見出し画像

金の斧 銀の斧

暴れ龍現る

人づてに、たまーにデザインのお仕事依頼があるのですが、先日知人から、似顔絵を描いて欲しいと言ってる人がいるんだけどと相談を受けたので、いいですよーと気軽に引き受けました。

が、依頼主が、リアクションのすこぶるわかりづらい方で、間に入っていただいた知人も私も、振り回されて困惑しました。

自分でも驚くほどの怒りが湧きあがってきたのだけれど、途中で、おや、この怒りにはなんだか覚えがあるぞ、と気づきました。

そういえば昔、今回間に入っていただいた知人にも、何度も振り回されたなあ。

これは、あの頃の怒り(記憶の再生)か。

どうどう、となだめるも、怒りはなかなか収まってくれなかったのだけれど、私の腹から出た言葉により、状況に変化があらわれました。

「何のイメージも持っていない人のものは、描けーん!!!」

実際、そうなのです。

依頼主にビジョンがなければ、何を描いても空を切るような感じになってしまうし、逆に、依頼主にビジョンがあれば、パッとイメージが共有されて、スムーズにことが運ぶのです。

とことん付き合ってみて、気に入っていただけなければキャンセルしてもらって構わないし、ただ働きになっても、別にいいや。

相性の合うデザイナーを探してもらう方が、依頼主にとっては良いのかもしれないし。

そう思ったら、私の怒りは収まりました。

するとなぜか、知人が本気モードで依頼主にあたってくださり、なんだかんだで、無事に納品の運びとなりました。

怒りが収まってから、私は穏やかに仕事ができるようになったのだけれど、今度は知人が依頼主に対して怒り爆発状態となってしまい、笑い事ではないけれど、面白いものだなあと思いました。

知人は私に、依頼主に対して思っている不満をぶちまけていったのですが、それは全部、知人自身のあの頃の特徴でもありました。

他人は自分を映す鏡、かあ。

しかし、丸ごとこの光景自体が、私を映す鏡なんだよなあ。

そんなこんなで、私自身の内側にあるものが映し出されたおかげで、自分の過去の怒りを自覚することができました。

過去の私の怒り、火を吐く龍みたいに暴れ狂ってたなあ。

抑え込んでてごめんね、ありがとね。

私は働きたいのか否か

なぜ、私の怒りが収まったのか。

たぶん、できないものはできない、嫌なものは嫌、と、自分の心に素直であることに腹を括ったからだろうと思います。

自分の心に無理をさせてまで、他者を喜ばせる必要はないし、仕事だろ、と奴隷扱いされるのなら、お金なんかいらない。

私は、自分自身の心が喜べることに、自分のエネルギーを注ぐよ、と。

実はぼんやり、私のできること(デザイン)で、個人で何かしたいと考えている人のお手伝いができたらなあ、と思っていたのですが、実際にそんな機会をいただいてやってみたら、相当に骨の折れる案件も時にはある、という現実にぶち当たりました。

そういえば、だからデザイナー(会社員)を辞めたんだった。

でも、そんな案件ばかりではないし、誰かと物語を共有して、こんなことできたらな、を具現化する過程を共に歩めるのは、やっぱり楽しいのです。

働きたい!と心をパカっと開くと、ふらっと仕事が舞い込んでくるのだけれど、それが続かないのは、働きたいけど働きたくない、という矛盾した気持ちが私の中にあるからだろうなあ。

一般的な、仕事人としてのあるべき姿、みたいなものに自分を当てはめようとすると、心が全力で拒否するのを感じるのです。

今回の仕事で噴出した怒りは、そのうちのひとつだろうと思いますが、おかげで、自分はどんな風に働きたいのかが、少しずつ見えてきました。

今回出会ったビジョンのない依頼主は、働き方のビジョンを持たないままに、なんとなく働きたいなあと思っている私、そのものだったのだなあ。

「何のイメージも持っていない人のものは、描けーん!!!」

という、自分の腹から出た言葉が、そのままぐいーんとUターンして、私自身に突き刺さりました。

なんという皮肉、いや、愛か。

しかし、依頼主への期待を手放し、自分の心にさえ素直であれば、悪いようにはならないのだな、とわかったので、一歩前進です。

そして、問題は、それを問題と捉える人にとってしか問題にはなり得ないのだ、ということも再確認できたので、もう一歩前進でしょうか。

うん、少しずつ、私なりの仕事人のビジョンができてきたぞ。

今も、働いていないわけではないのです。

塾の運営という仕事はあるのだけれど、そちらは夫が主なので、私が主となれる仕事で、自分の持てる力を活かしていくこともしていきたい、ということです。

必要なただひとつのこと

金の斧銀の斧のお話みたいなことって、現実にもあるよなあ、と思います。

あなたが落としたのは、この、金の斧ですか?銀の斧ですか?
いいえ、私が落としたのは、鉄の斧です。
正直者のあなたには、すべての斧を差し上げましょう。

私は、今回の出来事から、あなたのしたい仕事はこういう仕事ですか?と聞かれているような気がしました。

いいえ、私がしたいのは、こういう仕事です。

と、自分の心に素直になれた時、望むものはちゃんと与えられるし、それ以上のものを与えられることもある。

あれこれ頭で考えて現実をコントロールする必要なんてなくて、ただ、自分の心に素直でありさえすれば、状況は勝手に整ってくるよ、ということを教わったように思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?