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アンビリーバブル・トゥルース The Unbelievable Truth/ハル・ハートリー Hal Hartley

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タイトル:アンビリーバブル・トゥルース 1989年
監督:ハル・ハートリー
上映時間:97分

誇大妄想気味でくたびれた人々の人間模様

去年アップリンクでハル・ハートリーが特集されていたものの、時間が合わず見逃していて、見逃した映画2019も時間が合わない上にインフルエンザにかかってしまい断念。中古で「アンビリーバブル・トゥルース」と「シンプル・メン」が転がっていたので入手。「シンプル・メン」のダンスシーンのスチールがどうにも気になって観たのだけれど、そっちよりもアンビリーバブル・トゥルースがドンピシャにハマってしまった。誇大妄想気味な思考回路と出てくる人々のくたびれ感。アキ・カウリスマキのオフビート感に近い物を感じるし、誇大妄想気味なエイドリアン・シェリー演じるオードリーなんてやまだないとのマンガに出てくるキャラまんまじゃないか!なんでこれを観てなかったのか自分でも不思議なくらい感覚にフィットした。
世界が終わるなんて夢想しながら今を考えてる。明日でも明後日でも一年後でもなくて今その時起きてる事をみんな受け入れている。だから自暴自棄にもなるし、くたびれるし、裏切るし、信用しないし、場当たり的な行動ばかり。出てくる全員が軽率な行動をとるけれど、あくまでも思った事を行動に移すだけで欺こうなどとは思わない。誰しも愛し愛されたいのに相関関係がズレまくってるのでどんどんすれ違う。人々がどこかくたびれてるのは次がないと思い込んで目の前の出来事が失敗したら終わりだ!くらいの感覚なんだけど、多分劇中に描かれたはなしの前からそんな感じだったんだろうなと思わせる。だからこそあのラストは終わりの感覚と、どん詰まってるけどなんとかなるさという気楽さが同居していて中空に放り出されるような終わり方だった。

結果的にそうなっただけだと思うけど、Meanwhile、Trustなどその後の作品のタイトルも散りばめられていてそういった初々しさも心地よい。でかでかと出てくる文字は単純にゴダールの影響を感じさせるし、「シンプル・メン」のダンスシーン(ソニック・ユース!)もゴダールの「はなればなれに」の引用なのは確実。これら初期3部作「ロングアイランドトリロジー」の中でも評価の高い「トラスト・ミー」の愛を用いずに愛を語る屈折した恋愛観より、破天荒なキャラが右往左往する「シンプル・メン」(音楽の使い方が素晴らしい)よりも、「アンビリーバブル・トゥルース」が個人的には一番しっくりきた。十代のうちに観とけばよかった一本。

「シンプル・メン」のダンスシーンも最高なのでそこだけでも観て欲しい。というより、おかっぱボーダー女子に弱いんですわ。


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