類語別古単no.2:安心と不安
2■安心と不安
受験生のための単語リストです。
ここでは「安心・不安・じれったい」のニュアンスを持つ語を集めてみました。全体の50音索引はこちらへ
■次の語の意味、ニュアンスをA→BCで確認!
A 単語リスト
A群
1・やすし・心やすし
2・めやすし
3・うしろやすし
B群
4・うしろめたし・うしろめたなし
5・おぼつかなし
6・こころもとなし
7・いつしか
C群
8・いぶかし
9・いぶせし
B 意味とポイント
A群:A群は「安」という字を思い浮かべればよい。安心・安らか、穏やかというニュアンスである。
1・やすし
①穏やかだ・心安らかだ
②容易だ
■→①は「安し」、②は「易し」。
2・めやすし
見た感じが良い
■→「目やすし」であり、見た感じがよい・目で見て抵抗がなく安心な感じを表す。
3・うしろやすし
安心だ
■→「後ろ安し」で後が安心だという意味である。
B群:Aとは逆に不安を表す。
4・うしろめたし・うしろめたなし
気がかりだ・心配だ・不安だ
■→うしろめたしは「後ろ目痛し」から後ろや見えないところが気がかりで不安。うしろめたなしも同じ意味。「なし」は「無し」ではなく、その状態を強めているもの。
5・おぼつかなし・6・こころもとなし
①はっきりしない
②不安だ
③待ち遠しい・じれったい
■→■おぼつかなしは、おぼろ月夜をイメージするとよい。はっきりしない=状態から、不安=心情へと意味が広がる。■こころもとなしは、心許無し。心のもと(根本・根拠)がないことから、心がむやみに動いて落ち着かない様子である。現代語の「頼りない」のニュアンスは古語にはない。ただ、おぼつかなし・こころもとなしはさらに「待ち遠しい・じれったい」という意を汲みたい場合に注意したい。両語とも、不明確な状態が、不安という心情に、さらにそれが、じれったい・待ち遠しいというニュアンスを帯びる変化に注意したい。
7・いつしか
はやく
■→例文にあるが「いつしかとこころもとながらせ給ひて」のように、おぼつかなし・こころもとなしの二語と関連して、■いつしかも覚えるとよい。「し」は強意の副助詞で「いつか」を強めている。いつだろう、いつだろう・・という気持ちが「早く」というニュアンスを帯びる。
C群:気がかりな状態を表す。
8・いぶかし
気がかり・事情を知りたい
9・いぶせし
気がかりだ・不調和だ・気が晴れない
■→■いぶかしは気がかりなので事情を知りたい気持ち。■いぶせしは、思い通りにならず気が晴れないことを強く感じる状態。
■例文C→Dで演習! 太字の単語、文法も。
C 例文
同じほど、それより下﨟の更衣たちは、ましてやすからず。
長くとも四十に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ。
うしろやすからむ妻などにあづけてこそ死にも心やすからむとは思ひしか、
いとはかなう ものしたまふこそ、あはれに うしろめたけれ。
夕闇過ぎて、おぼつかなき空のけしきの曇らはしきに、
いかにいかにとおぼつかなきことを嘆くに、
都からのおとづれ いつしかとおぼつかなきほどに、
人の歌の返しとくすべきを、え詠み得ぬほども、こころもとなし。
丹後へ遣はしける人は参りたりや。いかにこころもとなくおぼすらむ。
いつしかと心もとながらせたまひて、急ぎ参らせて御覧ずるに、
一二日たまさかにへだつるをりだに いぶせき心地するものを
D 例文の解釈
同じ身分、それより低い身分の更衣たちは、いっそう穏やかでない。
長生きしたとしても四十歳に足りないくらいで死ぬのが、見た感じがよいだろう。
(子を)安心できるような妻などに預けてこそ、死ぬのも心配がないだろうと思っていたのに、→文法:こそ-已然形、=逆接
とても頼りなくていらっしゃることが、しみじみと気がかりだ
夕闇のころを過ぎて、ぼんやりしている空の様子の曇っている時分に、
どうだろうかと不安なことを嘆いている時に、
都からの連絡が早く来ないかと待ち遠しく思っているときに、
⑧人の歌の返歌を早くすべきなのに、詠むことができない間も、じれったい。→文法:べし=当然・を=逆接の接助
丹後へ使いに出した使者は戻ってきましたか。どんなに待ち遠しくお思いになっていることでしょうね。→文法:や=係助詞文末用法・らむ=現在推量
早くと待ち遠しくお思いなさって、急いで参内させて御覧になると、
一日二日たまたまあなたと離れている時でさえ、不思議なほど気が晴れないのに、→文法:だに=類推の副助詞・ものを=逆接の接助
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