見出し画像

歩道橋からながめる

小さい頃から走ることが好きだった。

実家の近くには川が流れていて、川を伴走にしつつ防波堤の上を走るのが好きだった。


好きだったとはいえ、少し高いところを走るのは怖さもあった。

風が強い日なんかはこのまま飛ばされて川に落ちてしまうのではないか、と何度も想像したものだった。

そんな怖さが逆に私を川に向かわせたのかもしれない。

流れる水は止まることなく、私と一緒に走り続けていた。

大学時代の元彼の家の近くにも川が流れていて、片道40分以上もかけて自転車で遊びに行っては川の近くでキャッチボールをした。

当時から家に籠ることが好きだったけれど、交通の便が悪くてもただ彼がそこにいるだけで動力源にできていた自分を振り返ると学生だったんだな、としみじみ感じる。

学生時代は川が好きだなんて言い出せなくて、遊び場の一つとしか彼にも思われていなかったけど、川が在ると落ち着く自分がいた。


今住んでいる場所の近くに川はない。

時々無性に川を見たくなるけど、それよりも体力確保を考えてしまうのはもう学生でない証拠。

代わりにと言ってはなんだけれど、うちの近くには大きな道路が通っていて、鉄橋がある。

昼と夜で違う様子を見せるけど、私のおすすめは夜の鉄橋で車が多いほど良い。

4車線道路をあっちからこっちへ黄色い光が向かってきて、こっちからあっちへ赤い光が去っていく。

光の数が多いほどそれは光の川に見え、以前の走りたいきもちを駆り立てる。めったに他人には言えないけれど、仕事帰りのささやかな楽しみにもなっている。

30にもなって以前とは環境も気にすることも変わった自分もいるけれど、まだ想像を膨らませて昔と変わらない日常を楽しめる自分もいることをなんとなく誇らしくも感じる。

今日もいい天気。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?