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ノーザンソウル Northern Soul

2014年イギリス本国で封切りされた時に一部で話題になっていたノーザンソウルがやっと日本で公開されたので観て来た。
映画のストーリーとしてはまあボチボチな内容だったけれど、大きな音量でノーザンソウルを浴びるという体験は映画館ならではの楽しみ方なので、やっぱり映画館で観るべき映画だったかなと。

イギリスでのR&B/ソウルの需要はアメリカのものとは異なり、チャートを見ても独特な動きがある。特にシカゴやデトロイトなどのアメリカ北部のR&Bへの偏愛はイギリスの音楽のあらゆる所で見ることができる。
真っ先に思い出すのがモッズの聖典「さらば青春の光」。ブッカーT&MG’sなどアメリカ北部に限定しないR&Bへの偏愛と、キンクスやフーらブリティッシュビートのR&Bを下敷きにした音楽が並列で流れている。このR&B/ソウル趣味はこの後のノーザンソウルへと引き継がれて、ポール・ウェラーらのネオモッズムーブメント、SoulⅡSoulのUKソウル、レアグルーヴへと繋がっていくことになる。
ノーザンソウル自体はモッズではないのだけど、主人公のジョンが髪型を変えた時ブルース・リーよりも、スティーヴ・マリオットみたいだなと思ってしまった。

海軍が持ち込んだ7インチの話も重要で、イギリスの北西部の港町文化の一端が垣間見れる。ビートルズを輩出した港町リヴァプールは60年前後、アメリカからの便で7インチのレコードが運び込まれた事から、ロンドンよりも早くアメリカの音楽に触れることが出来たという。ビートルズが7インチのB面をカバーしていたのはこう言ったレコードに触れていたという事だった。
日本でいえば大滝詠一が、駐在アメリカ軍の払い下げ7インチを大量にあるのを発見し(しかも全て10円)、細野晴臣と山分けしたという話もこれに近いものがある。(はっぴいえんどはフォーキーなR&Bバンド)その後の日本ではイギリスのR&B/ソウル文化はポール・ウェラーの視点を通して、サバービア/フリーソウル、渋谷系へと引き継がれている。
パンフレットに詳しく書かれているが、関西ではより純度の高いノーザンソウルシーンがあった事は今回初めて知った。

ともあれこの映画のディスコ全盛へと差し掛かる時代に、60年代のマイナーなソウルをひたすら掘る文化の奇妙さを味わえる。

そういえば映画フルモンティでもホットチョコレート(ルー・ラグランじゃない方)に興奮する場面があったり、イギリス映画のそこかしこでもこういった趣味趣向は垣間見ることが出来る。

パンフレットもかなり充実した内容でノーザンソウルについてイギリス国内と日本国内のシーンを知る事が出来るので必読。

合わせて観るべき映画も上げておく。

・さらば青春の光
・バックビート
・ノーウェアボーイ
・トレインスポッティング
・24アワーパーティパープル
・フルモンティ
・KIDS



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