お花。

花を飾る生活に少しばかりの憧れがある。花を愛でることができる人は、大人という感じがするし、いわゆる丁寧な暮らしをされている印象がある。

だったら花を買ってきて、家に飾ればいいのだけれど、なかなか手が出ない。すぐに枯らしてしまうのではないかと不安だし、自分の家に花は幾つぶんか不釣り合いな感じがするからだ。全くもっておしゃれでもなんでもない部屋に、綺麗な花が飾られていたら、違和感がすごい。瓦礫の下に咲く花のように、それはそれで魅力的なのかもしれないけれど、でも、やっぱり調和の取れた空間というか、そういう場所に飾ってあげたいよなという思いがある。要するに、花を飾る生活は自分にはミスマッチだと思い込んでいる。そう、思い込みなのである。

人に花をあげる行為も、憧れるけれど、ぼくは苦手だ。これも思い込みかもしれないが、まずはお花屋に行くことが憚れる。自分は花を買うに値するような人物像だろうかと考えてしまうのだ。それに買ってからも、あれやこれやと要らぬ考えが浮かぶ。こんな奴が綺麗な花を持ち歩くのは可笑しいのではないか。こんな綺麗な花をあげる時、一体どんな顔をすればいいのか。花が綺麗であればあるほどに、自分とは程遠い存在のような気がしてきて、なんだか申し訳なくなってくる。こうしていつの間にか憧れていた気持ちも徐々に、水を与えられていない花のように、しおしおと枯れてきてしまうのだ。

母の日だったから、母に花を贈った。オンラインで買う分には、全く抵抗感がなかった。「花を見ていると、少し気分が晴れる」と母からLINEが届いていた。

自分にもオンラインでなら、花を贈れるかもしれない。最近のドロドロとした嫌な感情を、花を愛でながら、浄化できたらいいな。

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