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Book Review:ホテルローヤル/桜木紫乃(著)直木賞受賞作、短編集ですが話のつながり方がユニーク

たびたび「つぶやき」で日経夕刊のコラムを投稿している桜木紫乃さんの直木賞受賞作、気になるので読んでみた。

第149回 直木賞受賞作(2013年)なので、noteでも多くの方が感想を書かれている。ネットにも多くの書評がありますので、ここではこの本の全体的な雰囲気と感じたところをご紹介。

ホテルローヤル収録作品

1. シャッターチャンス(ホテルが廃墟になってからのお話)
2. 本日開店(前振りがあるけど骨壺のお話)
3. えっち屋(ホテルを閉めるお話)
4. バブルバス(夫婦でホテルを使うお話)
5. せんせぇ(このお話だけホテルと関係がないのかなと思っていたら…)
6. 星を見ていた(ホテルの従業員のお話)
7. ギフト(ホテルを始めるお話)

それぞれの短編に出てくる登場人物が絡み合うことはない。
短編の主役全員がホテルローヤルに関係するが、時間や関係性ですれ違うことすらありません。
野暮ですが時系列で追うと、7,4,2,5,6,3,1の順でしょうか。
この本の主人公はタイトルの通り、ホテルローヤルではないかと。
その場所で、人々の切ない話が続きます。

感じたところ

最初の2話まで、ぼんやりしたイメージで「面白いの?」と思って読み進めましたが、3話目以降は引き込まれました。
特にホテルとは関係なさそうな5話目を読むと1話、3話目の内容が腑に落ちる。

時代設定が 1970〜1990年あたりで、時代に取り残された地方でさらにその地方経済からも取り残された人たちが主人公なので、明るいお話ではありません。
ラブホテルがメインなので性的描写も出てきますが、ドライに書かれている印象を受けます。全く興奮はせずに寂しい感じ、義務的な描写がほとんど。

直ぐに読み終える頁数の物語ですが、短篇のそれぞれが他の短編を修飾する構成になっているので記憶に残るお話ではないかと。

素人が受賞作を評するわけではありませんが、この本の風景描写や文章より、今年に入ってから日経新聞に載せているコラムの方が表現が上手くなったように思います。(受賞後10年経っていますから)


映画化

波瑠さんが主演で、小説の舞台である釧路で撮影されました。


MOH

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