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【読書記録】あなたの脳のはなし 神経科学者が解き明かす意識の謎 (早川書房)

目次

第1章 私は何ものか?
未完成で生まれる/幼少期の刈り込み/自然のギャンブル/10代の時期/成人期の可塑性/病気による変化/私は私の記憶の総和なのか?/記憶は謝りやすい/老化する脳/私は知覚している/脳は雪の結晶のよう

第2章 現実とは何か?
現実のイリュージョン/現実確認/私は失明していたが、今は見える/見るには目以外のものも必要/視覚は努力を要しないように思えるが、そうではない/五感の時間合わせ/感覚が遮断されると、ショーはとまるのか?/予想を見る/内部モデルは低解像度だがアップグレード可能/薄切りの現実/あなたの現実、私の現実/脳が語ることを信じる/時間のゆがみ/ストーリーテラー

第3章 主導権は誰にある?
意識/意識にのぼらないが活動する脳/脳の配線にスキルを焼きつける/自動操縦で動く/無意識の深い穴/なぜ私たちに意識があるのか?/意識が行方不明になるとき/では、主導権は誰にあるのか?/自由意志の感覚

第4章 私はどうやって決断するのか?
決断の音/脳は対立からつくられたマシン/体の状態は決断の助けになる/未来への旅/現在の力/現在の力に打ち勝つ---ユリシーズの契約/意思決定の目に見えないメカニズム/決断と社会

第5章 私にあなたは必要か?
自分の半分は他人/周囲の微妙な信号/共感の喜びと悲しみ/適者生存を超えて/外集団/公平性の差

第6章 私たちは何ものになるのか?
柔軟な計算装置/周辺装置にプラグイン/プラグ・アンド・プレイ--超感覚的未来/感覚拡張/よりよい体を手に入れる/生きながらえる/デジタルの不死/意識に身体的要素は必要か?/人工知能/コンピューターは考えられるのか?/総和より大きい/創発特性としての意識/意識には何が必要なのか?/意識のアプロード/私たちはすでにシミュレーションのなかで暮らしている?/未来へ

あなたの脳のはなし試し読みの範囲から
David Eagleman(デイヴィッド・イーグルマン)

概括

この本は、著者がBBCのTV番組で話したことをまとめたもの。

脳の研究成果について、これまで得られた知見から、今後の可能性までを述べており、その内容は平易で分かりやすい。

TV番組の中で使われたであろう写真や図版の掲載も多く、理解の助けになっている。

脳の働く仕組みとそれによって得られる意識が主題であり、今まで何となく感じていたことが、具体例を交えて記されているため、個人的には納得するところが多い。

「目次」が細かく具体的なので、タイトルを見て興味が湧く方もおられるのではないかと。

雑感

科学が発達し、脳のことも細胞レベルまで分かるようになり、感覚器官と脳との役割も明らかになってきた。

あなたの脳のはなし

反面、解剖学的な脳の研究と生前状況との間には明らかな相関関係がまだ見出せず、そこは観察による推論の域を超えていないところもある。

例として「修道会研究」が米国で実施され、1100人以上の修道女を対象としてアルツハイマー病のリスク要因を調査するため、死後の脳を多く集めているが、アルツハイマー病による損傷で蝕まれた脳組織があっても、生前の本人には必ずしも認知障害が起こるとは限らないことがわかった。

あなたの脳のはなし

罹患神経組織はあるが、認知症状がない老人は変性した脳組織の一部の代わりに他の領域がそれを補ったと思われる。
神経ネットワーク、ニューロンが新しい接続を開始したと考えられる(脳の可塑性)。
(第1章)

脳の汎用性についてはその機能が知られてきており、ハードウエアである肉体器官(所謂五感)から得られる情報を汎用的に処理しており、その情報を伝える電気信号がマシンであっても構わない。(第6章)

あなたの脳のはなし

そうなると脳を入れる器があれば、脆弱な人間の身体は不要なのでは? 代わりがあるのでは? との意見も出てくる。

さらにその先、脳内の膨大な知識データを収めるコンピュータが出来れば(物理的には将来できるはず)デジタルの世界で、本人の意識が生存し続けるのではないか? との議論もある。

あなたの脳の回路全てを撮影したスナップショットは、実際にあなたの意識を持てるのだろうか? おそらく持てないだろう。回路図は機能している脳の不思議な力の半分に過ぎない。残りの半分は、それらの接続で実行される電気的・化学的活動である。思考、感情、認識を生み出すもの、それは毎秒何千兆もの脳細胞感の相互作用、すなわち化学物質の放出、タンパク質の形質の変化、ニューロン軸索を伝わる電気的活動なのだ。

あなたの脳のはなし

物理的な脳の移行は難しいが、心にとって重要なのは脳のソフトウェア。
それをシミュレーションできる強力なコンピューターが出現すれば、自らをデジタルにアップロードすることが出来ると著者は述べており、それには同意する。

シミュレーションが難しいのではとの意見もあるが、私たちは日々シミュレーションしていることを、荘子の絵で説明し、デカルトの「我思う、ゆえに我あり」で語っている。

あなたの脳のはなし


話の前後関係を少し省略したので、分かりにくい感想になったかもしれない。


この日本語字幕つきTEDでは第2章あたりのことを話している。
字幕が表示されない方は設定で日本語を選択すればOK🙆‍♂️


MOH