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Book review 『日本沈没(原作:小松左京)』

日本沈没』は、1973年(昭和48年)に刊行された小松左京による日本のSF小説。
1973年と2006年には映画化、1974年と2021年にはテレビドラマ化、1973年と1980年にはラジオドラマ化、1970年代と2000年代には漫画化、2020年にはWebアニメ化されるなど、様々なメディアミックスがなされている。

日本沈没

今まで『眺める』程度だったので、最初から読んでみた。
昨年、話題になっているなと思ったら、TVドラマになっていたという。

『日本沈没』の数々


原作

コミック(超合本版で全5巻)

2006~9年 一色登希彦氏が『ビッグコミックスピリッツ』に連載。
単行本は小学館ビッグコミックスから全15巻。内容を2000年代に合わせている。

他に1970年代にさいとう・プロが『週刊少年チャンピオン』に連載した作品がある。ラストシーンが若干、原作と異なっているとのこと。

映画(観ておらず)

これは1973年版、他に2006年版があるらしい

TVドラマ(観ておらず)

これは2022年のドラマ、他に1974年があるらしい

アニメ(観ておらず)


感想

原作を読み始めて読み進まず、最初にコミック15巻分を一気読み。
コミックは当時公開された2006年版の映画の内容を取り入れている。読んで時代を感じさせないが、とんでもない技術が出てくるところが「何だか😅」という感じ。それを物語後半の主軸に据えているところに違和感を感じた。

コミックを読み終えてから、改めて原作を読んでみた。
コミックや評論で聞く映画・TVは、元の小説をかなり改変していることが分かる。

原作以外は登場人物をドラマチックに主人公に仕立てているが、原作は政府とその周辺の記述が多く「いろいろとバタバタするけど日本が沈んで行く」感が強く残る。

今回読んだ電子版には小松左京氏の次男、小松実盛氏の長い解説が含まれており、小松左京氏が「日本沈没」を書くに至った小松家の先祖代々の様子が綴られている。

「日本沈没」を書くに至った創作のヒントが子供の頃に読んだ、海野十三氏作『地球要塞』であることにも触れている。

小松左京氏(1931年生)は子供の頃から強度の近視で旧制中学では虐げられたこと、阪神大空襲で何とか生き延びた事なども書かれている。

SF小説家になる前、1948年から1951年にかけて漫画家「モリミノル」であった頃の絵も数枚掲載されていた。手塚治虫氏と会われた様子も。

阪神・淡路大震災への取材・連載以降、一本の物語を書くこともなく『日本沈没 第二部』も書かれなかったことも記されている。
(他の方の協力も得て、出版はしたとのこと)

この長編小説(約50万字)の約1/10の量の解説。
解説も読み応えがある。

このSF小説はパニック物語の類ではなく、災害にあった時、人々はどのような行動をとるのか? 国を司る機関はどうするのか? を考えさせられる小説。

小松実盛氏の解説は、2017年ごろに書かれている。
その中に「『想定外の事態は検討しない』といった悪き風潮」と書かれた文言が。
昨年、某国首相が全国放送で何度も話していたのを思い出した。



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