【読書記録】あなたの脳のはなし 神経科学者が解き明かす意識の謎 (早川書房)
目次
概括
この本は、著者がBBCのTV番組で話したことをまとめたもの。
脳の研究成果について、これまで得られた知見から、今後の可能性までを述べており、その内容は平易で分かりやすい。
TV番組の中で使われたであろう写真や図版の掲載も多く、理解の助けになっている。
脳の働く仕組みとそれによって得られる意識が主題であり、今まで何となく感じていたことが、具体例を交えて記されているため、個人的には納得するところが多い。
「目次」が細かく具体的なので、タイトルを見て興味が湧く方もおられるのではないかと。
雑感
科学が発達し、脳のことも細胞レベルまで分かるようになり、感覚器官と脳との役割も明らかになってきた。
反面、解剖学的な脳の研究と生前状況との間には明らかな相関関係がまだ見出せず、そこは観察による推論の域を超えていないところもある。
例として「修道会研究」が米国で実施され、1100人以上の修道女を対象としてアルツハイマー病のリスク要因を調査するため、死後の脳を多く集めているが、アルツハイマー病による損傷で蝕まれた脳組織があっても、生前の本人には必ずしも認知障害が起こるとは限らないことがわかった。
罹患神経組織はあるが、認知症状がない老人は変性した脳組織の一部の代わりに他の領域がそれを補ったと思われる。
神経ネットワーク、ニューロンが新しい接続を開始したと考えられる(脳の可塑性)。
(第1章)
脳の汎用性についてはその機能が知られてきており、ハードウエアである肉体器官(所謂五感)から得られる情報を汎用的に処理しており、その情報を伝える電気信号がマシンであっても構わない。(第6章)
そうなると脳を入れる器があれば、脆弱な人間の身体は不要なのでは? 代わりがあるのでは? との意見も出てくる。
さらにその先、脳内の膨大な知識データを収めるコンピュータが出来れば(物理的には将来できるはず)デジタルの世界で、本人の意識が生存し続けるのではないか? との議論もある。
物理的な脳の移行は難しいが、心にとって重要なのは脳のソフトウェア。
それをシミュレーションできる強力なコンピューターが出現すれば、自らをデジタルにアップロードすることが出来ると著者は述べており、それには同意する。
シミュレーションが難しいのではとの意見もあるが、私たちは日々シミュレーションしていることを、荘子の絵で説明し、デカルトの「我思う、ゆえに我あり」で語っている。
話の前後関係を少し省略したので、分かりにくい感想になったかもしれない。
この日本語字幕つきTEDでは第2章あたりのことを話している。
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MOH