靴下の穴。

穴が空いている靴下が、いくつか家にある。捨てればいいのだが、貧乏性なところが出てしまい、家にいる時なら穴が空いてる靴下でもいいやと履き続けている。そして、捨てるタイミングを見失っている。いや、いますぐに捨てればいいのだけれど。

高校生の頃に、穴が空いている靴下を履いて、学校に登校してしまったことがあった。その頃から貧乏性ではあったが、家で履いたときには穴が空いていなかったのだ。部活の朝練をしたことで、破けてしまったのだった。どうしてバレたのかは忘れてしまったが、穴が空いている靴下を履いていることが友だちにばれて、指摘された。「じゅんぺー、靴下に穴が空いているぞ!」別にそれぐらいなら誰にでもあるだろうと思ったけれど、あまりにも大声で指摘されたから、多少の恥ずかしさを抱いた。

それだけならよかったのだけれど、学園祭の季節になって、クラスで『アラジンと魔法のランプ』をパロディにした、『じゅんペーと靴下の妖精』みたいな劇をやることになったことがあった。なぜ自分に白羽の矢が立ったのかはわからなかったが、誰かが「じゅんペー、靴下に穴が空いていたことがあったし、そこから魔神が現れたら面白いんじゃね?」と提案したようだった。幸が薄く、クラスに馴染めない自分が靴下の穴の魔人によって幸せになる物語。全校生徒の前で、そんな劇を披露しなければならないなんて。なるべく目立ちたくないと思って学校生活を送っていたので、最悪だった。いい迷惑だった。できることならいますぐ魔神が現れて、学園祭の劇をやらなくていいことにならないかと願っていた。もちろん、その願いは叶わず、やる羽目になったのだった。学園祭後の数日間は、学校の至る所で「あ、幸が薄い人だ笑」なんて指を指された。

そんな事態にならないよう、一刻も早く、穴が空いた靴下を捨てた方がいいかもしれない。よし、捨てよう。

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