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「メルカリハイ」なるものを味わおうとして思い知った「説明書世代」の性

世の中には「メルカリハイ」なるものが存在していて、それ故にわずか100円以下の利益でもフリマアプリに出品をするらしい。

もちろん、少額でも取引を行う第一の理由は「不用品の処分」(73.6%)「捨てるのが勿体ないという意識」(62.3%)「金銭的利益」(59.2%)などであるが、実ははまる理由はそれだけではないらしい。

商品が売れたときの満足感というものがあって、フリマアプリで商品が売れると承認欲求が満たされると答えた人が70.3%と、SNSにコメントが入ること(55.7%)より、さらに承認欲求が満たされると感じるらしい。
故に、少額利用者の59.8%が「はまっている」という「メルカリハイ」状態が生み出されるのだ。


・・・というわけで実は今まで敬遠してきた「メルカリ」をやってみることにした。

そもそも「メルカリ」をやってみた理由は別に「メルカリハイ」の記事を読んだからではない。お店に買い物に来るお客さんが「メルカリ、凄いわよ!初めてやったんだけど本当に10分で売れちゃったの、今、発送に行ってきた!」と、異常に興奮して話していたからだ。

「本当に簡単で思ったより高い値段であっという間に売れる」らしい。
正直今まで「ヤフオク」などでさんざん苦労して出品してきた身としてはにわかに信じられない話だ。
しかし、そのお客さんがあまりにも「絶対にやった方がいいわよ」と、興奮して語るさまを見てふとやってみようかという気になった。
明らかに「メルカリハイ」と言えるその精神状態に興味もあったし、そして、ちょうど処分しようと思っていた手頃な「古本」もたくさんあったのだ。

メルカリの出品の仕方をここで説明しても仕方がないと思うのでしないが、「本」のバーコード出品は拍子抜けするほど簡単だった。商品の状態さえ入力すれば売値すら考える必要はない。おすすめの値段をメルカリが提示してくれるから。
そして発送も簡単だった。最初はさっぱりわけが分からないと思ったが、梱包して郵便局にもっていけばそれで済んでしまった。自分の住所も相手の住所も書く必要すらない。

メルカリは、住所はメルカリに登録されているので書かなくていいですよとか、そういう説明は一切しないのだ。以前にメルカリを利用して購入しようとした時もさっぱり意味が分からず、どうしてこれで取引が完結するのか不思議だったが、出品側に回るとさらに不思議だった。アプリから生成されたバーコード一枚で端末から伝票が出てくる。そして、その伝票には住所すら印刷されていない・・・考えてみればなるほどそういうことか、と納得するのだが、そこに予めの説明は一切ない。

その通りにやってみてください。そうしたらわかるでしょ。という感じ。
・・・イレギュラーな事態が起こったらどうするんだ・・・と、ついつい考えてしまうのだが、そういう想定は昨今はあまりされていない。

昔はパソコンを買うと大量の説明書が添付されていて、分からないことがあればその説明書を引いたものだが、その説明書はいつの間にか電子ファイルに変わり、そのうち電子ファイルすら添付されなくなった。
「ネットにつなげて調べてください」方式になってから随分経つが、今の若い子たちはそうなってから育ったのだ。(個人的にはネット環境がない場合はどうするんだろう、といまだに不満だ)

だから、今の若い子たちは何の説明書きもないままに、物事を進めることに何の躊躇もないらしい。古いタイプの人間としてはそれがどういうものなのか、説明書や契約書もないまま、ただ言われたとおりに行うということにはいささか抵抗があるのだが・・・。

世の中変わったな・・・というのが実感だ。自分がもう既に古い人間だったということを思い知らされてなんだか悲しくなった。
・・・実際、すっかりアンニュイな気分になってしばらく落ち込んだ。

残念ながら「メルカリハイ」は起こらなかった。
いや、売れた瞬間は「ハイ」になった。だから、今のアンニュイな気分から立ち直れば「メルカリハイ」も夢じゃないかもしれない。
自分が売っている物が売れるということは確かに承認欲求が満たされることにつながる。noteで「スキ」が付くとかコメントが付くとか、それと同じことだ。「売れる」ということはさらに、たとえわずかばかりだとしても「金銭」をもたらすのだからなおさらだろう。
商売でものを売っている人にとって売るということは仕事だが、大方の場合フリマ取引は仕事ではない。仕事ではない以上そこに何らかの「メリット」があるからこそ人はそれを行う。

一方、同時に別のニュースも流れている。

フリマアプリの台頭に押されて、リサイクルショップの倒産が急増しているのだとか・・・。
なるほど。納得である。
正直フリマアプリで100円以下の少額の金銭を得るのも、リサイクルショップに持ち込んで少額の金銭を得るのも、同じじゃないかという見方もあるが、実際にはフリマアプリの方がリサイクルショップで売るよりはもう少し高額だし、出品して発送するのを手間と考えず「承認欲求」を満たす娯楽だと考えるならば、フリマアプリの方に断然分がある。
残念ながらリサイクルショップでは「承認欲求」は満たされない。先日もリサイクルショップに結構な量の「服」を持ち込んだが、得られたものは多少の金銭と「敗北感」だけであった。

しかし購入者の立場として言わせてもらえば、やはり状態のよく分からない中古品はネットで買うより店舗で状態を確認したいし、そういう意味では街のリサイクルショップはありがたい存在なのだ。

・・・こういう考え方も、説明書の欲しい世代だから思うことなのだろうか?若い子達は実際の状態を確認しなくても平気で中古品を購入できるのだろうか?

時代は変わろうとも、できれば共存共栄で住み分けをしてもらって、リサイクルショップもつぶれないでいて欲しいなあ・・・と、「説明書世代」としてはそう願うばかりなのである。



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