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世界は名言であふれているが、あふれすぎている。

「名言とはただの言葉ではなく、あなたの心に刺さる一つの魂であるのだ。」 ~リアード・サレンドルの言葉より~


みたいな架空の人物の言葉を急に作ってみたが、ま~とにかくSNSに多いと思うのが「誰かの名言」。ただ、昔の哲学者とかよりもその多くは芸能人やスポーツ選手のものだ。SNSを見ている人の多くが知っているものでないと刺さらないからであろう。

一例を挙げると以下。

●明石家さんま「生きてるだけでまるもうけ」
●甲本ヒロト「友達なんていなくていい」
●所ジョージ「あえて趣味を見つける必要なんてない」
●タモリ「やる気のあるやつは去れ」
●欽ちゃん「24時間テレビ司会のギャラを釣り上げるだけ釣り上げて全部寄付に回した話」
●ビートたけし「飲み屋で若い芸人の代金を支払っておき、お礼を言われると『兄ちゃん売れたら俺のこと使ってね』と返した話」

といった、ネット上ではもうこすられまくってるであろう話から、イチロー、大谷翔平といったスポーツ選手、俳優や芸人、ビジネスパーソン(豊田章夫など)、アニメや漫画の登場人物のセリフなど、非常にたくさんの「名言」があちこちにある。というかTiktokでなんかやたらと名言流れてくるな、と思ってそういったアカウントを見てみたら、5万人・10万人単位でフォロワーがついていて、いわゆる「名言集」というジャンルができあがっているのだな、と知った。

インターネット後は情報の拡散速度がとんでもなく速くなったので、誰かがちらっと良さそうなことをいうとあっという間に広まる。最近でいえば大谷翔平の「憧れるのをやめましょう」だろうか。これも広まりすぎてて今「大谷翔平の名言」とやったところで「知ってるし」となるだろう。裏話としてこの発言の前に実はマイク・トラウトのサインボールを水原通訳が選手みんなに配ってたという、大谷の発言が台無しになりそうな裏話があったが。

出典元


ちなみに、こういった名言に触れて心が楽になったり、やる気が出たりといったこと自体は非常にいいことだと思う。しかしその一方で、「名言って『定期的にアップ』されるようなものなのか?」という感覚もある。なんというか名言というパッケージありきとなると順番が逆じゃないの?と思ってしまうのだ。例えば名言専用アカウントで毎日のように名言アップとなると、もはや何でもかんでも目についたものは名言にしてしまえという無理矢理感が出てくるのではないだろうか。そもそも人間そんなに毎日毎日感動してられないだろと感じる。名言ではあるけど内容的には昨日の人と違う主張してるな、ということもあるだろうし。

なおこういった「発言」の著作権はどうなっているのだろう、と思ってふと調べてみた。どうも発言をそのまま記録および書き起こしただけであれば発言者に著作権があり、そこに対して創作的な工夫が加えられていればその補助をした人にも著作権がある、という話らしい。なので解説や背景説明などを加えたような名言集であれば引用している人にもしっかり著作権があるということだろう。実際、名言集の書籍も多いから、そうでもないと本を書いてもまったく印税がないのでそらそうかという話だ。

参考:口述に基づいた記事の著作権について


しかしこれだけ名言関係のアカウントがあると、「自分が感動した言葉を紹介したい!これによって元気づけられる人がいるといいな」という感じで紹介している人だけでなく、名言を「単にいいねがつきやすいコンテンツ」として捉えてる人がいると思われる。何より前者の場合だと「毎日アップ」しねえだろと思うし。毎日感動してるので毎日アップしてるんです!と言われたら「へー」としか言えないが。
まあ、テレビ画面の切り抜きのような形で芸能人の名言を紹介しているものは基本的にそもそも違法アップロードだろという別の問題もある。「めちゃくちゃ良いこと言ってるけど違法」というのはなんか独特のおかしみがある。すごく美味しい料理出してくれたけど食材は盗んできてる、みたいな。

しかし実際のところ「名言」というネームプレートを貼ってしまうと、なんとなくどんな言葉でもそれっぽく見えてくるのではないか?という気もする。

「陶芸というのは、いわば両手の中にある宇宙なんです」~人間国宝・信濃大善~

みたいに書くと全然意味はよくわからんが凄そうな気がしてくるし(もちろん上記は架空のもの)。
まあ演出さえそれっぽかったら「オッスオラ悟空」でもなんか深い意味がありそうに見えてくるだろう。理屈ってほんと後からつけられるので、「どんな相手にでもオッスと元気よく挨拶できる悟空の天真爛漫さが凝縮された一言であり……」みたいな説明もやろうと思えばできる。説得力はさておき。
まあダラダラ書いたけども結局結論としては「名言パッケージでいいね稼ぎしてるアカウント多すぎる」ということではあった。

というか最近は「知らないふりしてドッキリかけられる小芝居系」みたいなのもうんざりしてるし、こういったショート動画系全般に飽きがきてるだけかもしれない。

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