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オトナの事情(創部処置に訂正追記あり)

「あの、処置した方は数日は毎日通うようにして貰えますか?」

20年前のことだけど、ある日すごく申し訳なさそうにベテランの看護師さんに言われた。
巻き爪の手術処置をして その先の数日の「傷のみかた」を患者さんにお伝えし、そのひとが処置室を出たときだ。その瞬間、ああ、ここは「個人の小さな病院だったと思い出す。

「あ、そうですね。ごめんなさい。次回からできるだけそのようにお伝えしますね」

ちょっと固い話になるけど、日本の医療の殆どは「保険診療」という範囲内で行われる。
医師は診断名や疑い診断などを 保険につながるよう記載し、看護師さんたちはそれに関わって行った処置、使った器具などを記載し、医療事務のひとがそれらをまとめて保険点数として患者さんの負担分の支払いというのが決まるわけだ。

で、このシステムがみんなが病院に気軽に行けるようにしてくれている。アメリカに住んでいるとそのシステムの凄さをよく痛感する。CT一枚救急室にかかって撮ったら、保険ないと20万円とかですからね。

参考までに患者さんの支払うお金というのはこの部分ですよ、っていうのが日本医師会のページにはこのように説明されている。

患者さんが受ける診察や検査などの医療行為は細かく値段が決められており、それぞれの医療行為ごとに支払われる料金の合計と医薬品代を合わせた合計額が医療費となります。患者さんはそのうちの3割※1を医療機関の窓口で支払い、残りの7割は保険者(患者さんが加入している国民健康保険・全国健康保険協会・健康保険組合など)から支払われています。

上のことは分かり易いのでこの日本医師会の説明を見てもらいたいのだけど、 さらにその先のおカネの動きってこんな感じ。

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※少々話が飛びますが、ライターという仕事に対する報酬の話がnoteの一部でちょっと話題になってました。多分「個人事業主」というクライテリアの人達には同じ様なことがあるんですけど、受け取ったお金が全部収入じゃない、というのは社会の大事なしくみです。(下の記事は有料ですがとても良いです!良かったら是非読んでください)

話を医療に戻そう。

大元が「雇用者が支払う保険料」と税金、そしてほんの少し自己負担の支払いである医療費はもちろん「国民サイド」に立った仕組みになっている。国民サイド、ということは 保険診療で医療者が「何やってもがばがば儲かる」ことはあり得ないということだ。(それではいろいろ大変なので、医療経営コンサルタントだとかなんとかっていうのが成立するんだよね)

さらに小さい町医者くらいになると、そして経営者のお医者さんが良い人であればあるほど、その辺りってとても「どんぶり勘定」になってしまったりね。

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日本の看護師さんって本当に腕が良いし、上記みたいな「どんぶり勘定でも患者さんに良いならOK」って経営者のところで働いている多くの看護師さんなんて 先生が自分で儲けずにやっていることを知っているから「この先生のところにいたら、もう仕方ないよねぇ」と小さな節約を重ねてくれている。まさに天使の集団である。

分かるだろうか、この温かくてみんなでカバーしあう雰囲気。日本の多くの個人医院はこんな感じで「すごく健全とはいわないけど、自分達なりに無理をしない経営」をしているんだ。

で、週一回外来のお手伝いでそこに行き始めた若い医者が 勝手に通院日減らしたら、そりゃあ一言言いたくなるよね。。。微々たるものだけど、収入には違いない。

ということで、それからは【再診予約3日後、その後は1週間後の私の外来に】というルーチンから、翌日 一度診せに来てもらって、「必要なら」二日おきとか来院してもらうようにした。週に1日しか行かない病院だったから、翌日外来の先生に伝言をカルテに残したり、外来の看護師さんに伝えてもらったりして。
まぁ・・・オトナの事情だったわけです。

【創部処置に訂正追記あり、大事なので一番最後をきちんとご覧下さい

傷の消毒、という手術後の「儀礼」が昔はあったけど(あー、またこういう書き方すると絶対怒られると思うんだけど。「現場離れた人間が好き勝手いうんじゃねーよ」みたいな)今もあるんだろうか?
私の受けたトレーニングでは「不要」な処置だった。てか、いい加減それがスタンダードになっていいころじゃないかとおもうけど、どうなんだろう、今の日本は。

理由はものすごく論理的で、簡単に言えば消毒液ってバイ菌にも効くけど、むき出しの健康な細胞も殺しちゃう。治りかけの傷にはまだ表面を守る細胞の層が出来てない。だから消毒薬じゃなく、水で洗い流すのがベスト。

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実際、大抵の傷、とくに手術みたいな「清潔環境下」で処置されたものは大体24時間もあれば 表面が閉じて、内側で修復がめっちゃ進み始める。むしろ、その治りかけているときに「汗やほこり」を取り除く「清潔を心がける」ってとても大事。

それに現実的に、傷の処置のためだけに「毎日病院に来てください」って言われても、結構大変だよね?

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最近は大分、転んだりしたときの傷も「洗うだけで良い」って知られてきたようだけど、病院で処置した傷も一緒です。最初の24時間で感染おこさないように最初にしっっっっかり洗っておけば、翌日からはシャワーとか使って大丈夫なんだよ。むしろそうやって綺麗にしてもらってないと、傷が感染して大変。

だから術後に「シャワーどうぞ」っていわれて「いや、まだ良いです」は止めてくださいね 笑

子供の擦り傷みたいな感染おこしそうな傷には、出来れば石鹸使って良く洗ったあとに「抗生剤入り傷軟膏」をつけておくといいですよ。2〜3日、洗った後は軟膏を。(外科外来だと汚い傷には局所麻酔スプレーかけて、清潔ブラシでごしごし洗いましたw)
薬屋さんでこのへんなら売ってるようです。参考までに。

テラマイシン軟膏a
ドルマイシン軟膏

【訂正・追記】
スイマセン、皮膚科の友人から連絡もらいました!
ステロイド入りの軟膏が市販されているとは知らず。。。ということで「テラ・コートリル軟膏」「ベトネベートN軟膏AS」「フルコート」「クロマイーN」は外しました。傷口にステロイド入りは止めてくださいね!
軟膏はステロイドが入っているか、買うとき薬剤師さんに確認した方が良さいかもしれません。

皮膚科オススメの処置は以下とのことです!

擦り傷は出来たら石鹸でよく洗って、抗生剤軟膏つけて、出来たら絆創膏ではなくて通気性の良いガーゼとテープ保護、をお勧めしてます

持つべきは専門の友達(笑)、いや、ホントありがとうねKちゃん!

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