分類別古単no.47:時間的感覚
47■時間的感覚を表す語
験生のための単語リストです。
ここでは「時間的感覚を表す語」を集めてみました。
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■次の語の意味をA→Bで確認!
A 単語リスト
1・やうやう
2・ありつる
3・ありし
4・とし
5・やがて
6・はやく
7・いつしか
8・まだし
9・まだき
10・とみなり
11・ゆくりなし
12・うちつけなり
13・あからさまなり
14・かりそめなり
15・たまさかなり
B 語義と語感
★次第に
1・やうやう
=次第に:「漸く」の変化だろう。
★過去
2・ありつる
=さきほどの
3・ありし
=昔・かつての
■→「ありし」は比較的遠い過去を表すのに対し、「ありつる」は直近の過去を表し、さきほどのといった解釈に相当する。
★すぐ・早い・もう既に
4・とし
=はやい:■→速い・早い。漢字「疾し」:疾風・疾走などをイメージ。
5・やがて
=すぐに・そのまま:■→やがては、そのまま・すぐに。漢字なら「即」、英語ならjustに相当。
6・はやく
=すでに・なんとまあ:■→早くという解釈よりも「すでに・なんとまあ」という解釈が妥当。既に物事が終わっている状態、そのことへの詠嘆を表す。
7・いつしか
=はやく:■→いつしかは、いつかに強意の副助詞しが挿入されている。いつだろう、いつだろうという思いの強さが早くという意味を導く。
8・まだし
=まだそうなっていない:■→未だしの「い」の省略で、まだその状態になっていないこと、未熟な状態も指す。
9・まだき
=早くも・もう:■→それが副詞的に用いられ、早くも・もうという、まだだと思うのに自体が進んでしまっている思いがこもる。まだきに・まだきもという形をとることが多い。
★急だ・突然だ
10・とみなり
=急だ・にわかに:「頓」から生まれたが、頓挫・頓死などをイメージし、「急だ・にわかに」の意味を連想したい。「とみに~打消」(すぐには~ない)・「とみの」という形をとることもある。
11・ゆくりなし
=突然・思いがけない:■→「縁(ゆかり)」と同源らしい。何の関係もなく突然で思いがけない様子を表す。「ゆっくりじゃない」は単なる語呂合わせだが、そう覚えると覚えやすい。
12・うちつけなり
=突然だ・軽率だ・露骨だ:■→「打ちつける」の語感から突然だという意をイメージすると同時に、人へのマイナス評価として軽率だ・露骨だという意味があることにも注意。
★一時的だ
13・あからさまなり
=つい、ほんのちょっと・仮に・(打消を伴い)まったく~ない
■→現代の、「あらわ・ありのままにはっきり」の意はない。「あかる(別る・散る)」から、散りぢりになるあっけない様子。類語「あからめ(もせず)」も覚えたい。
14・かりそめなり
=はかない・一時的・いい加減:■→「仮」の語感から、はかない・一時的・いい加減という意を考える。
15・たまさかなり
=偶然だ・まれだ:■→「たまたま」の語感から「偶然だ・稀だ」の意をイメージすればよい。ただ平安時代には「稀だ」という意味が主。
■例文で演習!
C 例文
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは
「ありつる人はいかがなりぬる」
暁には、とくおりなむといそがるる。
繰り返し再三読みてやがて寝入るがごとくにて、居ながら息たえにけり。
名を聞くより、やがて面影はおしはからるる心地するを、
はやく住みける所にて、郭公の鳴きけるを聞きてよめる
花見にまかれりけるに、はやく散り過ぎにければ。
いつしかと心もとながらせ給ひて
恋すてふ我が名はまだきたちにけり人知れずこそ思ひそめしか
とみなる召し使ひの来あひたりつればなむ。
いざよふ月にゆくりもなく あくがれむことを女は思ひやすらひ、
ゆくりなく風吹きて、漕げども漕げどもしりに退きに退きて
大将の君は、二条院にだに、あからさまにも渡りたまはず、
あまりにこの世のかりそめなる事を思ひて
年を経て思ひ初めけることの、たまさかに本意にかなひて、
うちつけに海は鏡の面のごとなりぬれば
D 例文の解釈
①春は夜明けがよい。次第に白くなってゆく山際が
②「さっきの人はどうなったのか」
③明け方には、早く退出してしまおうと気がせく。→文法:な=強意・るる=自発
④阿弥陀仏と繰り返し二度三度読んで、そのまま寝入るようにして、座ったまま息絶えてしまった。→文法:ながら=接助
⑤名前を聞くやいなや、すぐに顔つきが推量される気持ちがするが→文法:より=即時の格助詞・るる=自発
⑥以前住んでいた所で、郭公が鳴いたのを聞いて詠んだ(歌)。
⑦花見に参りましたところ、とっくに散ってしまっていたので。
⑧早くと待ち遠しくお思いになって
⑧恋をしているという私の噂は早くも立ってしまったことだ。誰にも知られないよう、ひっそりと想い始めたばかりなのに
⑨急な宮中からの使いが来合わせたので
⑩沈むのをためらいがちな月のもと、思いがけず、どこへともなく出あるくようなことを女はためらい
⑪突然風が吹いて、漕いでも漕いでも舟は後ろにどんどん下がって
⑫大将の君は二条院にさえ、ついちょっともおいでにならず、→文法:だに=類推の副助詞
⑬あまりにも現世がはかないことを思って
⑭年月を経て思い始めたことが、まれにその本来の目的がかなって
⑮突然に海が鏡のようになったので
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