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Book review;駆け抜けてきた 我が人生と14台のクルマたち

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徳大寺有恒 著

 モデルナワクチンの影響もあり、ダラダラとお盆休みを過ごし、Kindleの「電子積読」をひっくり返している。
 一度読んで内容を忘れている、フィリップ・K・ディックの短編集(パーキー・パットの日々)を改めて読むと終末的で、これからの世界に示しているように感じられる。気分を変え、ポジティブに人生を駆け抜けた徳大寺有恒氏(2014年11月7日、74歳没)の読みかけの本を読了。

徳大寺有恒氏

 徳大寺有恒氏をご存じでない方へ、簡単に徳大寺氏をご紹介。

 本名、杉江 博愛(すぎえ ひろよし)、昭和14年生まれ。
 1960年代初頭、日本のモータースポーツ黎明期にトヨタ自動車ワークス・チーム専属レーシングドライバーとして、第二回日本グランプリに参戦したほか、ラリーにも参戦したが、チーム内のドライバー集約を受けて引退した。
 その後、紆余曲折を経てフリーランスとして文筆業を開始し、ファッション雑誌ライターを経て自動車評論家に転身し、自動車批評本『間違いだらけのクルマ選び - 良いクルマを買うための57章+全車種徹底批評』を出版した。
「間違いだらけの○○」というフレーズは自動車の世界に留まらない流行語となり、その後も毎年版を重ね、毎回ベストセラーの上位にランクインした。

 今は亡き、NAVI(1984年〜2010年発刊自動車雑誌)の連載をよく読んだ記憶がある。

Book review

 本の内容は、本人の生まれ育ちを回顧する自伝的な内容から始まる。当時の日本にしては珍しく、子供の頃から自動車が身近にあった話が続く。
 大学を卒業してからは、自動車一本槍。
 ライター、レーシングドライバー、自動車アクセサリー販売会社設立〜倒産を経て、自動車評論家としての地位を確立する。
 評論家になるまでは、彼の人生とその時に乗っていたクルマとの関係が密接に書かれているが、それ以降は財力がついたのか、欲しいクルマを購入して夫々のクルマを論評するのがこの本の内容。

【本に出てくる車】
ヒルマン・ミンクス [1952]
トヨペット・コロナ [1963]
ニッサン・ブルーバード [1967]
フォルクスワーゲン・ゴルフ [1975]
ベントリィ・コーニッシュ・コンヴァーティブル [1980]
ジャグァ-XJ12(シリーズⅢ) [1985]
ジャグァ-XK8コンヴァーティブル [1998]
アストン・マーティンDB6 [1987]
マセラーティ・ミストラル [1970]
フェラーリ365GT/4 2+2 [1974]
フェラーリ328GTS [1987]
ポルシェ911カレラ・カブリオレ[1986]
シトローエン2CV [不明]
トヨタ・クラウン

「ベントリィ」から「シトローエン」までが、評論家になってから所有した車の一部(実際には100台以上を売買したらしい)の紹介。
 車ごとの歴史や、本人の思い入れが書かれているが、一言でまとめると「クルマ好きな人が趣味でいろいろと乗り回してみた感想(思い)」。
 クルマに興味のない方には、車種によってはそのクルマを女性に例えて表現したりするので、書かれた文章を好ましく思わない方もおられるかも知れない。

 それでも救われるのは、2CVのところで自動車のことを「たかがクルマ」と言い放つところ。
 そう言いつつ、最後の最後に「たった一台でいい。そのクルマを見つけられれば、人生は変わると、私は信じている」と言うところは、本当にクルマが好きな昭和の人だったのだなと思う。

 一つだけ内容で修正したいところがある。
 筆者は、日本人が呼ぶ「ジャガー」を「ジャグァ」とわざわざ言い換えているが、生産国イギリス人の発音に、より近いカタカナは「ジャギュア」だと思う。
 ロンドンの英語学校でイギリス人教師から、何度もダメ出しを喰らったのを思い出す。

個人的なクルマへの思い

 クルマは好きな方で社会人になってから途切れることなくクルマを乗り継いでいるが、クルマの好みはこの著者とは異なり「工業製品として、まともかどうか」が優先する。
 操舵性や安全性が不安なクルマ(高速道路の横風突風で、目の前を走る軽自動車が数十センチ横にスッ飛ぶのを見るとやっぱり怖い)は選ばず、運転に不必要なアクセサリーの類に興味はない(サーキット走行以外で効果のないエアロパーツやマフラーとか)。

 素人には手の出しにくいECU(engine control unit)には関心があり、今乗っている車は発売から2年ほど(メーカーの都合で?)度々ECUプログラムが変更され(定期点検の都度)「コンピュータプログラムの変更でこんなに走り方が変わるのか」と感心した。

 メーカーが有料サービスで、ECUプログラムの変更を販売すれば面白いのだが。パフォーマンスアップで燃費が変わったり、排ガス規制が通らなかったりするので、難しいのかも知れない。

 クルマに本当に必要なのは、十分なトルクとそれに見合ったブレーキ、ハンドルを切った分だけちゃんと曲がる機能だと思う。
 当たり前のことを書いているようだが、そうではないクルマもある。

 以前、九州を旅行した際、新車同然(走行距離500km)のハイブリッド車をレンタルしたが、高速道路の登りでアクセルを踏んでもダラダラとスピードが落ち、一般道でハンドルを切っても1テンポ遅く「何で、このクルマがあんなに売れたのだろう?」と疑問に思った。(1800ccのハイブリッド車)
 返却するときのメーターは1000kmで、それだけの距離を運転しても最後まで違和感が残った。

 クルマを運転する時、クルマの挙動を気にしない人が多いのかも知れない。


MOH

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