冷蔵庫が満たされること。

夜ご飯を作ろうと思ったが、冷蔵庫には調味料ぐらいしか入っていなかった。醤油、味噌、ソース、カレー粉。これで一体、何を作ればいいのか。徒歩10分の距離にある、スーパーへ買い物に行くことにした。

作る料理は何も考えていない。カレーでも作ろうか。それとも、豚汁にしようか。いずれにしろ、手がかからないものがいい。そんなことを考えていたが、手に取ったのはバナナや白菜、豚肉、卵などだった。カゴの中を見て、再び愕然とする。これで一体、何を作ればいいのか。作る気力がないと諦めて、惣菜売り場でテキトーにいくつか手に取って、カゴに放り込んだ。

家につき、冷蔵庫に品物を入れていく。引っ越したばかりの部屋のように、空きスペースばかりだった冷蔵庫が、徐々に埋まっていく。その様子を見ていると、少しばかり気分が高揚していることに気づいた。満たされている。そんな感覚だった。

明日食べるものがある。当たり前過ぎて、そのありがたみをつい忘れがちだ。たとえ、家の冷蔵庫が空っぽに近い状態であっても、少し歩けば、すぐに食べられるものがどこかしらには売っている。最近は、忙しいと言い訳ばかりして、コンビニやお弁当屋さんで食事を済ませることが多かった。今日、買い物へ行ったことで、冷蔵庫が食べ物で満たされる感覚を久々に思い出せた気がする。

明日は、冷蔵庫に入っている白菜と豚肉を使って、料理をしようと思う。酒蒸しにして、ポン酢で食べればいい。手間隙をかけた料理ではないけれど、出来合いのものよりも、いくらか満足感が違うのではないか。少しずつでもいい。自分が食べるものを自分の手で用意することを、もう少しやっていきたい。

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