穴場。

近くで花火大会が行われていた。

夜まで家にずっといたから、散歩がてら見に行こうと思って外へ出た。そうは言っても、花火大会なんてとんでもなく人が集まる。人混みは苦手だし、できることなら避けたい。遠目で花火をおがめるところはないだろうか。そう考え、見えるかどうかわからないような場所へ向かってみた。

道中、人はそれほど多くなかった。花火が打ち上がる場所からは数キロ離れているから、みんなきっともっと近くに行くはずだと思っていた。けれど、目的地付近になると人の数は徐々に増え、浴衣を着ている人やカップルがよく目につくようになった。目的地に着くと、めちゃくちゃ人がいる。辺りに出店はないし、祭りの雰囲気なんて全くないのに花火の見物客がこれほどまでにいるとは。完全に、あてが外れたようだった。

小さな花火を見ることはできたのだが、あまりの人の多さに数発程度だけを見て、そそくさと帰ってきてしまった。それなのに、人混みから抜けると、どっと疲れが押し寄せてきた。帰りにお酒でも買おうかなと思ったが、お酒を飲んだらすぐに寝てしまい、noteすら書けなそうだったので、諦めたのだった。

何の意味があるのかわからないが、家に帰ってきてから、今日の花火大会の穴場を調べてみた。訪れた場所の情報はひとつもなかった。それなのにあんなにもたくさんの人がいたのだから、記事で紹介されている穴場なんてもっと人がすごいんじゃないか。そもそもWebサイトやテレビ、雑誌などで紹介されていたら、もうそれは穴場とは呼べないだろう。窓を開けて、花火の音だけを聞きながら、そんなことを考えていた。

ぼくが花火を見ていた場所からすぐ近くに、タワマンがあった。きっとあそこに住む人たちは、穴場はどこだろうなどと考えず、クーラーの効いた部屋から綺麗な花火を見ているんだろうな、と思い、やるせなくなった。

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