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Die Wannseekonferenz (ヴァンゼー会議)『邦題:ヒトラーのための虐殺会議』/狡い会議の進め方

イスラエルのガザ侵攻前にドイツで作られた映画。
今、観るといろいろと思うところはある。

■その時間は、たったの90分。史上最悪の会議の全貌がいま、明らかになる。
1942年1月20日正午、ドイツ・ベルリンのヴァンゼー湖畔にある大邸宅にて、ナチス親衛隊と各事務次官が国家保安部長官のラインハルト・ハイドリヒに招かれ、高官15名と秘書1名により開かれた会議。議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」について。
「最終的解決」はヨーロッパにおける1,100万ものユダヤ人を計画的に駆除する、つまり抹殺することを意味する。移送、強制収容と労働、計画的殺害など様々な方策を誰一人として異論を唱えることなく議決。

■アドルフ・アイヒマンによって記録された会議の議事録に基づき、80年後のドイツで製作
すべてのドイツ占領下および同盟国から東ヨーロッパの絶滅収容所へのユダヤ人強制送還の始まりとなった「ヴァンゼー会議」。本作は、アドルフ・アイヒマンによって記録された会議の議事録に基づき、80年後の2022年にドイツで製作された。その議事録は、1部のみが残されたホロコーストに関する重要文書だ。出席者15名がまるでビジネスのように、論争の的になるユダヤ人問題について話し合い、大量虐殺に対して反論する者が誰一人いない異様な光景に戦慄が走る。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001226.000031422.html

映画そのものはwiki(de)が詳しい。
(機械翻訳で)

2022年のこの映画、過去に1984年ドイツで、2001年にはイギリスで映画化されている。


雑感

当時の議事録に基づいて作られた映画で、俳優の仕草等はともかく映像の通りに議事が進行したようだ。
 
議決された内容の「トンデモナサ」はさておき、「通したい提案」を会議に掛けるための準備(内輪のメンバーに事前に情報を与える)、場所と出席者の選定(会議の設置場所、会議で使える配下の出席)、効果的な資料の提示(会議で初めて見せる図表)等、スムーズに会議を取り仕切り、終了時に全員の合意を得る手際は鮮やか。
提案事項に同意するときは、握り拳で机を叩く。
これには奇異を感じ「ナチス流の合意の仕方?」と思ったら、ドイツ人は拍手ではなく握り拳で机を叩くらしい。

この会議を運営したラインハルト・ハイドリヒは、その冷酷さから親衛隊部下たちから「金髪の野獣(Die blonde Bestie)」と渾名された。この会議の半年後、連合軍のエンスラポイド作戦で暗殺された。

 
組織で新しいことをやる時「それを何故やるのか? やらなければならないのか?」という本質論を吹っ飛ばし、出席者に「どうやってやるのか?」しか考えさせないところは、主催者が思惑通りに物事を進める手段としては優れている。 出席者に考える余地を与えない。
但し、そのような組織に未来はない。
 
一橋ビジネススクール特任教授楠木建氏が、わかりやすく説明している。

「What」「Why」を論じることなく、遂行するためのより効率的な方法「How」を論じたんじゃないか
  


80年を経た現在…

イスラエル軍がガザ中心部にある、戦争で避難したパレスチナ人を保護する国連運営の学校を空爆し、女性と子供12人を含む少なくとも33人が死亡した。イスラエル軍は、ハマス戦闘員も避難所にいたと述べている。
オックスファム・インターナショナルは、イスラエル軍の攻撃を受けた国連学校で「子どもを含む数十人が就寝中に虐殺された」と伝えている。

国境なき医師団(MSF)は、イスラエル軍がガザ中心部に数日間容赦なく攻撃を続けた結果、デリバリー地区のアル・アクサ病院は負傷者と死者で溢れ「沈みゆく船」のようであり、「壊滅的な状況」にあると述べている。

10月7日以来、イスラエルのガザ戦争で少なくとも3万6654人が死亡8万3309人が負傷した。イスラエル国内でのハマスの攻撃による死者数は1139人で、ガザではいまだ数十人が捕虜となっている。

https://www.aljazeera.com/news/liveblog/2024/6/7/israels-war-on-gaza-live-hospital-barely-coping-with-dead-and-wounded

ホロコーストの対象となった600万人と比べると(比較する数字ではないが)「大した数字ではない」と考えて攻撃を続ける人がいるのかも知れない。
残念ながら、それを止められる人はいない。

CNNの分析によると、ラファのテントキャンプへの致命的な攻撃で米国製の兵器が使用された


MOH


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