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だが、情熱はトリリオン。~ドラマによる「再現」を考える~

前クールで、視聴率自体はそれほどでもなかったようだが、満足度や動画再生回数などで話題となっていたドラマ、「だが、情熱はある。」。オードリー若林正恭と南海キャンディーズ山里亮太の半生、というか芸人を目指してからブレイクするまでのストーリーを追った内容で、最も話題となったのは「キャストによる再現度の高さ」だったような印象がある。
若林正恭役を演じた高橋海人、山里亮太役を演じた森本慎太郎はもとより、オードリー春日役の戸塚純貴、しずちゃん役の富田望生なども、「本人より本人」と言われるほどの憑依っぷりを見せていた。しゃべり方、間の取り方、しぐさなど総じて本人の映像をとにかく研究していたのだろうなと思わせるすごみがあり、実際の漫才を完コピしてみせるなど、毎回話題となっていたように思う。

そして今クールで始まったドラマ「トリリオンゲーム」。これは「だが、情熱はある。」とは違い、実話ベースでなく漫画を原作としたドラマである。コミュ力モンスターとPCマニア、正反対の友人二人が主人公であるが、このうち扱われ方的に主役なのがハルを演じる目黒蓮。「Silent」「私の幸せな結婚(映画)」などでブレイクした役者であり、アイドルユニット・Snowmanメンバーでもある。
まあSilentも映画も見てないので劇中の演技については何も言えないのだが…。Silentでは難聴を患う男性を演じて話題となったが、今回のトリリオンゲームでは正反対というかとにかくしゃべりまくり場を盛り上げる役柄。ネット上でも「あまりにイメージが違う」といった声も見たが、静かな役しかできないようになっても役の幅としてよくないだろう。
それはさておき、このハルという役は原作漫画では「口も頭も回るコミュ力最強男」である。問題解決のためにとんでもない行動を次々と実行し、周りが唖然とする中で、「クハハ、悪りぃ!」の笑顔謝罪ですべてをうやむやにする。そのいかにも漫画なキャラクターをどう演じるかというと、目黒蓮は1話を見た限りではほんとに漫画に忠実に演じているという印象だ。いわば再現度としてはなかなか高いといえるだろう。髪型も寄せているし明るい美男子というのは雰囲気的も合っている。

で、両方のドラマにおいて気になったのが「再現」ってなんだろう、ということである。「似ている」「本人かと思った」「原作の雰囲気ぴったり」これらは全て誉め言葉だ。だがしかし、本当にそのままトレースするだけであれば単なるモノマネになってしまう。バラエティでゲストの過去エピソードを見せるための「再現ドラマ」ではないので。重要なのはその「再現」がドラマとしても面白い要素なのかどうかである。極端な話、似ていることが最重要なのであれば「だが、情熱はある。」でももっと顔が似たキャストを選べばよかったということになるし。「トリリオンゲーム」は原作の雰囲気をよく再現しているキャストだと思うが、原作の魅力はどんでん返しに次ぐどんでん返し、すなわち展開の妙だと思っているので、それをまんまトレースしただけだと見ていて面白いのだろうか?という心配も生まれている。原作未読の人のほうがその点は楽しめるよなぁ、と思うので「原作そっくり」ばかりでもどうなのか?とか言いながら謎の要素が足されたりすると「原作にそんなのないだろ」とか言い出すんだよなあ、原作ファンってやつは(自分含む)。

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