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もぐら本の内容を試し読みできます。今日は「保健の授業から20年」をお届け。

もぐら会制作による本『もぐらの鉱物採集 2020.01.22~2020.03.29 あの人今、泣こうとしたのかな』は5/20に予約販売を開始しました。おかげさまで予想を上回るご注文をいただき、初版は残りわずかとなりました。増刷は未定ですので、ぜひお早めにご注文ください。

さて本日は、『もぐらの鉱物採集 2020.01.22~2020.03.29 あの人今、泣こうとしたのかな』に収録されている35本のエッセイの中から1本、結婚がゴールだったエミコ さんの記事の試し読みをお届けします。本書では、1人の記事は袋とじの外面2ページ、中面2ページ、全4ページで構成されます。ぜひ、実際に本を手にとったところを思い浮かべながらご一読ください。


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【1ページ目 袋とじの外側】

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【2、3ページ目 袋とじの内側】

保健の授業から20年

2020年2月13日、仕事帰りにデパートのベンチで、この原稿を書いている。保育園のお迎えを30分遅らせて、膝の上でキーボードを叩いている。

まさか、こんなことになるとは。もし子供が生まれたら、できる限り一緒にいようと思っていた。仕事のあとはダッシュでお迎えに行こうと決めていたのに。

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私は、子供を持つことはできないかもしれない。初めてそう思ったのは、小学6年生のときだった。

担任の先生が、今日はとても大切な話をします、恥ずかしいことじゃないからちゃんと聞いてほしいと言った。そして、2時間ぶち抜きの保健の授業で、どうやって子供ができるのかを解説した。身体のどの部分とどの部分をどうすると、何がどう送り込まれて、生命が誕生するのか。授業のサブタイトルは、「3億分の1の奇跡」だった気がする。その尋常でない真剣さに、男子も女子も、みんな息をのんで話を聞いた。

でも私は、そんな荒唐無稽な話を信じることができなかった。確かに小説やドラマでは、男女が裸になって抱き合っている。でも、そこでそんなにも大変な作業が行われているようには見えなかったのだ。

それに、大人たちはみんな、私たちそんなことしていませんよという顔をして歩いている。いきなりそれを、「この人たち家ではみんな裸になって、この部分をここに入れているんです」と言われたって。いやいやちょっと待ってくれよ。そんな不自然極まりない行為を、人類は延々と続けてきたんですか。

私は物心ついたときからアトピー体質で、身体中が傷だらけだった。だから、あの授業が終わってじわじわと辿りついたのは、私は子供を持つことはできない、という結論だった。だって私、男性の前で裸になんてなれないもの。絶対になれない。そんなことしたら、確実に嫌われてしまうから。だから、誰かとお付き合いをしたり、結婚したり、子供を生むなんて、私には一生無理なことなんだ。

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