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ウィッカーマン The Wickerman

先日観たサスペリアで魔女や元々各地にあった異教徒について気になっていた事もあり、ロビン・ハーディー版のウィッカーマン(1973年)を再見。
そもそもこの映画を知ったのは雑誌フェーダーの4号(1999年)に掲載された、ハイラマズのインタビューだった。

ショーン・オヘイガンはインタビューの中でウィッカーマンの話から「(スノーバグは)ストレンジなフォーク・アルバムを作りたかったんだ。実際は、そのアイディアとおりにならなかったけど」と話している。
このインタビューで、Willow’s songが流れる劇中の雰囲気に衝撃を受け「こういったアルバムが作りたかったんだ!」とも話している。

ポール・ジョヴァンニによるサントラはCDやアナログでリイシューされていて、一部の曲をサブスクで聴くことが出来る。

この映画を調べてみると、日本ではその前年の1998年に初公開されていたが、僕は2002年頃に、映画専門学校に通う友人がイベントでこの映画とラス・メイヤーのワイルドパーティを二本立てで上映するという事を聞き、そこで初めてみることができた。
(映画自体は2001年にDVD化されている)

映画自体はスコットランドにある島を舞台にしたミュージカルスリラーのような内容で、敬虔なクリスチャンである主人公とドルイドやケルト文化のコントラストを描いたカルトな内容。

男根を讃えたり、夜中に外では若者が青姦してたり…と、まあ性的なものをやたら盛り込んでいるわりに、扇情的なエロ方面に振り切れていないという中々不思議な作品とも言える。
因みにボウイファンにはお馴染みのリンゼイ・ケンプが宿屋の主人役で出ている。
音楽についてはフェアポート・コンヴェンションやペンタングルなど、ブリティッシュフォークな雰囲気に近いので、この辺りが好きな人は耳馴染みが良いのではないだろうか。

僕が持っているDVDは一枚組で旧版とドキュメンタリーが収められているもの。ドキュメンタリーを観ると、上映に際してかなりの部分をカットされたこの映画の不運な扱いと、その後のリバイバルへの流れがよく分かる。まだ存命中だった頃のクリストファー・リー(スターウォーズのドゥークー伯爵)やロジャー・コーマンもインタビューに答えている。最初の上映当時、ロジャー・コーマンに配給を依頼しようとしたものの、叶わず話が流れてしまったというのだが、それなのにロジャー・コーマン本人が出てくるのがちょっと不思議だった。しかしドキュメンタリーを見続けると、公開後オリジナルネガが破棄されてしまったため、再上映が難しい状態だったこの映画のネガフィルムがロジャー・コーマンの元にあることが2001年に発覚し、それが再上映されカルトなヒットへと繋がることになったということだった。(だからロジャー・コーマンが出ているのねと)
で、そこから評判の良くないニコラス・ケイジ版のリメイクに繋がることになるのだけれど…。

ハイラマズのスノーバグとこの映画のサントラの繋がりで言えば、直接的な影響としてはそこまで大きくないものの、どこか共通した雰囲気を感じることは出来る。この頃のハイラマズはトン・ゼーやミルトン・ナシメントなどのブラジルMPBの影響の方が強く、当時シカゴ界隈で流行っていたシュギー・オーティスや、ポストSMiLEのようなビーチボーイズ的な表現もまだあった頃。モンドなシンセの使用も少なくなり、アコースティックな演奏により比重に重きを置いていた。ブリティッシュフォークというよりも、アコースティックな音像にその近さがあったのだと思う。

ハイラマズの作品の中でも一番好きなアルバムなので、未聴の方は是非聴いてみてほしい一枚。


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