ハラヘッタ。

ゴォ、グォオル、ギュルルル。

排水口に水が吸い込まれていくときのように、お腹が鳴っている。夕飯は食べた。お腹いっぱいというほどではないが、腹八分目は超えていたはずだ。18時ごろに食べたから約5時間が経過している。それぐらい時間が経てば、消化も進むのだろう。胃や腸がしっかりと働いているということだから、いいのかもしれないが、ものすごく腹が減った。

まるで腹の中に小さな自分がいて、「おーい、はよ飯をよこせ!」と言っているみたいだ。腹が減っていることはもうわかっている。それなのに、先ほどから何度も何度も腹が鳴る。ゴォォと雷でも降ったのかと思うほどの重低音が鳴ったり、キューンと子犬の鳴き声のような可愛らしい音が鳴ったり、そんなバラエティ豊かに鳴らんでええのになんて思う。とにかく、うるさいぐらいに腹が鳴っている。腹が鳴っているから腹が減ったのか、腹が減ったから腹が鳴っているのか、もうよくわからない。

腹の音との付き合いは、もう20年以上になるはずだ。中学生の頃、学校で鳴るのが恥ずかしかった。高校にあがってもそれは同じで、腹の音を鳴らさないがために、間食をしていた気がする。大学生、社会人になっても相変わらず腹は鳴り続けたが、周りで気にする人はどんどん減っていった。いや、たぶん「あいつ、めっちゃ腹鳴るな」と思われていたかもしれないが、気を使って言わないようにしてくれていたのかもしれない。これからもずっと腹の音との付き合いは続いていくのだろうか。いつか気づかぬ内に鳴らなくなるのだろうか。

もういっそのこと、これからずっと腹の音を録音し続けて、「ハラヘッタ」みたいな曲を作ってもいいかもしれない。そして、死後、「何十年間と腹の音を録音し続けたバカな男がいる」と音楽の教科書に載りたい。いや、載りたくない。

こんなことを書いていたら、空腹感が多少紛れ、腹の音もおさまってきた。

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