男性の僕がフェミニストになった理由(本編)

先日のnoteでは、男性がフェミニストになり得るために必要と思われる要素について解説しました。
今回は、具体的に「フェミニストになった理由」について解説します。

1. はじめに

時系列編では、経験を通じて僕の考えが変わっていく過程を述べました。
しかし、同じような経験をしても、誰もが僕のように女性の生きづらさについて考えるようになるわけではないと思っています。

ましてや、男性側からするとフェミニズムやフェミニストの存在は、自らの地位や関係を脅かす存在に映ることも多いと思います。
にもかかわらず、社会構造的には強者側属性である男性の僕がフェミニストになるという、「敵に塩を送る」ような行動ならびに考え方をするのはなぜでしょうか。
それについて、詳しく解説していこうと思います。

結論から言うと、その理由は以下の4要素に分類されます。
・倫理的観点ならびに社会的公平性・平等の担保(理不尽の排除)
・女性のみならず、男性にも有益
・生産性の向上
・男性側から声を上げることの重要性

これらについて、一つずつ解説します。

2. 倫理的観点ならびに社会的公平性・平等の担保(理不尽の排除)

最大の理由であり、憲法14条ならびに24条にも関連する項目です。
これには、「努力等で覆せない理不尽な不平等があってはならない。男女は必ず公平・公正でなければならない」という考えが根底にあります。

僕自身の体験や見聞を踏まえてわかってきたことなのですが、現状の社会は明らかに不平等です。
たとえば、
・男女の賃金格差(コストは女性の方が大きいのに賃金はむしろ安い)
・昇進の男女格差

給料の額は、本人の実力よりも業界や会社による影響が大きい
といったものが挙げられます。

逆に、受験などは一見平等に見えます。
しかし、経済的事由により大学を受験できないなどの格差や、文化資本事由により、親などから「女に大学教育は必要ない」と刷り込まれてしまうことによる格差も地方部を中心に存在します。

つまり、平等だと思う人が多い分野も、実は「不平等」だったりするのです。

こうした状況は、明らかに不公平なものです。
そして、女性の場合はこれが顕著です。

・幼い頃から、振る舞いなどで男性より自由を制限される。
・就活では靴擦れする痛い靴を事実上履かねばならない。
・同じ努力をしても、男性と同じくらい報われない。
・性犯罪に遭っても、「そんな格好したからじゃないの?」などとセカンドレイプを受ける。
・望まない妊娠の場合でも、相手男性の同意が得られないと中絶できない。また、「人殺し」との謗りを受ける(男性側には何のお咎めもなし)
・共働きの時代になっても、家事の担当は女性のまま。

列挙したのはごく一部のみで、実際にはこれよりはるかに多数存在します。

これについて知っていくうちに、率直に「あまりにも可哀想すぎる」「理不尽極まりない」「圧倒的に立場に差を付けられている」と感じたのが、僕がフェミニストになった大きなきっかけです。

倫理的観点からも、社会的公正の観点からも、絶対に改善しなければならない問題なのです。

3. 女性のみならず、男性にも有益

これは以前執筆した「反ホモソーシャル」との関連が深い内容です。
フェミニズムは、「女性の地位向上」のみならず、「伝統的性役割からの解放」という大きな側面を持っています。

これは、要するに「男は仕事、女は家庭」という固定された責務からの解放を意味します。
視点を変えれば、男性も「仕事一筋で頑張らなければならない」という価値観から解放されるのです。

そもそも、先天的レベルで「男性であるから仕事向き」「女性であるから家庭向き」ということはないはずです。
これらは、基本的には社会の運営を有利にするために後天的に植え付けられる性役割であると考えています。
適材適所の考えに逆行し、性別に基づいて画一的に役割を押し付けられているのです。
むしろ、この価値観が男性への家事労働参加を防いでいる側面もあると思われます。

伝統的性役割から解放されることで、性別に関係なく自分に合ったライフスタイルが実現できるようになります。
男性が家事労働をする、女性が仕事一筋で活躍するといった「逆」パターンのみならず、誰もが自分らしく羽を伸ばせる社会が実現できるのです。

逆説的ですが、フェミニズムがより影響力を持つようになると、収入の低い男性でも結婚しやすい社会になると考えられます。
どのような構造かを簡単にフローチャートに示します。

男女の雇用格差・賃金格差が改善され、女性の収入や社会的地位が向上(男性と同じ努力で同じ収入や社会的地位を得られる)

女性が男性並みに自分一人で稼げるようになるため、男性に収入を求める必要がなくなる

収入の低い男性でも結婚しやすくなる

このような図式です。
個人的な感想ですが、すもも氏などはこれと逆の説を展開しており、低年収の男性でも「結婚できた」という結果と「既婚者」というステータスを得やすくなるものの、女性側にとってメリットはほとんどなく、結婚生活や社会的意義などを考慮すると、結果的には双方ともに不幸になると断言できます。

僕も一時期すもも氏のような考え方を支持していましたが、全体構造を知るにつれ、フェミニズムこそが男性をも幸せにするという結論に至りました。

4. 生産性の向上

シンプルにいうと「労働力の確保」です。
人口も労働力も右肩上がりであった時代は、労働力も豊富で、わざわざ女性を積極的に採用する意義がなかったことと思います(例外は太平洋戦争期で、男性が出征により人手不足となったため、それまで男性が就いていた仕事でも女性が活躍していました)
また、この時期は製造業のような規格化された労働が多く、労働者のタイプも多様よりは均一な方が好まれていたのかもしれません。
むしろ女性は、伝統的性役割もさることながら、出産・育児に伴うコスト増を考慮すると「お茶くみやコピー出しなどの事務職を除き、積極的に雇う(もしくは戦力とする)理由がない」という意見が多数だったものとみられます。

ところが、近年日本は少子高齢化が急速な勢いで進んでいます。
それに伴い、今後は労働力不足の深刻化が想定されます。

そのような状況で、女性が働くことに対して現状のままのスタンスでは、人手不足が加速するばかりか、本来ポテンシャルのある人材を取りこぼすことは間違いないでしょう。

労働力が減少する社会では、労働力を大切にしなければ企業の経営が傾くかもしれません。
そこで、伝統的性役割に囚われず、適材適所の考えから男性も女性も同じように働くことが必要になるのです。

フェミニズムは、そのために必要な「女性が働きやすい環境の整備」「世論のアップデート」に貢献します。
そしてこれは、マッチョイズム的ホモソーシャルの解体を促すことにも繋がるため、従来の男性社会では排斥されてきた男性にも働きやすい環境が実現されると考えられます。
これまでの社会構造を是とし、既得権益を貪ってきた層にはマイナスかもしれませんが、それ以外の層にとっては概ねプラスに作用すると思われ、結果的にヒューマニズム的な理想的環境が実現されるかもしれません。

5. 男性側から声を上げることの重要性

女性は、社会構造的には弱者側であり、特に中年以降の男性からは見下されやすい傾向があります。
そのため、女性が現状の理不尽さを必死に訴えても、男性側からは軽視されがちなのが現状です(各種ソーシャルメディアにおけるコメント等による反応を見ても明らかです)

ならば、男性である僕が声を上げなければならない。

率直にそう感じました。

極端な例えですが、女性に対して痴漢行為をしている男性に対し、女性が「やめろ!」と言うのと、男性が「やめろ!」と言うのでは、体格差などから鎮圧効果に有意な差があるように思います。

女性の生きづらさに共感・理解し、改善すべく活動はしているものの、本来は「女性による女性のための活動」であるため、男性である僕は不用意にパーソナルスペースにズカズカ入ってはいけないと自分に言い聞かせています(これを勘違いした例が、男性による、専ら男性視点からの生理ショーツ開発事件です)。

男性の僕がフェミニズム推進のために出来ることは何か?と考えたとき、
「男性からの加害を防ぐ防波堤となる」
「積極的に女性の声を広げ、理解を促すべく工夫する」
ことであると考えました。

スタンスが定まったわけではありませんが、今後も男性として出来ることは何か?を自問自答しつつ、実情に合わせて修正していく所存です。

6. まとめに

男性がフェミニストになるということで、理由についてイメージが湧きにくい方も多いと思います。
イメージを掴む上での参考になればと思います。

僕自身もかつては流されるままにマジョリティ男性側の考え方を持ち、フェミニズムを無意識に排斥していた時期があり、またこの考えから交際していた女性に対して不誠実な行動を取ったこともありました。
今になって思うと、思考停止で流され、理解しようとする姿勢がありませんでした。

過ちに対する反省と償い、女性の待遇向上、伝統的性役割からの解放、今後の持続可能な社会の実現に一役買うため、今後も声を上げていく所存です。

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