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遊園地でのアルバイト。

友だちから「和歌山に行くんだけど、おすすめの場所ある?」と連絡がきた。「マリーナシティという超B級遊園地があるよ」と返信した。超B級遊園地とは一体どんな遊園地のことを意味するのだろうと少し疑問が湧いたし、遊園地で働く方々には大変失礼な物言いだなと思い、少し反省した。自分が和歌山に住んでいた頃とは、もしかしたら諸々変わっているかもしれない。そう思い、マリーナシティのHPを見てみた。どうやらあまり変わっていないような感じで、いい意味で少しほっとした。超B級だからいいんだよ、とよくわからない感想を抱いた。HPを少し見ていると、そういえば自分はここで1週間ぐらいアルバイトしたことがあるんだったと思い出した。

大学4年生の頃だ。GW期間の1週間だけマリーナシティでアルバイトをしていた。短期アルバイトの募集だった。6月頃から2ヶ月間かけて、自転車で日本縦断のたびに出る予定で、そのための資金を貯めるために働くことにした。

任されたのは、幼児でも乗れるようなアトラクションの係員だった。動物の形をしたハンドルがついた乗り物に乗って、障害物を避けるような簡単なアトラクションだった。1周大体3分ほど。それを開演時間から閉園時間まで延々と案内し、マシンを動かしていた。

「それではいってらっしゃーい」

案内を全て終えた後、笑顔で手を振りながら毎回そう言っていた。午前中はまだいい。笑顔はしっかりと作れていたし、元気いっぱいで手も振っていた。でも閉園時間間近になると、笑顔は苦笑いになり、振っている手もだらんと垂れ下がる。

指導をしてくださっていた正社員の方は、たしか60歳近い人だった。詳しくは訊かなかったが、もう何十年もそのアトラクションの担当をしているようだった。当時の自分は大変失礼ながら、「こんな仕事を!」なんて思っていたけれど、たぶんぼくが見えないところで他にもたくさんの仕事をされていたのだろう。それにその方は開演時間から閉園時間まで、本当に素晴らしい振る舞いで、「それではいってらっしゃーい」とアトラクションに乗る子どもたちに声をかけ続けていた。

その道のプロと言ってもいい。ひとつのことを何十年とやり続けるのがどんなに大変なことか、今身に沁みている。

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