上がります。

カテゴリー4は、AmazonやFedexなどのドローン配達を想定した業者向け、もしくは自作ドローンのカテゴリーなので、私たち一般人は無視して良いと思います。カテゴリー2と3を分ける「foot-pounds of kinetic energy」は落下時に人を傷つける値(衝突エネルギー?)で、ドローンメーカーがFAAにデータを提示してどちらのカテゴリーに準拠するか決めます。また、ドローン本体にカテゴリーを示すラベルが貼られます。

カテゴリー1、2および4は、屋外集会(スポーツイベント、コンサート、パレード、抗議、政治集会、地域の祭り、または特定のイベント中の公園やビーチなど)で人々や車や船舶など移動車両の上空を通過・ホバリングが第三者に対して非通知で可能です。(当然、イベント主催者には許可が必要ですし、プライバシーへの配慮も求められます。)

一方、カテゴリー3の運用は、アクセスが制限されたエリア内において、そのエリア内のすべての人にドローンが飛行することを知らされている事が条件で、第三者や車や船舶など移動車両の上を通過・ホバリングが可能です。

以上の条件を鑑みると、カテゴリー2が最も汎用性の高いドローンになりそうです。

変化5:航空地図の問題が無かった

この航空地図を読み解くのにとても難儀しましたが、勉強してロジックが分かると、逆にパイロット気分となりとても楽しい作業になりました。数学を解くような気分です。それが、今回の更新試験では一問も無かったのです。これはちょっと寂しいです。おそらく今回の試験は、リモートID、夜間飛行、第三者上空での飛行など新しいルールに集中して問題を出したと思われます。次回のテストでは復活している事を願います。

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この写真の航空地図は、ロサンゼルス国際空港の空域です。最初見たときは「なんじゃこりゃ?」となりましたが、学んで読み解くと面白いです。

まとめ

ドローン免許保持者(14 CFR Part 107)にとって、夜間や人々の上の飛行など運用の幅が広がります。これを最大限生かせるのは、リモートIDブロードキャストと夜間衝突防止灯が搭載されたカテゴリー2のドローンになり、今後ドローンメーカーが発表する製品に注目です。

一方、趣味でドローンを飛ばしている人(Recreational : 44809)は、リモートID以外にはこれまでと変わらないので、カテゴリー1から3まで好みで選べます。また、カテゴリー1に関しては、趣味で飛ばす場合、リモートIDブロードキャストの必要はありません。そのことから、カテゴリー1に属するDJI Mini 2が最も手軽なドローンになります。2023年秋以降も、そのまま使えます。

ちなみに、ドローン免許保持者(14 CFR Part 107)が、DJI Mini 2を使って人々の上空を飛ばす場合、プロペラガードが必要になり総重量が0.55lbsを超えてしまいカテゴリー2に繰り上がります。現時点では、FAAが承認したカテゴリー2のラベルが貼られていないので使えません。プロペラガードを含めて0.55lbsを超えないか、カテゴリー2ラベルが貼られたDJI Mini 3を期待します。

と言う事で、無事に免許が更新出来て一安心しました。4年間のドローンパイロットの経験を元に、引き続き安全運用に努めたいと思います。

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