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『自転しながら公転する』 山本文緒 (著) / グルグル悩む主人公 / 著者は noter さんだった

読みはじめて「期待した内容と、ちょっと違うかな?」と思ったが、Amazonのレビューが 4.4⭐️ 1,435個の評価
読み続けると、心がふらつく主人公の行方が気になり、一気に最後まで読み通した。
電子書籍は Kindle Unlimited 対象、Kindle換算515頁の長編。

読後、noter さんの書評を読もうと検索してみると、著者ご本人がnoterさんだった。

最後の投稿は、2021年1月27日
「その後どうしているのかな?」と調べてみると、2021年10月13日 58歳で亡くなられていた。
遅まきながら、ご冥福をお祈りいたします。



Story

32歳の与野都(よの みやこ)は、2年前まで東京でアパレルの正社員として働いていたが、更年期障害を抱える母親の看病のため、茨城県の実家に戻ってきた。今は牛久大仏を望むアウトレットモールのショップで店員として契約で働いている。地元の友だちは次々結婚したり彼氏ができたりする中で、都もモール内の回転寿司店で働く貫一と出会いつき合い始めた。でも料理が上手で優しいけれど経済的に不安定な彼と結婚したいかどうか、都は自分の気持ちがわからない。実家では両親共に体調を崩し、気づいたら経済状態が悪化していた。さらに職場ではセクハラ、パワハラいろいろ起きて――。恋愛をして、家族の世話もしつつ、仕事も全開でがんばるなんて、そんな器用なことできそうもない。ぐるぐる悩む都に貫一の放った言葉は、「そうか、自転しながら公転してるんだな」。

https://www.shinchosha.co.jp/jiten-kouten/

Recommend

新海誠さん
山本文緒の小説は、人の心をのぞく窓だ。 誰かの心の秘密も、自分の心の謎も、僕は山本文緒から多くを学んだ。

窪美澄さん
悩んでもいい、立ち止まってもいい、回り道をしてもいい。 圧倒的包容力を持った傑作長編。

横澤夏子さん
すぐ周りの幸せを見てしまう私のような女性に読んで欲しい!

南沢奈央さん
30歳になる今、読めて良かった。めまいがする程ぐるぐる思考を巡らせた先に、一筋の希望を見せてもらいました。

浅野真澄さん
迷ったり、泣いたり、遠回りしながら、自分の気持ちに気づいていく。 主人公は私だ、と思った。

枡野浩一さん
最後の章を読み終えたとき喉を詰まらせて泣く自分自身に驚いた。 恋愛結婚小説であり、仕事小説でもあり、親子問題小説でも、高齢化社会問題小説でもある本作は、 エピローグでまた別のジャンル小説であることが判明し、さらに驚く。

https://www.shinchosha.co.jp/jiten-kouten/

この本のインタビューはこちら


TVドラマ

昨年暮れ、TVドラマになったらしい(観ていないので中身は不明)。


感想と少しのネタバレ

読む本が初めての著者のとき、読み始めは少し身構える。
「この著者は何が言いたいのか?」「どんな文体?」「世界観は?」「自分の小説に取り入れられるところはあるのか?」等々。
 
長編とは知らずに読み始めたので、物語が進展せずダラダラと日常生活の描写が続く感じがし「読み止めようかな」と思ったが、プロローグに書かれているベトナムでの結婚式シーンに物語がどう繋がるのかが気になり、読み続けた。
プロローグがなければ、読むのを止めていたかも知れない。
 
本編でプロローグの謎は解決せず、エピローグで主人公(ミヤコ)の今後が明らかになる。
サラッとしているのはプロローグとエピローグだけ。
 
本編は主人公の渦巻く思考のフィルターの掛かった視点で物語が進み(進まない?)、考え方の異なる母の視点の話が所々に差し込まれる。
主人公の思考が、20~40代の女性から共感を得ているそうだ。
 
性別も年齢も異なる読者(MOHです😅)からすると、エモーショナルな心の動きを活字にする表現が参考になり、登場人物に共感するのではなく「人は(性別に関係なく)いろいろなモノを天秤に掛けて、打算しながら恋愛をする」のがよく分かる小説だと思う。
 
ちなみに、主人公貫一との会話の中で小説のタイトル名「自転しながら公転する」が語られるが、一種の比喩で物語に影響を及ぼすものではない。
 
 
 
以下ネタバレになるので注意
エピローグとプロローグは数十年後の未来、SF小説。
エピローグは、主人公視点で語られる。

本編とは直接関係のない未来の日本も語られており、そこは共感する。
差し支えない範囲で引用させていただく。

二年前の二〇四〇年、ベトナムの人口はとうとう日本を上回った。私が四歳のときには日本の三人にひとりが六十五歳以上の超高齢化社会となった。その後、地滑りを起こすように地方自治体の多くが破綻し、老人ホームも病院も足りなくなって、世界的に見ても福祉の悪化が問題となった。ニュースは過疎化、地方の荒廃、人手不足というワードを繰り返した。
 私の世代は学校を出たら海外で働くつもりの人がクラスの半分以上だった。中国やインドで働くことが生きていく手段として妥当だと考える人は多い。私もベトナム料理に出会うまでは、なんとなくどちらかの国に働きに行こうと思っていた。日本にはエリート以外はろくな職がなかった。賃金は安く社会保険料は高く、それこそ子供など夢のまた夢のような生活しか送れない。

『自転しながら公転する』 山本文緒 (著)

この小説の初版は2020年秋だが、小説の未来予測よりも現実の進行は早まっているように思う。
 

山本文緒氏 著作本(Amazon Kindle)

直木賞受賞作「プラナリア」は、Kindle Unlimitedではないが、ざっと見たところ Unlimited 対象は11冊。
評の多い「恋愛中毒」は読んで、苦手な心の描写の参考にしようと思う。


MOH

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